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末っ子  作者: 夏目 碧央
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海外遠征の部屋割り(レイジ目線)

 海外での撮影とコンサートに出向いた俺たちは、コンドミニアムに泊まる事になった。2階建てのコンドミニアムには部屋がいくつもあって、俺たちメンバー7人に割り当てられたのは3部屋。

「よーし、それじゃあ部屋割りを決めるぞー。」

リーダーのタケル兄さんがそう切り出すと、7人で丸くなって、

「グーパーグーパーグーパージャス!ジャス!」

「ウォー!」

「イエーイ!」

と、にわかに盛り上がる。コンサートを終えて体はクタクタだが、テンションはいまだに高い。アドレナリンが出まくっている。

 それで、部屋割りが決まった。俺はタケル兄さんと一番年上のシン兄さんとの3人部屋になった。そして、気になるテツヤ兄さんの同室者は、テツヤ兄さんと同い年のカズキ兄さんだった。あーあ、あの二人なんだかんだ言って仲がいいからなあ。俺は少し拗ねる。すると、

「レイジ、後で俺たちの部屋に来いよ。」

と、隣にいたテツヤ兄さんが俺の耳元でそう囁いた。突如として心が躍る。

「うん。」

顔に出ないように努める。いや、ちょっと出ちゃったかな。

 荷物を自分の部屋に置きに行き、兄さんたちの後にシャワーを浴びる。食事をしてからここに来たので、後は寝るだけ。だが、出過ぎたアドレナリンのせいで、すぐには眠れそうもない。たとえ眠くても、俺はテツヤ兄さんの部屋に行くけどね。

 コンコン。テツヤ兄さんとカズキ兄さんの部屋へ行き、ノックをした。中からカズキ兄さんの「はーい」という返事が聞こえた。ドアを開ける。

「あ、レイジじゃないか。入れよ。」

カズキ兄さんがそう言ってくれた。テツヤ兄さんはちらっと俺の方を見ただけ。それで、必然的にカズキ兄さんのベッドに座ろうとすると、テツヤ兄さんは無言で俺の腕を掴み、引っ張って、俺を自分のベッドに座らせた。つい、にやけてしまう。

 二人の兄さんたちは、それぞれのベッドに寝そべって、スマホをいじっていた。ベッドとベッドの間は約1メートル。この部屋はけっこう狭い。

 しかし、来いと言われたから来たものの、ここでゲームでもしていればいいのか?まあ、タケル兄さんたちと一緒にいるよりは、こっちの方が気が楽ではあるけれど。そう思ってスマホをポケットから取り出そうとしたら、テツヤ兄さんが、いじっていたスマホを枕元に置いた。

「俺、眠くなってきたわ。レイジ、何か歌って。」

え?もう寝るの?来いって言ったのに?

「え?何かって、何を?」

「そうだな。あれがいい、Never Forget。」

そう言って、片肘ついてこっちを見る。その切れ長の目をこっちに向けて黙るの、辞めてほしい。誰だって落ち着かなくなると思う。

「あー、じゃあ。」

俺はそう言って、カズキ兄さんの方を見た。迷惑じゃなければ、という意味を込めて。

「お、いいぞ。歌って歌って。」

カズキ兄さんがそう言ってくれたので、歌おうとして、喉が疲れている事に気づいた。そうだよ、コンサートで散々歌って来たのにさ、また歌わせるなんてテツヤ兄さんもひどいな。だが、テツヤ兄さんに歌ってと言われる事はよくある事だ。テツヤ兄さんは俺の歌をよく誉めてくれるので、つい調子に乗ってしまう。

「♪ 僕らは~とても楽しくて~幸せだった~他のどんな事とも比べられないくらい~絶望していた17歳の時~君が現れ~僕を見つけてくれたね~それはどんな奇跡にも敵わない~♪」

1番を歌い終わると、二人の兄さんたちは

「フォー!」

「ワンダフォー!」

と囃し立てた。そしてテツヤ兄さんは、

「俺たちが出逢ったのも、俺が17の時だったな。」

と言った。そう言って俺を見る。どういう意味だ?いや、テツヤ兄さんの事だから、きっと深い意味はないんだろう。多分。

「じゃあもう寝るから、レイジ、続きは俺の耳元で歌って。」

テツヤ兄さんはそう言うと、掛布団の中に入り、自分の頭の横をポンポンと叩く。

「え?何?そこに横になって歌えってこと?」

確認すると、うんうんと2回頷くテツヤ兄さん。すると、カズキ兄さんが大きなため息をついた。

「こっちが恥ずかしくなるわ。俺、タケル兄さんとシン兄さんの所に行くよ。ビールでも持って行こうかな。確か冷蔵庫にあったよね。じゃあ、ごゆっくり。」

カズキ兄さんはそう言いながら財布などをパタパタと用意し、部屋を出て行った。

「カズキ兄さん、優しいね。」

思わず俺が言うと、

「ああ、カズキは優しい。ホントいい奴だよ。」

と、テツヤ兄さんが言った。

「ん?俺は優しくないって言いたいの?」

冗談めかしてそう言うと、

「ああ、お前は優しくないよ。いつも俺に意地悪する。」

そう言いながら、起き上がった。

「あれ、起きちゃうの?耳元で歌うんじゃなかったの?」

「それはもういい。カズキを追い出す口実だから。」

はぁ?!今、カズキはいい奴だって言ったよね。そのいい奴を追い出す?しかも、計画的な言動だったの?テツヤ兄さんって、何も考えてなさそうなのに、まさかカズキ兄さんがいたたまれなくなるのを見越して、あんな事(一緒に寝て耳元で歌え)言ったわけ?

「・・・なんで?なんで追い出すの?」

「そりゃ、お前と二人きりになりたいからだよ。」

「な、なんで?」

「それは俺にも分からない。」

「分からないけど、俺と二人きりになりたいの?」

「うん。お前は?俺と二人きりになりたくない?」

と、逆にテツヤ兄さんに聞かれてしまった。どうする、どう答えればいい?

「俺は、二人きりになりた・・・」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 前からツイッターのほうで、最新話?最新エピソード?を上げているのが気になり、これは最初から読まねばと思い馳せ参じました! レイジかわいい!これはいい! いいぞもっとやれ! はっ。しまっ…
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