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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

紅茶を淹れたら痴女が出たんだけどおまわりさんこいつです。

頭空っぽの状態で書いたらオチがどこかへ行きましたごめんなさい。


「ぱんぱかぱーん! お呼び頂きありがとうございまぁぁす! いやぁ、お客様運がいいですよ! この度、第百回を記念致しまして(ワタクシ)アーデル……」

「呼んでないしめでたくもない。帰れ変態」


 休日の昼下がり。

 紅茶でも飲みながら本を読もうとキッチンでお湯を沸かし、貰い物のそこそこ高級な茶葉の缶を開けた途端、軽快なファンファーレと共に前述の台詞を述べながら缶の中から(・・・・・)現れたバニーガールを変態と呼んだ私は1ミリも間違っていないと思う。

 美人だとかそういうのは今どうでもいい。

 普通に考えて紅茶の缶からバニーガールって意味わかんないでしょ。


 私がかぶせ気味に即答したのがまずかったのか、変態(アーデルなんとかさん)は笑顔のままピシッとその場に固まった。

 甚だ不本意だがそっとしておくことにして、そもそもの目的だった紅茶を淹れる。

 個人的にはアールグレイが好きだ。紅茶はたとえインスタントでもきちんと淹れるとおいしいことを学んだので温度調節も抜かりない。

 トポポ、と小気味よい音を立ててカップに注ぐ。

 鼻先をくすぐる香りに思わず笑みが漏れた。やっぱり休日の読書は紅茶と一緒に限る。


「って、何事もなかったかのように(ワタクシ)を無視しないでくださいぃぃ! あと(ワタクシ)にはないんですか!? 紅茶!」

「帰れ」


 全力で無視を貫いてソファに腰かけて本を読みかけたのに視界に入ってこないで欲しい。あと厚かましい。

 なぜ不法侵入の変態に私のお茶をもてなさないといけないのか。


「……あ、そうか。警察」

「待って!? いや、わかりますよ! 確かに(ワタクシ)は怪しいです! 怪しいですが怪しいものではないので――――」

「もしもし警察ですか。助けてください、家の中に不法侵入者が」

「ためらいもなく110番!!! ちょっとぉぉぉ! ここは(ワタクシ)の話を聞いてくださるところでは!?」


 唐突に湧いて出た変態にそんな慈悲をかけるほど私はお人よしではない。

 っていうか嫌な予感しかしないから聞きたくない。


「ああ、もう仕方ない! ごめんなさい! 後で返しますから!! えいっ!!」

「あ」


 変態が何やら声を上げた途端、私のスマホが宙を舞った。

 正確には私の手からすり抜けて変態の手に吸い込まれるようにおさまった。不法侵入の上に外部との連絡手段を立たれるとは。


「ああ。叫べばいいのか」

「やめてください!? 話を! お願いですから話を聞いてくださいぃぃーーー!!!」



◇◇◇



「……ぐす……。容赦ない……容赦ないですよ……このひと……」


 正座の変態inリビング。

 景観を損なうことこの上ない。


 とりあえず警察への連絡は一旦保留にして――――――さっきのはブラフでまだかけてなかった――――――、あまりにも必死に頼み込まれるので一応話を聞いてあげることにした。

 でも信用はないので正座させている。

 窓を開けて全力で叫ぼうとした私に縋り付いて来たセクハラという立派な容疑も加わったので。


 ソファに座り直して冷めてしまった紅茶を飲み、気分を落ち着ける。

 羨ましげにこちらを見ているけど、不法侵入に窃盗、性的人権侵害セクシャルハラスメントの三重苦だ。通報しないだけありがたいと思ってほしい。


「うう……。精霊にかける容疑じゃないです……。リアリストにも程があります……」

「不法侵入者の言い分を聞いてあげようとしてるだけ優しいと思うんだけど」


 いきなり湧いて出た変態(バニーガール)に対しては盛大な温情だと自負してる。

 私の優雅な午後のひと時を邪魔しておいて、このくらいで泣き言を言われる筋合いもない。


 半泣きになってこちらを見てくる変態こと自称精霊に、さっさと話とやらを話すように………………


 …………




 ……精霊?


