プロローグ
戦場、その場において無傷と言う事は完全なる勝利を意味する。
血生臭いそんな場所で兵士たちはそれぞれの思いを胸に戦う。
ある者は戦場だけを求め、ある者は明日も生きるため、ある者は自分の求める物を手に入れるため、ある者は……自分を見つけるために……
戦いは人を強くする。どんな形であれ多くの方向性に分かれ、多くの方向に伸ばす。
生と死の戦いの中に人は何かを見いだし、自分自身の価値観を見つけるのだ。
とある街の酒場、そこは酒と肉や魚などを焼いた臭いで充満し、鼻を摘みたくなりそうな臭いだった。
そこには荒れくれたならず者たちや傭兵、いずれも腕の立つ人間が多かった。
その中で、一人奇妙な雰囲気を持った青年がいた。
その青年は光に当てると反射する魔力で編み上げられたフードか付いた特殊な黒いマントで身を包み、金の刺繍が施された灰色の衣服を身に纏っていた。
マントは酒場の所々に灯された明りに薄暗く反射し、気迫に近いものを放ってもいたが青年はフードをかぶり、その素顔を見せようとはしなかった。
一見は魔道士、もしくは何処かの下級貴族、旅人にしては少し高貴な雰囲気を持っていた青年はカウンターで蜂蜜火酒の入ったグラスを手元に置き、数枚の軍事資料を見ていた。
「お客さん、何処かの軍師さんかい?」
酒場にいたマスターが慣れた言い方でそう青年に問う。
すると青年フードと青年の前髪で影になった表情を見せることなく、苦笑して言い返した。
「いいや、私は軍師だけど誰にも仕えていませんよ、これでも私は旅の軍師ですからね」
そう言ったのは「流離いの神軍師」と名高いレスト・ロックハートだった。
流離いの神軍師が指揮する軍は必ずしも勝利へと導かれ、完全な勝利を手にすることで有名だった。だが、彼は誰にも仕えることも無く、ただ戦場を転々とし、必ずと言っていいぐらい不利な方に加勢する。そして勝利へと導いた後、数日分の食料といくらかの路銀を知らぬ間にくすね取った後に勝利の宴に参加することも無く消えていく。
そんな彼を見て多くの者が口をそろえてこう言った「流離いの神軍師」と……
スランプを抜け出し、連載作品を再開するところを新作品を出した綾織吟です。前作品を読んでくださっていた方には非常にすみません。
今回は高校に入って初の連載ということで、出来るだけ続けていきたいです。




