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末っ子  作者: 夏目 碧央
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内緒なの?(レイジ目線)

 夜遅くなって、部屋のチャイムが鳴った。モニターを見ると、サングラスにマスク、フードを被った人が映っていた。これじゃ、誰だか分からないし。彼はそれに気づいたのか、サングラスを外した。よかった、テツヤ兄さんだ。

 ドアを少し開けると、テツヤ兄さんが入って来た。マスクを外し、ニッコリ笑う。このギャップ、相変わらずえぐい。人形よりも綺麗な顔してるのに、笑うとこの上なく可愛い。あり得ない。

「歯ブラシとか持って来た?」

俺が聞くと、

「あ、忘れた。」

やっぱり。

「新しいの出すから、それ使ってよ。」

「うん。あ、でもシャンプーは持って来たよ。」

「シャンプーなんて、俺のを使えばいいのに。」

「だめだよ。俺の髪がお前と同じ匂いしてたら、兄さんたちにすぐバレるだろ。」

驚いた。

「え?内緒なの?」

うちに来た事、隠すの?

「だってお前、兄さんたちに言ってただろ。俺は家に人を入れない主義なんだって。それなのに俺が泊まったなんて知ったら、兄さんたちに何を言われるか。」

テツヤ兄さんはそう言って肩をすくめた。

「・・・聞いてたんだ。で、それ知ってて泊まっていいかって聞いたわけ?」

相変わらず読めないなあ。

「ダメ元で。」

へへへっとテツヤ兄さんは笑った。

「でも、どうして俺にはOKしてくれたんだ?その主義を曲げて。」

それを俺に聞くのか?テツヤ兄さんはずるい。だから、本当の答えは言ってやらない。

「テツヤ兄さんとは、昔いつも一緒に寝てたから。もはや気にならない。」

7人で一部屋に暮らしていた頃、俺とテツヤ兄さんは一つの布団で寝ていた。全員でほとんど雑魚寝だったわけだけど、特に年下二人でくっついて寝ていたのだ。端っこで。

「本当の事言ってもいいんだぜ。俺には気を遣わなくていいからだろ?兄さんたちが来たら気を遣うもんな。」

テツヤ兄さんはそう言ってまたにーっと笑った。またこの笑顔。それは本心なのか?やっぱり読めない。

 この人を一言で言ったら、ずるい人。人一倍はしゃいで、明るいのに、人一倍繊細で傷つきやすい。危なっかしくて放っておけない。いつも見ていないと、心配で仕方ないんだ。そうやって、周囲の人を虜にする。ずるいよ。


 二人はベッドの上に並んで横になった。明日も仕事だから、ちゃんと体を休めないとならない。

「なあレイジ、シャンプー置いてっていい?」

「え?なんで?」

「また泊まる時に使うから。」

「あ、ああ、うん。いいよ。」

テツヤ兄さんは嬉しそうに笑い、俺の事をぎゅっと抱きしめた。

「レイジ、好きだよ。」

テツヤ兄さんはそうつぶやいて、そのまま眠りについた。

 全く・・・この態勢でそんな事言うなんて、ずるいよ。勝手に寝ちゃうし。

「テツヤ兄さん、俺も好きだよ。」

寝息を立てるテツヤ兄さんに、小声でそっと囁いた。


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