「…………」

「ちょっ 頭大丈夫かコイツ、みたいな目でみないでくださいよぉー! 本当です! 本当に精霊なんです!!」

「110番じゃなくて119番だったか。あ、違うか。黄色い救急車って何番だっけ」

「それ都市伝説じゃないですかぁぁ!! お願いですから信じてくださいぃぃぃ!!」


 器用に正座の体制のまま足元に縋り付いてこないで欲しい。ちょっときもい。

 顔は美人の部類なのにホントに残念な変態である。


 しかしこれ以上変態に変態だと言っていても話が進まないし、本が読めない。

 どういった手品で私の家に侵入してきたのかはわからないけれど、いい加減お引き取り願いたいし、今は私に危害を加える気はなさそうだけどいつ気が変わらないとも限らない。

 改めて1メートルほど離れた場所に正座し直してもらって、続きを促す。


「…………わかったから話進めて。頭の残念な変態(アーデルなんとか)さん」

「今すごい失礼な言葉にルビ振りませんでした!?」

「気のせい。っていうか、さっさとしてくれない? 私も暇じゃないんだけど」

「あうぅ…………こんなに蔑ろにされたの初めてですよぅ……」


 泣き真似とかはいいからホントさっさとして欲しい。

 ジト目で睨みつけると慌てたように話を再開した。


「改めまして、(ワタクシ)アーデルハイドと言います。あなたの願いを叶えに来ました!」


 正座のまま満面のドヤ顔で、どうだ! と言わんばかりに変態(アーデルハイド)は言い放った。

 やっと言えました! ときらきらした顔になっているけれど意味が分からない。

 そもそもそれが用件だというのなら、私は最初から願いを言いまくってるだろ。


「帰れ」

「そ、そういうの以外でお願いします!!」

「消えて」

「慈悲の欠片もない命令! 少しは温情を頂けませんか!?」


 私的には話を聞いているだけで温情を使い果たしてる。

 ホントに警察に通報してやろうかな。面倒くさくなってきた。

 私のそんな心情を読み取ったのかどうかはわからないけど、アーデルハイドは引き攣ったような顔をして土下座スタイルに移行した。


 シュールな絵面だな。フローリングの床に土下座のバニーガール。


「お願いしますーー! 今回ノルマきついんですよぉぉぉーー!!」

「知らないしノルマってなんだよ」

「願い事ノルマ達成率で待遇が変わるんです!! グアム行ってみたいんです!!」

「勝手に行けよ!? っつかサラリーマンかよ!!」

「最近はランプの精もノルマ制なんです!!!」

「知るかぁぁぁぁ!! お前紅茶缶から出てきただろ!!!」


 あまりに意味不明なことをのたまう変態に、ツッコミどころを間違えた。



◇◇◇



「で」

「はい」


 あれから、飛んだり透けたりポルターガイストを引き起こしたりと色んな方法で私を信じさせようと画策してきたアーデルハイドが面倒くさかったので渋々信じる姿勢を見せておいた。

 精霊というよりは悪霊じみたことしかしてないよな、と思ったけど言ったら余計に五月蠅くなりそうだったのでそのツッコミは飲み込んだ。(ようよ)う我慢してると思うんだ、私。


 そしてその自称精霊は今再びフローリングに正座をして私の前にいる。


 頭の痛くなることに、この自称精霊は私にしか見えず私にしか触れないらしい。

 霊感のある人なら感じ入ることは出来るかもしれないけれど、よほど霊力が高くないと無理なのだとか。じゃあ警察呼んでも私がイタズラをしたとしか思われないということになるじゃないか、と言うと、初めて気づいたと言わんばかりの驚愕の表情を浮かべていた。馬鹿なんじゃないだろうか、コイツ。


「私の願いをアンタが叶えるまで私に取り憑くってことでFA(ファイナルアンサー)?」

「あの! なんかそれじゃ(ワタクシ)が悪霊みたいな言い方なのですけど!」

「似たようなもんだろ」

「あうう……精霊なんですよ? 神秘の権化なんですよ? 願いを叶える存在なのに悪霊扱いとか……」


 ぶつぶつと言いながら凹んでいるけど、いきなり呼んでもないのに出てきて押し売りしてくるとか悪徳セールスみたいな扱いされても仕方ないと思うんだが。

 それに、無条件で願いを叶えるとか胡散臭いにもほどがある。

 古今東西、上手い話には裏があるものだ。歴史や童話が物語っていると思う。

 あと純粋に、バニーガールに言われても説得力が皆無すぎる。


 そういった旨を淡々と伝えてみたのだが、アーデルハイドはキョトンとした表情で小首を傾げた。


「人間ってこういう格好で迫られるのが好きなのだと精霊神様が言ってましたのに」

「馬鹿なんじゃないか、お前の親玉」

「あと、無条件じゃないですよ。対価は頂きます!」

「やっぱり悪霊じゃねえか!!」


 ぐっとこぶしを握ってアピールしてくるな! 悪霊じゃん!! 悪霊以外の何ものでもないじゃねえか!!


