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旅は道連れ世は情け



久しぶりに野宿ではなくベッドで眠った少年はぐっすりと眠り、目が覚めたのは昼過ぎだった。


対価も払えないのに無償で自身を助けてくれた夫妻を思い出して慌てて起きるがそう言えば好きに食事をしても良いようにとそれなりにまとまった金をも寄越してくれたから無理に合わせなくとも良かったのだとベッドに腰掛け、ぼんやりとしていれば僅かに女性の声らしきものを聞いて耳を澄ます。


苦しそうな、何かを嫌がっているような。


この宿にいると言えばあの夫妻と宿を営む老夫婦くらいだ。となるとあの夫妻の妻であるシルラーナが頭に浮かび喧嘩でもしているのかもと少年はベッドから降りて出入り口の扉へと向かった。


階段に近い部屋が自分の借りた部屋で、夫妻は廊下の突き当りだった筈。


扉から顔を覗かせ廊下からそちらの様子を窺うが廊下に出ると先程の声がもう少しだけ大きく聞こえて彼は行っていいものかどうか悩んだ。


だって……。



「あっ、ァ……!い、っ」



自身を心配して気を遣ってくれていた彼女の顔を思い浮かべてはこんな余裕もない、濡れたような声をあげる様を想像できず。しかし喧嘩ではない事ははっきりとわかった。


彼らは夫婦。自身の母は早くに亡くしていたが、近くに住んでいた幼馴染から昔聞いた事があった。



“この間、父さんと母さんがシてるの見ちゃったんだよね”


“え?何を?”


“何をって。そりゃ、夫婦ですることって言ったらアレよ。子・作・り!もうさぁ、年頃の娘がいるんだから気にしてって話!”



幼馴染はうんざりとした顔をしていたけれど、翌年本当に彼女には弟が生まれていた。その話を少年は思い起こし、それから幼馴染が聞いた声や面白おかしく真似た演技などをも記憶から呼び起こされて。


顔を耳まで赤くし静かに部屋にと戻った。








泣き腫らした目で倒れ眠るシルラーナの下腹に浮かぶ青い祝福の印を前に魔王は一人、向かい合っていた。


その両手からは幾本もの闇色の糸が紡がれ、青く光を放つココペリの祝福と繋がった因果を一つ一つを破壊してはシルラーナの身に害を及ぼさないように、今回の事で宿るかもしれない子どもに累が及ばないようにと細心の注意を払う。


これを(ほど)かない事にはシルラーナと事には及べない。生殺し状態なのだ。


噎せるように少しずつ濃さを増していく彼女の香に理性を持っていかれる前に、早く。早く。



「クソ、何が簡易な祝福だ。あの能天気野郎……」



汗が顎を伝って落ちればシルラーナの腹を刺激したかシルラーナが悩ましげに声をあげる。


それにまた動揺しつつも魔王は顔を引き攣らせながら最後の一筋に取り掛かり、荒々しく息を吐き出した。


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