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ある母子の行方2



「陛下の母君は竜の国の姫君でした。父君と対立していた方の妹様で、父君はその方への嫌がらせと見せしめの為に母君を連れ去ったと私は聞いています」


「ほう。前魔王(ちち)も随分と小さい男だったのだな」



ふと、自分の血筋に対し気になった時期があり彼は自分の側近を使って母と父について調べさせた事があった。そして聞かされたつまらないこの世でよくありがちな話に何だと溜め息を吐きつつもそれでとその先を促した。



「母君が陛下を身籠った際、その家系も根絶やしにされています。恐らくは母君を使って自分を追い落とそうとすると父君は邪推したのかと」


「……どこまで愚かなのだ。忌々しい。その血が本当に俺に流れているのか?呪いで断ち切りたいと思う程に不愉快極まりない」


「しかし前魔王陛下の血により現在陛下もまたこの国の頂点に立つに相応しいお力を得ております故に」


「あぁ?これはアレの力ではない。元より俺のものだ。奴が俺から奪っていたのだろう」



他人から力を奪い王になった。それが父親だと彼は語る。


父親には大した力など元よりなかったのだと。どこでどんな数奇な巡り合わせがあったのかは定かではないが父親は不相応な代物を手に入れ、そのものの力で己の力を増していたらしい。


らしいというのは彼しか知り得ていない情報の為だ。奪われた者たちは(ことごと)く父に葬り去られた。真実は覆い隠され、父は希代のペテン師で魔王と言うたいそうな称号に見合う器ではなかったのだと。



「母はさぞ賢い女だったのだろうよ。己の力を全て隠しその上で己の力を俺にも継いだ」



己の右手を見てはゆらりと揺らぐ毒と腐食、そして呪いの絡んだ悍ましい暗い闇のような(ほむら)の向こうに母親を思う。


母の能力も探りはしたが彼にも詳しくはわからなかった。けれど継がれた力が母親の存在を好意的に捉えさせた。父親を喰らう為の肉体と力、そして知恵と環境を整えお膳立てして死んだ母。


それでこそ母親である。


子の為に犠牲になる。良い親だ。


記憶はなくとも面影も知らずとも。彼の中では父親よりも何倍も素晴らしいと思える存在ではあった。



「ゆくゆくは俺もそのような女を娶りたいものだ」



父と違い、淑やかなものより気が強い方が好みではあるが。後ろに影のある操り人形よりも生き生きとした女を好んでいたが。



「苛烈な女が良い」



結い上げた赤い髪を炎の如く揺らして戦場に立つ、戦乙女のような美しくも逞しい、烈火のような己の妻。 


翡翠の瞳に黒い災いを呼ぶ己を一心に捉えて刃を向ける。



「俺の伴侶(もの)だ」



その存在を知覚した時、彼は確かに今までの生で一番の狂気の滲んだ顔で笑い歓喜していた。


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