いや授業はじまれ?
ちょっと忙しかったっす
「ちょっとだけおさらいをしようね。とりあえず、そうだな……指先に魔力を集めてみてくれる?」
「んっ!!」
ア リトル 普通じゃないを社訓に勤め上げたこの数週間の結晶は伊達じゃないのでこのステップはもう序の口ですよ!ほら!息をするように自分の魔力を感じ取ることなど造作ではないですわぁ!!ほらほらほら見てみなさいよこの慎ましくも煌びやかに光を放つこのフィンガーを!!
この、法などというわけわかめで奇想天外なものが溢れとる世界のなかではまさに常識といっても過言ではない初歩たる初歩!魔力操作ですよこれが!!!
「そうそう。じゃあ、それを止めてごらん」
「う、うんっ……んー、んー?んんうーっ!!!」
と、止められるとは言ってないもんね!!!!
「そうだよね。止めたくてもうまく止められないし、それどころか少しずつ増長……じゃなくて、おっきくなっていく感じはわかるかな??」
「ひ、ひかりつよくなってるかんじ……する!」
なんていえばいいかな、蛇口最大までひねったホースの口に親指をあてがって無理やり水を抑え込もうとするけど水圧に一切勝てる気がしなくてありとあらゆる隙間からあふれ出続ける感じかな。
でもこれが普通だってアレク師匠言ってるしな私悪くないもんな……あ、ちょっと魔力の勢いやばそう!!師匠!!??私いつもこんなになる前に魔法陣に手突っ込んで水爆発起こして止めてるからほんとに止まんない!!まってまってまって!とめて!!!
おい、なにをにこにこしてるんだお前ぇ!!!!ねぇ!!ねえって!!光り方普通じゃなくない!!?!!??いや普通だけど普通じゃなくってちががががg
「はい、ストップ」
「ほわぁっ!!!?」
アレク師匠の手が私の手に添えられた瞬間、抵抗がなくなったというかピッタリ収まった。
「……いじわる?」
「あっ違うよ!?ごめんごめん、一言いうべきだった。精霊さんがどのくらいリリィちゃんに力貸してくれてるのか見たくて」
「ひどい、しぎゃくしゅみ!!」
「し、嗜虐趣味!?!?」
がっくしとうなだれる師匠。まあいいでしょう、一応止めてくれたし。ほら続けたまえとしっかりとスナップの効いたパーでアレク師匠の内ももに鞭を入れる。
「じ、地味に痛い。えっと、結論から言うとリリィちゃんは8つの時の僕より既に精霊の加護の影響が強い……っていうのは間違いで!!!籠!籠ね!!精霊さんの新しい籠は僕がちっちゃい頃より大きくなったのかな?それでむかしよりサービスが手厚いのかなぁ~!?」
なんだか一瞬聞き捨てならない単語が出たと思ってびっくりしちゃったな。それにしてもすごいんですね、精霊さん!!この数年で大規模な業務拡大を図ったとそういうわけか!だったらあの光りかたも仕方ないな!!!!!サービス向上の光!!
「じょうじょうきぎょうにちがいないな……」
「そ、そうだね?おさらいはここまでにして。次は本題なんだけど、僕が今からリリィちゃんに教えるのは、おおざっぱにいうなら無詠唱で魔法を使う方法なんだ」
「むえいしょう」
「そう、おまじないを口に出さないってこと。例えば水球を無詠唱で展開すると、ほら」
ほらという言葉とほぼ同時に、つい数分前に見た水球と寸分違わぬものがアレク師匠の手元に出現している。
「たまでてきた」
「これが実は結構難しいんだけどね。無詠唱自体高等部レベルだし、得手不得手はかなり別れるかな」
「じゃありりいにはできないな」
「エッ!?」
「じゃあリリィにはできないな」
リリィはまだ2歳です、お受験にむけて勉強を進めたとしても初等部クラスだと思うんです。さすがの私もね、まだ高校受験に向けて研鑽を積むのはちょっと違うかなぁって……普通に。
「アッ!!行使する魔法の度合によって難易度がちがうんだよ!!それに階段飛ばしは危ないから、段階を踏んでいくのはあくまでも学園の教育方針なだけであって、まだリリィちゃんは学園に入ってないから関係なくないかな!?」
「それもわからなくはない……でもはやいものははやい」
ただ、それだけじゃちょっとまだ弱いよ師匠。このディベートは私達「普通に生きるものの指標会」の今後にも響く大事な議論だと思うの。私が階段を飛ばす、いや飛んでもおかしくないと合点の行く普通な理由を見つけなきゃならないのよ……
私は小枝のようにか細くて白磁かこれってくらい意味わからん白さの腕を組んで譲らない姿勢を取った。アレク師匠は私の意志の固さをくみ取ったようで、なにやらぶつぶつと呟いている。師匠、考えるときに独り言めっちゃすごいタイプなのかな。
「ぐうう困ったな……ふ、普通に固執するってなんだ……いや、傾向的には特別だとか優れていることに対しての嫌悪?忌避感のようなものを……ああぁ、話についてこれてる感がすごくて軽率に自然と喋りすぎたか……でもここである程度使えるようにしなきゃ僕みたいに描陣の授業で躓くだろうし……うっ落第評価を取った時に失神した母の姿を思い出すだけでなんだか気分が悪く……」
「ししょう」
「……そりゃまさか僕だって魔力値も高いからきっとすばらしい魔法使いになれるぞ!って両親やら先生やらいろんな人に太鼓判押されて、さぁ魔法の授業がはじまりましたの初回実技試験で落第とるなんておもわないし……」
「ししょう!!」
「学園の規則上再試験で合格しない限りは次に進めなかったんだし、あの時に『…さん』が気づいてくれてなかったら僕どうなってたことやら、考えるだけでも身震いする……」
「ししょう!!!」
こいつ全然聞こえてないな!!ちょっと、アルスお兄様!そこで伸びてないで来て!!ほら起きろ!!べち!べち!!べち!!!おきたか!?おきたな!!よし、なにもいわずにあそこで座り込んでぶつくさ言ってるあほに突撃ィ~!!!
うわ、頭からいったな。痛いぞあれ。
「あいたぁあっ!?あ、アルス君!?!?なに!??」
やっと気づいたか!アルスお兄様、ありがとう戻っていいよ。寝てていいよ。
「しのごのいってられなくなった。すぐにおしえて」
「え、いいの??じゃなくて!アルス君!?あれまた戻って……横たわって……えぇ??」
「師匠、落第はアカン。早急にマスターしよう」
「すごいね、落第なんて言葉わかるんだ」
「……い、いやなひびき!!」
「成程?」
アレクによるとこの時のリリィは2歳児とは到底思えない気迫に包まれ、心なしか活舌も幼い子のそれではなかったように思えたそうです。




