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05 掌の上で踊らされる普通に憐れな父×2



「なぁ。なんで俺たち今こんなところにいるんだ?」


「……俺が聞きたいくらいだが?」


────ですよね。


俺とヴェルスは今謁見の間の目の前に立っていた。全くもって意味が分からない。何故?どうしてこうなった?と、動揺で頭がパンクしそうである。


誰と謁見するかって、そんなの一人しかない。この国のトップ、まさしく国王様と会うためだが。いくら王城に勤めているとはいえ、一介の騎士風情がこうも易々と国王様を相手に会話を交えることなんてそんなこと普通はない。────完全に異常事態だ。緊張でガッチガチですけど?


本来であれば上司にあたる近衛騎士殿に、くれぐれも粗相のないようにと釘を刺された俺たちを待ち受けていたのは御覧の通り国王陛下その人であるわけですが。


「キース・ステアフィール、ヴェルス・グランデ。顔をあげよ。」


「「はっ」」


「我が娘の護衛の任、誠に御苦労だった。突然の要請だった故、さぞ驚いたことと思う」


「い、いえ。身に余る光栄です」「滅相も……」


なんでこんな事になってるのかと。それは1週間前に遡る……





「ステアフィール、グランデ。お前らはこの後、団長室まで来い。以上、解散」


俺は朝礼が終わるや否や隣で放心してこちらを見ているヴェルスに向かって「え?クビ?」と、思わず声を漏らすほかなかった。正直団長室に向かうまでの道中はもうほとんど記憶がない。365日ずっと眉間に皴の寄っている団長殿だが、なんというか今日はいつにもまして……眉間にとんとんとあてがっている指が吸い込まれるんじゃないかと思うほどに深い。俺らここで死ぬか?もしかして。


「あ、あの~」


「はぁ………来週、第一王女殿下が隣国まで訪問なさるのだ。それでな、その護衛任務について陛下じきじきにお前たち二人を付けよとの命が下されたわけなんだが……お前ら何かしたのか?」


「「は?」」


「は?ではないが」


「「……は??」」


「だから、は??ではないが。お前ら……ほんとに心当たりないのか?」


「いや心当たりと言われましても日夜警備と訓練、討伐遠征に明け暮れる日々というか……」


「そもそも国王陛下と直接言葉を交わすなんてそれこそ恐れ多いことできるわけもなく……機会なんてあるわけもなく」


「まぁ……そうか。こうなったら仕方ない。やれるな?」


「「………」」


「や、れ、る、な???」


「「ハ、ハイィ………」」




思い返してもよくわからん。


そしてその期間というのも仕組まれたように、帰省する日ともろ被り。明後日から有給を取らせていただきたいのですが……と進言しようとしたその日の出来事だが??しかも、相手は国のトップときた。極め付けに護衛対象はまさかの第一王女殿下なんてこんなのたまったもんじゃないが。卒倒するかと思った。


この1週間というもの殿下に何かあれば俺達は打ち首、晒し首と言い聞かせ全神経を集中させ血眼になって危険がないか粗探しするという絶望に満ち溢れた地獄のような日々だった……


「はははっ!このような老骨相手にそう緊張せずともよい」


いや、無理ですよね。貴方自分の立場わかってます?


「そなたらの噂は我の耳にもよく届いておったぞ」


「「は、はぁ。」」


「(お、俺達噂になるような事したかーっ!?)」


「(わ、わからん……とりあえず笑っておくか?)」


「く…くはっ!くはははっ!その顔はわかっておらん顔だな?まぁ、すぐにわかる」


いや、さっぱりわかんないんですが?くははっ!じゃないですからね、ほんとに!


「いずれにせよだ。此度の任については我が娘も実に素晴らしい手際であったと褒めておった。くかか、その顔は我に聞きたい事があるのだな?」


「は、はい。仰る通りおひとつだけ伺いたい事が……」


「うむ、申せ」


「……どうして私達のような近衛ですらない一兵士に殿下の護衛を任されたのでしょうか?」


ヴェルスが俺の代わりにそう答えると陛下はよしきたと言わんばかりにニンマリと笑ってこう聞いてきた。


「まぁ概ね想定通りだが、敢えてヒントを出そう。我とそなた等が持っているであろう唯一無二の共通点を探してみるがよい。」


き、共通点!?そんなの同じ人間だって事くらいしかわからないぞ……いや、マジでわからん。共通点も何も俺達が国王と一体全体何をどうしたら縁を結ぶというんだ………ヴェルならわかるかと思ったが顔を見た感じこれは当てにできないな。


「うぬらの周りで余と歳の近い人物を探すといい。自ずと答えは出てくる」


同年代?陛下は確か、45歳になられたはず……いや、同年代ってモロに俺達の親世代……いやいやいや、親父はただの鍛冶屋だからありえんし……残るとすれば………ま、まさかっ!?嫌でもそんな、成功すれば昇格待った無しの完全にプラスになるような事をあの人がする訳……


っていうかそもそも陛下と知り合いとかそんなアホな事あるかぁ?……でもなんか否定できねぇ!


「ヴェ、ヴェルス。俺もうあの人しか候補がいない……」


「し、師匠とか言うなよ……!?」


いや、でもマジでそれしかないんだって。


「くくっ…グランデ、その師匠とやらの名前を申せ」


「ガ、ガルドノック・フランディルドで御座います陛下」


「ほぉ、奇妙な事も有るものだなぁ……くはははっ!余の旧き朋友の名も『ガルドノック・フランディルド』というんだがな?奇縁なものよな!」


──ああ、やられた。俺たち今最高に間抜けな顔してると思う。


「くっははははっ!ははっ!はぁ……ああ、そうだった、危うく忘れるとこだったな。喜べ、奴から伝言を預かっているのだ。久方ぶりの師からの激励、心して耳にいれよ」


『娘達や孫と久しぶりに会えるっていうのにお前らがいると興が削がれる。せっせと働けや、俺の大事な娘達に手だしやがった不埒なクソ馬鹿弟子どもめが』


「…だそうだ。くくっ、護衛という名の厄介払いご苦労だった。一国の王相手にしてこのような猪口才な謀に加担させようなどと思う稀代の馬鹿と縁を結んだこと、しかと恨むと良いぞ」


───あ、ああ……あんのクソじじぃいいいいいっ!






「それにしたって、折角の帰省なのにあの人たち急に出張が入るなんてほんとついてないよねぇ」


「仕方ないよ。とっても大事な仕事だって言ってたし。まぁ……お父様は孫を独り占めできるって喜びそうだけどねぇ」


「あっはは!言いそうね!なんならそう仕向けたりしそうだもの」


「それは笑えないよ……あ、そろそろ馬車が来る時間じゃない?子供達を起こしに行きましょうか」


まさしくそのお父様の謀略に自分達の夫が見事に嵌められているとはいざ知らず帰省すべく身支度を済ます妻達であった。

御察しの通り、キース・ステアフィールことリリィパパにヴェルス・グランデことラティスパパです


何気にファミリーネームは初出ですよね。


そして、回想のみの登場となりましたが、パパさん達の師匠、そしてリリィ達の祖父にあたるお方

ガルドノック・フランディルドさん

まだ国王様が若ーいときに身分を隠して冒険者とかしてた時にパーティ組んでたと組んでなかったとか。


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