「で、でもなんでも叶えますよ!?」

「じゃあ帰れよ!!」

「それ以外で!!」

「なんでもって言葉辞書で引きなおせ!!!」


 もう嫌だこの露出狂……っ

 なんで休日の午後のひと時に変態の悪霊にここまで憔悴させられなければならないんだろう。


 自分の両ひざの上に肘をついて、ついでに溜め息も吐く。

 紅茶缶を開ける前の自分に今日は珈琲にしておけと真剣に伝えたい。


「溜め息を吐くと幸せが逃げますよ?」

「今幸せが逃げてるとしたら間違いなくお前の所為だよ」

「ええ!? じゃ、じゃあひとつ目のお願いは幸せになる事に……」

「さらっと自分のノルマ消化しようとしないでくれない!?」


 油断も隙もないな、この変態!


「あぅ……でもノルマ消化しないと(ワタクシ)も還れませんし」

「…………は?」

「あ、一度実体化したらノルマクリアするまでご一緒させてもらうことになるんですよ」


 言ってませんでした? と、小首をかしげて不思議そうにするアーデルハイドに殺意しか覚えられない。

 え、何? ってことは、私がなんらかの対価を払ってわざわざ願いを強制的に叶えられるまで本気でずっと取り憑かれたままなの?

 冗談で言ったのにマジで還ってくれないの? この変態。


「……お祓いっていくらくらいすんのかな」

「祓われる!? ちょ、効きませんからね!? お経とか精々眠くなるくらいですよ!」

「寝るの? アンタ」

「寝なくても平気なのですが、実体化しているので嗜好として楽しむ感じでしょうか。あ、ベッドでも布団でも大丈夫ですので」

「いや、知らねえよ! っつか、用意しねえからな!?」


 ぐっと親指立てて主張してきても知らないから。

 不法侵入の変態に用意する部屋なんかないわ。出ていけマジで。


「絶対零度の対応! むぅ、こんな美人を相手にひどいですよぅ。……あ! もしかしてED!? 治しますか!?」

「死ね」


 意味不明なことを宣いながら嬉々としてノルマ消化しようとしてきた変態に、ソファの傍らに置いていたクッションを全力投球した私は1ミクロンたりとも悪くないと思う。



◇◇◇



「……いい加減建設的な話をしましょう」

「お前が消えてくれれば話は早いんだけど」


 あれからクッションの投げ合い(一方的)をしていたのだけれど、私の体力が尽きたので改めて話をすることにした。


 不本意だけど。

 ものすっごく不本意だけれども。


 還れと何度言っても、実体化をした限りノルマを消化しないと精霊界とやらに還れないそうだ。

 しかも私を起点としているから私から10メートル以上離れることも出来ないらしい。迷惑なことこの上ない。っていうか、実体化してるのに私にしか見えないし触れないっていうのも理不尽だ。鬱陶しい。

 結局適当な願いを叶えてもらって対価を払うということが一番早いという結論に落ち着いたけど、私が妥協する形になったのがとてもとても気に入らない。


「あぅ……普通は願いを叶えるってものすごく喜ばれますのに……」


 ワタクシの存在意義って……と嘆きながら項垂れてるけど知らんそんなもの。

 強制的に対価を支払わされる身にもなって欲しい。押し売りとか性質(タチ)悪すぎるわ。


「た、大した対価は貰いませんよぉ!」

「黙れ、悪霊」

「ついにドストレートに悪霊扱い! 精霊ですってば~!!」


 こっちの思考を盗み読んで答えるとか悪霊以外の何物でもないと思う。


「……で、対価って何」


 紅茶を淹れなおして――――あと、不本意ながら目の前の悪霊(アーデルハイド)にも淹れてやって――――先ほどから確認しそびれていたことを聞く。

 因みにアーデルハイドは正座を続行中だ。

 情けで座布団とガラステーブルの使用は許可したのだから十分慮っていると思う。私? 私はソファとサイドテーブルを使ってる。半径1メートル以内には近寄らないで欲しいし。


