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(2)

よろしくお願いします!

【2】幼少期

(2)

 こんにちは、神様です。

 というわけで、八代理を【アマツヒラ皇国】へと転生させました。

 もちろん有無を言わさずに承諾は取った。

 つまり、合意の上である。

「おぎゃあっ!」

 八代理だった魂が新しい肉体を得て、産声を上げた。

 彼にはやってもらいたいことがあるが、その内容は伝えていない。

 いや、伝えることが出来ないのだ。

彼には、自身の才覚で道を切り開き、自身の努力で敵に辿り着き、自身の判断で問に答えて貰わなくてはならない。

私は神であるから、世界を力づくで修正することも出来なくはない。しかし、それでは、人の世というものは回っていかない。必ずどこかに齟齬が生まれるのだ。これは予想ではなく経験談だ。人というのは実に不完全で不自由な生き物であり、そうした小さな齟齬に大きく左右され、小さな波紋を生み、世界を大きく揺るがす。

まるで世界が私を拒絶でもしているかのように。

だから、彼に任せるしかない。

彼を使うしかないのだ。

私からの直接的な干渉でなければ、世界は拒絶を示さない。

これも経験談だ。

――もっとも、前回は特になんの成果も得られなかったが。

私がしたのが、世界への干渉ではなく、異世界の魂への干渉であることが理由なのかもしれない。

つまり、神のくせに私に出来ることは多くない、ということだ。

なんとも情けない限りではあるが、まぁ、見守らせてもらうこととしよう。

(えっと、……本当に転生しちまったのか。説明らしい説明もないまま――まぁ、元々生まれてくるときにチュートリアルなんてないしな)

『その通りなのである』

(っ!? まだいたの?)

『チュートリアルではないけどね』

(聞かれてた!?)

『あまり、時間は取れないので一方的に話しても構わないかな?』

(あ~、はい、どうぞ)

『ふむ。では、私から伝えたいのは、三つだ。一つ目は今のこの状態のこと――つまり、あなたが神と対話することが可能な世界で唯一の存在だということ。だが、私は必要以上に干渉する気はないので、必ずしも対話に応じるとは思わないこと。二つ目は、あなたが想い、かなたへ願い、こなたに祈らば、神の加護を与えることを約束しよう。転生させてしまったお詫びとでも思ってくれればいい。そして、三つ目――』

(……)

『――』

(……ん? 三つ目は?)

『……ありがとう。それだけです』

(……はは、案外かわいい神様だったんだな)

 ほっとけ。

(あれ? 神様?)

 今はこれ以上の対話を私は望まない。

 さぁ、新しい命の始まりです。

(ここからは、僕の力で進めってことか)

 私の意図は伝わったようだ。

(ひとまず、僕がすることは――)

 赤子はキリリと赤子らしからぬ真摯な眼差しで、自らの身体を抱く女性の顔を見上げる。

(目の前の美人のお母様のおっぱいにかぶりつくことかなっ!)

 赤子はグヘヘと赤子らしからぬ邪悪な眼差しで、自らの身体を抱く女性の胸を見つめる。

母親の顔は完全に引きつっている。

 ……本当にこの魂を選んで間違いではなかったのだろうか?

 私はいきなり不安になったが、サイは既に投げられたのだ。

 自身の直感を信じることとしよう。

(冗談はさておき、えっと、言葉は――理解出来ているみたいだな)

 この異世界は私の経営する世界だ。言語変換もお手の物だ。

「カルディナ、よくやった!」

「はい、ルフォ、男児です。これでソメヤヨラの家も安泰ですね」

「ああ、私たちに似て聡明そうだ」

(ふむ、親ばかですね。ルフォ父さんと、カルディナ母さんね。これから、どうぞ末永くよろしくお願いします)

「ちゅぱっ、ちゅぱっ」

 赤子は、考察をしながら卑猥な舌使いで母乳を頂く。

「ルフォ、この子の名前は?」

「もちろん、考えてきたぞ!」

「ふふ、楽しみだわ。教えて?」

「ジーモーサムだ。ジーモーサム・ソメヤヨラ。どうだ? 良い名だろ?」

「はい――んっ、とっても素敵な名です」

(ん~、この世界の普通の名前があんまり分からないから、なんとも言えないけど。僕のための名前だ。大切にします)

「ちゅぱっ、ちゅぱっ」

赤子は、考察を続けながら卑猥な舌使いで母乳をさらに頂く。

「……」

「……」

「ちゅぱっ、ちゅぱっ」

「カルディナ……はぁ、はぁ」

「ルフォ……ふぅ、うん」

「ちゅぱっ、ちゅ――るんっ」

(あ、れ?)

 赤子はおっぱいから離され、そのまま侍女らしきお姉さんに預けられる。

 ルフォとカルディナは、顔を赤らめながら蕩けそうな視線を交わし、艶めかしい手つきでお互いの手の指を絡ませ、身を寄せ合いながら部屋を後にした。

 もちろん、そのまま――出産後間もないだというのに、仲睦まじいことだ。

 これならば、次もあっという間だろう。

 というか、アホなのか、この赤子は。

 カルディナを発情させてどうするというのだろうか、赤子の身体で。

(あ~れれ~? 僕、やらかしちゃいました、神様?)

 まぁ、無視ですけど、何か?

(あ、でも、こっちの侍女のお姉さんもカワイイな……ノーブラだし)

 無視ですけどっ! 何かっ!?


ありがとうございました!!

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