罰
私は首の周りに出来た痣を撫でながら上を見た。
背を預けている木の枝には、昨晩首を吊った紐がぶら下がっている。
首を吊った苦しさから無意識に紐から首を外し下に落ちたのだろう。
また失敗してしまった、此れで何度目だろう?
他のやり方を試みてもよいのだが意地っ張りな性格のせいもあって首吊りを繰り返していた。
踏み台にした脚立と紐を持って家に帰る。
最近死ぬことしか考えていないせいか食欲が湧かず寝に帰るだけだけど。
一晩寝てまた挑戦しよう。
さっきまで寝ていたと言うか失神していたので眠気が湧かない、だから気分転換のため散歩に出かける。
散歩の途中疎遠になっている親類に出会ったので会釈したが無視された。
ま、仕方ないか、ギャンブルで借金まみれになり家族や親族に迷惑かけまくったからな。
最近は近所の人に挨拶しても無視されるようになった。
首の周りについた痣を見て敬遠するようになったのかも知れない。
でも近所の人だけでなく小説サイトで知り合った人たちにコメントを出しても無視される。
もしかしてスマホが本格的におかしくなっていて私がコメントを出しても相手に届いていないのかも知れない。
ケータイ屋に行って調べてもらえば良いのかも知れないけど多分、否、絶対寿命だから買い換えるように言われるのだろうな。
私にそんな金は無い。
腹が空かず寝に帰るだけの家だから何とかなっているけどスマホの買い替えなんて無理だ。
帰って一眠りしてからまた森林公園に行って手頃な枝振りの木を探そう。
男はとっくの昔に死んでいる。
何度も繰り返される首吊りは自殺した事に対する罰であった。