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03 君はもう既にノット普通です。


私が意識を得てから、はや3ヶ月も歳月が流れようです。0歳6カ月と言うことですねー。子供の成長ってものは早いものでして、色々とできる事が増えてきました。いや私が転生者だからとかじゃなくて、普通に成長したんです。普通に。


「うー、あいあーっ!」


先ずは自力で座れるようになりました、ええ普通ですね。それとなく言葉の理解もできるようになってきたんです。そして、その結果やっと自分の名前も分かったんです。───リリィだそうです!!


あら、普通で可愛らしいじゃない!?ねぇ、普通だよねぇ!うんうん、アルティミシアとかフランボワーズみたいな「もうなにその普通じゃない名前、脳汁噴き出しそう」みたいなのじゃなくて本当に良かったですよ!これは普通ポイント激高ですよねっ!うん、素晴らしい!


「うぇあっ!」


でもね、普通普通って私普通に普通なんで普通と言ってますけど、そんな普通な私もこの3ヶ月で色々考えました。というか考えるくらいしかする事がなかったので延々と思いに耽てたんですよ。


「おーおーぅ」


その結果ですね、この人生でもまた最後を迎えた時に同じようにジャッジがショートした場合、私はもう一回人生繰り返すのかなぁって。※まだゆりかごの時点で墓場のお話をしてます。


────それって最高にアン普通じゃないですか?


「ぅやぁああ……」


それだけは阻止しなきゃだめなんじゃないかなぁって。だからこの人生は少しだけ、本当にほんの……ほんのちょびっと。さ、先っちょだけでも!そう、普通じゃない人生を送らなければならないのかなぁ……なんて考えて相変わらず咽び泣いてる日々を送っておりました。


「おあああーっ!」


そんな私がノット普通、アン普通を目指すなんてこれもう万死に値するわけですよ、表出ろって話です。人間失格ならぬ普通失格ですよ!ぱぁらっ!今、私この気持ちを体で表すべくしてブンブン両手振り回してますから。腕くらい動かせるんですからね、その気になればパンチだって出ますよーっ?ふんぬっ!ふんぬーっ!


「あら、今日は一段と機嫌がいいわね」


「うあーっ!」


寧ろ機嫌は宜しくない方ですけどね。もうおわかりかと思いますが、そうです。私言語を理解できるようになってきたんです。時折何言ってるかわからない事もありますけど、まぁ概ねは聞き取れるようになってきたんですよ!!


「もー、うちのこ可愛いすぎ!」


「お”ぁああ」


ぐぇっ!?


ママさん、加減というものを覚えてくれませんか、すごく苦しいです。そのノット普通で乱暴なお胸をどうにかしてください……話が逸れましたけど、要するにですよ?今世ではちょっとは普通であることを自重しなければならないのかなって冷静に断腸の思いで決意したわけです。だって、そうじゃないとあの駄神があらゆる手を使って再転生とかしかねない訳ですよ、また生き地獄を味わう羽目になると。そういう事です。


「ぁぃっ」


生き地獄は生んでくれたママさん達にも流石に悪いので訂正しましょう。生き晒しにしときます。でもほんのちょっとですから、a little ノット普通ですから!ごめんねの意味をこめて、一番手近にあったでけぇ乳をぺしぺしと叩いてると勘違いして布をひん剥きだしたのでわしゃわしゃと体全体を動かして猛抗議しました。


「あら、ごはんじゃないのね?」


「う!」


「やだ……まるで言葉を理解してるみたい……かわいい……」


ですが、生まれてこの方普通であれという宿命のもとに生きていたアルティメット普通こと、このわたくし。そもそも普通じゃないっていう状態を維持できるか?問題が勃発しました。 なので私は【普通っぽいけど、よく考えると普通じゃない】このなんとも言えぬ際どいラインを見極めていこうと決めました。早速です、その際どいラインを見極める一環として一つ考え出したんです、ほめろ?


【一日中、延々と寝たふりをしてみる】


赤子が寝たふりをする、どうですか普通じゃないですよねっ!これほんと鳥肌立つかと思いましたよ、拒絶反応で。まぁ、結果から言いましょうか?


 タチの悪い病気にかかったと思われて家族一同大パニック、ママさんショックで寝込むという大惨事でした。こんなはずじゃなかったのっ!あのね、そうじゃなかったの!


『あらー、この子ったら赤ちゃんなのに寝たふりしてるわぁー♪ もしかしてa little普通じゃない子なのかしらぁ♪』ってキャッキャっ!ウフフっ!ってリアクションを求めていたんですもんっ!そりゃまあ確かにやりすぎたなって思いましたよ?よく考えなくても丸一日ぴくりともしない赤子とか病気以外の何物でもないですよね!?うん、私が悪い。これは流石に異常だった。


異常???


「ひ、う、っ」


落ち着いて、私は普通よ?そう、うん普通────ああ、普通じゃないって難しいですな。


「泣く……あら、泣かない……凄い。なんで我慢できちゃうのかしらね……」







私が5歳の頃にアリシアの従者として引き取られてからもう既に14年も経つ。


昔から奔放というか、あの親にしてあの子ありというべきか。アリシアは少し変わり者で昔から私が従者として振る舞う事を嫌って、普段通りでいて欲しいとせがまれたのが一番大きい要因なんだろうが結局いまではただの姉妹のような関係に落ち着いてしまった──さすがに、公の場では主従関係を見せるべきだとそこだけは私が断固譲らなかったけれど。


彼女が16の時に長男のアルス君を身篭った時、侍女として、そして親友として非常に嬉しかったし、自分の事のように喜んでしまったことを今でもよく覚えている。そして今回、私が第一子を出産してアリシアの第二子が私の子と同い年で2ヶ月しか変わらなかった事はとても嬉しくて、これからは乳母としても彼女の役に立てる事が出来ると喜んでいたというのに「ミルクは私がやるのよ!」と頑なにお世話させてくれないのは非常にもどかしいものだ。


「エミリー、私少しだけ離れるからリリィのことちょっと頼めるかしら?」


「それが私のお仕事っていっつも言ってるでしょ!私のことなんだと思ってるの??」


「妹よ?」


「戸籍上では違います、から!立場としては侍女!!ですから!」


「そうね、次女ね」


「そうそう……まって、いま何か違ったよね?」


「そんな事ないわよ~」


いつもこんな感じだから、本当に呆れてしまう。アリシアが私の主人で良かったと思うのは本心だけど。


「はぁ~……ほんと貴方のママは全然わかってないよね?」


「なうなう!んまぁあああ!!(八つ裂き覚悟でチョッキィプルィイイイッ!!)」


「ねーっ」


リリィちゃんは、私の息子のレティスやアルス君の時と比べても明らかに手のかからない子で、話しかけるとまるで理解しているかのような返事をしてくれる。今日はいい天気ねーって言うと嬉しそうにするし、雨だねぇって言うとちょっと悲しそうにしたり。


レティスなんか、ずっとぼぉっとしてふにゃふにゃしてるだけなのにねぇ……たまに凄く活発な動きを見せる時があるけど。腕をめいいっぱい伸ばしてぶんぶん振り回してたのはちょっと笑ってしまった。腕もげそうでちょっと怖かった。


リリィはすごく頭がいい子なのかな、それとも女の子はやっぱり赤ちゃんの時からおませさんなのかな。そんなわけないか。アリシアも言ってたし、そろそろ二人を合わせても良さそうかなぁ。仲良く遊んでくれるかなぁ。


八つ裂き覚悟でチョッキィプルィイイイッ!って何やろね、わからん。

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