 私が一口紅茶を飲んでそう聞くと、アーデルハイドも紅茶カップに口を付け少し唇を潤して嬉しそうに話し出した。

 どうでもいいけど、なんでカップとかは触れるんだよ。ご都合主義だな、ホントに。


「えっとですね! 対価は願い事の大きさによって変わるんですけど、基本的には精気(セイキ)です」

「…………生気(セイキ)?」

「はい! 金銭などは頂きませんのでご安心ください!」

「いや、微塵も安心出来ないんだけど!?」


 生きる気力持ってかれるとか下手したら死ぬんだが!?

 不思議そうに、なぜでしょう? って聞き返されたけどその台詞がなぜでしょうだよ。怖いわ。マジで悪霊以外のナニモノでもなかったんだけど。


「1億欲しいとかでも一時的にちょっと疲れるくらいですよ?」

「死ぬかもしれないことが“ちょっと”!?」

「大袈裟ですね~。……あ、もしかして童貞なんですか?」

「今それ関係あるか!? っていうか童貞じゃねえよ! さっきから地味に失礼な悪霊だな!?」

「え……だってこんな美少女に精気(セイキ)を要求されて断るってことは夢見る童貞さんかEDじゃないですか?」

「すっごい偏見もってんだけどこの変態」


 心底不思議そうな顔で小首をかしげながら世迷言をのたまっているんだけど。

 悪霊(セイレイ)と人間の感覚の差をわからせるにはどうしたらいいんだろうと考える自分と、そもそも説明する労力すら惜しい自分が拮抗している。労力を取ったのは言うまでもない。


「…………まあ、それはどうでもいいや。とりあえずさ、生気(セイキ)以外のモンで払えないの?」


 さっき聞き逃しではなければ、基本的には、と言っていた。

 ってことは、別のものでも支払い可能であるということだろう。下手に生きる気力を持っていかれて自殺願望とかに駆られたりとかしたら怖すぎるから、別のもので代用できるならそれに越したことはない。


 ……わざわざ他人に叶えて欲しい願いもないのになぜ私はこんなに精神を削って変態の相手をしなければならないんだろう。


 若干遠い目になって世の理不尽を憂いてみたけど、憂いたところで現実は変わらない。

 きょとんとしながら私を仰ぎ見ている変態の目を見て問うてみる。虚言したらコイツ埋めよう。


「あの! 何やら寒気がするのですが気のせいでしょうか!?」

「うるさい。さっさと答えろ」

「あぅぅ……目が据わってるんですけど~。精気が嫌ならダイレクトに精液でも構いませんよぅ」

「ああ、そう。じゃあそっちで…………って、はあ!?」

「はぁ~い! ではではお願い事をどうぞー! お願いによって回数を決めますので!」

「いや待てやこら!?」


 さくっと話を進めようとするな!?

 生気を断ったら精液ってどういうことだよ。回数って何。いそいそとどれくらい貰おうかな~、とか鼻歌歌ってんなよ。

 思わずソファから立ち上がってアーデルハイドを指差し苦言を申し立てようと口を開きかけるが、言いたいことが多すぎて言葉が出ない。

 なんだコイツ! 露出狂の変態不法侵入者の悪霊ってだけでもキャラ濃すぎるのに、追加で痴女だと!? ふざけんなよマジで!


 あとそもそもだな、さっきから心底失礼すぎる発言をそろそろ撤回させろ。

 ツッコミどころが多すぎて訂正すんのも面倒だから放置してたけども!


「出ねえよ精液とか!!」

「え!? じゃあやっぱりED!? お支払いはこっちでって言ったじゃないですかぁ!」

「言いかけて止めたわ! っつか、そうじゃねえよ! いい加減失礼にも程があるぞお前!」

「あ、……デリケートな問題ですものね。すみません、EDの方にEDとか言っちゃダメですよね」

「そこじゃねえよ!? いや、そもそもだな! 私は女だこの馬鹿女!!」

「いいんですよ隠さ………………えええええぇぇぇ!?」


 ひらひらと自分の顔の前で左手を振りながら隠さなくても、と言いかけた変態が驚愕の声を上げると共に心底信じられないと表情をありありと表したので、クッションからスリッパへウエポンを変更して全力投球した私の気持ちは誰かわかって欲しい。



