04 圧倒的に普通を極めた情熱的アピール(本人談
赤ちゃんが遊びに来ました。はい、私も赤ちゃんです。
お世話さん……名前は多分エミリーさんかな。彼女が連れてきたんですけど、簡単に表現するならば、ぽやぽやした子としか言いようのない雰囲気のあるこの子はおそらく息子さんだと思います。エミリーさんが少し濃い青色の髪に対してちょっと薄い青空色っぽい髪色にはなりますけど、ちょっと垂れ目がちな目とどことなく天然そうな所がそっくりなので。
多分この子は男の子ですねぇっ!お目目もクリクリしてて可愛らしいですけど、何処となく男の子っぽさがでてますから!なんか口がふにゃふにゃしてる。ぱかぁって開いてるよ、大丈夫?よだれ垂れない?それ。あ、垂れた。
まぁウチのママさんとエミリーさんがお話してるのを聞いた事があるのでその存在については何となく知ってはいたんですが、お目にかかるのは初めてですね。ベビーベッドの上にて向かいあって私のことをじぃっと見つめてる……いや焦点が合ってないので私越しに虚空を眺めてるだけだなこれ。大丈夫?キミ。
ねえ、聞いて。この子ハイハイできるんだって。
「ぁー……うぉぃ」
羨ましいなぁ、できない事はないと思うけど私は普通に成長するからまだやらないもん!じゃなくて、できないもん!私は普通に成長しますから!
「ルティスって言うの、リリィちゃん仲良くしてくれる?」
「んあいっ!」
「ふふ、お返事が上手だね。うちの子は全然応えてくれないんだけど……大丈夫かなほんとに」
そうなりますよね。この子、なんというかすごくぽやぁっとしてるので、一瞬だけもしかしてこれが普通なのでは!?と、焦ったんですけどエミリーさんの反応的にそれは違いそうだ。安心。にしたって、ぽけーっとしすぎだよねっ!?普通に心配ですけど!?エミリーさんには色々(おしめ、飯)とお世話になっていますし、ちょっと頑張ってこの子の関心を引いてみましょうか。
「あー!おぁーーっ!」
「…………」
全然反応しないよっ!起きてる?おーい、起きてますかー?ちょっと、仕掛けてみましょうか。
左手を上にあげて──ぱふっと!
「…………」
口パカァ、よだれダラァですか。なんだこの子、普通じゃないな!!ほっぺた凹むくらい押されても動じないとは……一応触れたあたりから眺める対象を虚空から私に切り替えたっぽくて、じーっと見てはいるのに全く反応しないんだけど?口もふにゃふにゃとしてるだけで動かないし……え、生きてる?大丈夫?
こうなったら、もう奥の手ですよ。やっちゃうかぁ……両手を自分のほっぺたに当てて、ゆっくりと頭を後ろに逸らしてぇ……振り下ろす。もう一度頭を上げて振り下ろす!!おっほくらくらする。
「お”ぁああああああああっー!」
「ひうっ!?な、なに!リリィちゃんっ!?」
ヘッドバンギング、略してヘドバンよこれが。男子はね……好きなんですよ、メタルが。そう、これは気をひく作戦。これで普通なら反応しますよね、知将と呼んでくれこの私を。いえ、凡将と。
ほら、ほらほらっ!気になってきたでしょうっ!
「お”ぁあああああああ、ぁあ……あ、あぁ……?」
「………」
嘘、でしょ……そんなヘドバンに反応しない赤ちゃんなんて、そんなありえないわ!ありえないもんっ!
──────ピクッ
「………お、おお…」
あれ、ちょっと動いた?おお?ルティスくんっ!もう少しだっ君ならいける、いけるぞぉっ!
「お……お……お”ぁあああああああっ!」
「──っ!!!お”ぁあああああああっ!」
──ブンブンブンブンブンブンっ!
「ひ、ひいっ!?る、ルティっ!?リリィちゃんっ!?あ、ああアリシアっ!助けてっ!二人がなんか、小刻みに揺れて変な声あげてるのっ!」
『えーっ?なんてーっ!ごめんよく聞こえなーいっ!!』
「良いからっ!早くきてっ!」
なーんだ反応するじゃーん!!それにしてもナイスな振り上げですね……ルティスくんセンスあるねぇーっ!貴方も普通道を歩んじゃうか?良い子良い子。これで、私達おともだちねーっ!普通にっ!ルティス君やちょっとこっちに来てくれるか?私はまだはいはいができないもんでね……そう、そうそう……はい、仲良しの握手ーっ!
「やぁーっ!」「あぃーっ!」
────タッタッタッ
「んー?あら、普通に仲良くしてるじゃない。わっ!おてて繋いでるの?やーん可愛いーっ」
「え?……え?でも、でもさっき……えぇ?」
ねー!普通だもんねー!ママさんわかってるぅ!
………
……………
保護者組が部屋を後にしたのでこれで気兼ねなく君に奥義を授けることができるよルティス。
「う?」
「おぅあっ!お”ぁあああっ!」※寝転がって足あげて叫んでる。
見たかルティスくんっ!これが、一人ぶれんばすたーっ!男の子なら普通にこのくらい出来なきゃダメだよぉっ!まるで持ち上げられ、頭から落下しているかのような躍動感を絶妙に足を浮かすことで演出してやるの!極め付けにベッドを左手でバンバンバンっ!いえあっ!
「おおおぉおっぅ!お”ぁあああっ!」
素晴らしいっ!筋がいいよぉっ!ふふふ、目指せアルティメット普通の男の子よ、ルティっ!
◇
「はぁ……それにしたって今朝のなんだったのかなぁ」
「まだ言ってるの?気のせいよ、気のせい。疲れてるのかしらね、明日は休みにする?」
「ほ、本当に頭振ってたんだものっ!……それと明日も普通に働く」
「別に休んでくれてもいいのに」
「あのねぇ~……私は侍女なの!!そうぽんぽんと休む訳にはいかないの!」
「むぅ」
なんでそこで嫌そうな顔をするかな、まったく。ちゃんとお給金も貰ってるんだから侍女として働くのは当然だというのに……
「そうだ。ルティスも大丈夫そうだったから明日から部屋を一緒にしましょうか」
「うーん……まぁそれはありがたい提案ではあるけど、いいの?」
「そのうちそうするつもりだったもの。リリィだってそろそろ遊び相手が欲しいでしょうし。ね?」
「うー、そうしようかなぁ」
でもまた変な事になったらどうしよう……