◇◇◇



「……だっておっぱいないじゃないですか」

「悪かったな!?」


 貧乳はステータスなんだよ、くそ。無駄にでかい乳しやがって腹立つ。変態のくせに。


 結局微塵も話が進まないまま日が暮れた。

 私が全力投球したスリッパを、アーデルハイドは避けることなく顔面に綺麗に食らって倒れていた。さっきまで。今は起きて私の前でぶつぶつと失礼な暴言を吐いている。もっかい顔面にスリッパヒットさせてやろうか、こいつ。

 仰向けに倒れて大の字に転がっていたので放置しておいたのだけど、そのことも気に入らなかったらしく恨みがましい目で見てくる。鬱陶しい。だってこのまま消えないかなと思ったんだもの。普通の人間相手なら私もきちんと看病する。っていうかそもそもスリッパぶつけないし。


 したくもないけど適当に相手をしながら手を動かす。日が暮れれば晩飯の用意をしないといけないし。

 っていうか、アイランドキッチンだったことを悔やむ日が来るとは思わなかった。目の前にバニーガールがいるのホントにウザイ。


 キャベツは一口サイズに切って一旦ザルへ。鶏もも肉は調味料に漬けて10分置いておく。

 その間にほうれん草を茎と葉っぱに切り分けて先に茎側をお湯へ投入。醤油とみりんとごま油は大さじ2ずつ、と。

 あ、こっちの鍋もお湯沸いた。人参と大根を入れて、豆腐は後で。

 卵もそろそろ使わないとな。卵焼きでいっか。回数わけずに一気に焼き上げるのが好みです。


「あの、聞いてますか!?」

「あん? ああ、そうだな。大根おろしとか欲しいところだよな」

「せめて会話にそった返答をしてください!?」


 うるさいな。だし巻きには大根おろしだろうが。

 きゃんきゃんとやかましい変態(バニーガール)は放置して、鶏肉を炒めにかかる。おろしにんにくいい仕事してる。匂いがいいよなー。


「ところで(ワタクシ)の分もありますよね?」

「ねえよ。むしろなんであると思ってんだよ」

「辛辣すぎません!? ちょ、普通同じ屋根の下でいるなら食事くらい……」

「680円」

「無駄に現実的なお値段!!」


 項垂れて、よよよ、とか泣き真似してるけど何一つ堪えないからな。それ。むしろ鬱陶しさで苛立ちが増すだけだから。

 阿呆の相手をしてたら鶏肉がいい色合いになってきたのでキャベツを投入。さっと火を通して鮮やかな緑になったら出来上がり。キャベツは歯ごたえある方が好きなので。

 最後に大根と人参の鍋の火を止めて豆腐と味噌を入れて、完成っと。


 炊飯器のふたを開けて、ある程度ご飯を混ぜたらお茶碗へよそう。甚だ不本意だけど、二膳。

 おかず類もすべて二皿ずつよそい、振り返るときらっきらした目で変態がこちらを見ていた。鬱陶しい。


「……うざい。きらっきらした目で見るな。今日だけだからな。明日絶対追い出すから」

(ワタクシ)! ご飯! 大盛りで!」

「調子乗んな死ね」


 その後、風呂と寝室の件でも揉めて散々人んちを引っ掻き回してきやがったので、スリッパでどつきまわして強制的に安眠させた。

 フローリングに転がしておいたけど人間じゃないしたぶん大丈夫だろう。情けとしてタオルケットだけはかけといてやったからありがたく思ってほしいものである。



 追記。

 結局。この露出狂が還るまで3ヵ月を有したので、もし紅茶缶とかから変態を召喚しちゃった人は即刻消しゴム買ってきてとかそういう願いで消費した方がいいということだけは記しておく。

 じゃないと新品の缶とか瓶とか開ける度に同じ変態が出てくることになるので。もう、ほんと、本気で鬱陶しいから。


「おねーさん! お昼ご飯はまだですか!?」

「お前マジでいい加減にしろよ!?!?」


因みに主人公の願いは謎のままです。数回ナニカを取られました。

最後に変態が出てきたのは歯磨き粉のチューブからです(7回目)


※途中にあったご飯のレシピ(どうでもいい)

鶏もも肉とキャベツのにんにく醤油炒め

ほうれん草のお浸し

大根と人参と豆腐のお味噌汁

だし巻き卵

白米

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