第6話 僕は野山で財を得るよ
「ここ最近宿敵に首チョンパされる前に毎日が死に際の日々なんだよ。ゴーブ君」
「ゴブゴブ?」
「うん。そうなんだよ。いや~、僕が本音で話せるのは君くらいだよ。全く」
「ゴ?! ゴブゴブ///」
赤面しながらゴブゴブ言うのはこの世界で親友となったゴーブ君だ。
彼とは僕の償いの土下座と定期的に献上している蜂蜜を対価に親友関係になったんだ。
ああ、彼が話す亜人語が何故理解できるかって? それは僕がこの世界でのジョブ。奏者を目覚めたからだよ。
奏者に目覚めると色々な美味しい得点が盛り沢山でね。
亜人語の理解から始まり。仲間化、使役、意志疎通、知覚共有、配合、成長促進なんかも出来るようになるんだ。
ゴーブ君がゴブゴブ言う様になったのも彼に謎の茸を食べてもらってパワーアップしてもらったからさ。
初めて食べてた時は白目をむいて苦しんでたけど。2回目以降は自分から求める程夢中になって食べる様になったから不思議だね? 幻影の森で生えた茸なんだけどそれのせいかな?
おっと話が脱線しちゃったね。 僕が何で奏者に目覚められたかというと勿論生前のゲーム知識をフル活用したからなんだ。
奏者の目覚めの条件は対象者への餌付けと絶体に相手を裏切らないという信頼関係。
僕はゴーブ君を敵に回したくないから謝罪しに行った時は速攻で土下座して献上品を差し出したからこの条件を満たせたってわけさ。
そして、ゴーブ君を起点に彼の友達であるスライムのスラちゃんや狼牙族のウル君共仲良くなり。果ては竜のレッド君ともマブダチになったんだ。
これも生前のゲーム知識を元にセイフライド領地にある金脈や隠し財宝をかき集めた財宝や魔道具を手に入れまくった結果だね。
そのお金を元手にライチ師匠の怪しい知り合い達からゴーブ君達の好物を買い。それをゴーブ君達に贈った献上品と僕の土下座スキルの賜物だね。
……そこにプライドはないんかって? 死ぬよりは良いよね? 生き残りたいもん。土下座は生前のお爺様との武術の稽古で慣れているからね。
ハハハ。あの頃はゲロを床に撒き散らせながら修行して意識を失ったら土下座しないと許してもらえなかったから。辛い日々だったのを良く覚えているよ。
それにしても今は毎日瀕死の重傷を負ってるだけでゲロを吐かない分楽に感じられるよ~、回復魔法で死ぬ前に自力で生き残れば良いんだもんね。
今思えばお爺様の稽古オーフェンさん並みにスパルタだったな~!
「エロい乙女ゲー《乙女達は男装乙女に恋をします》のオープンワールドを隅から隅隅まで探索しクエスト達成率100%のこの僕に死角は無いよ。そして、セイフライド領地は金脈と隠し財宝の宝庫なんだよ。ゴーブ君」
「ゴブブ?」
僕はそう言いながら昨夜アレクシアやレイラちゃん達と堀当てた宝箱から1つの魔道具を手に取りゴーブ君に見せてあげた。
「この世界はね。金脈や財宝を見つけた者がその所有権を得る事が出来るんだ。僕はそれをセイフライド家の名前と魔法誓約を使って僕の個人資産に登録したんだ」
「ゴブゴブ!!」
「そのお陰で僕の金脈には魔法誓約による結界が敷かれていてね。誰も近付けないし。隠し財宝はゴーブ君のお友達の……」
『キュララララ!!』
「シンく~ん! レイラちゃんを屋敷の近くまで送って来てあげたよ~」
「お疲れ様です。アレクシア~!」
「ゴブゴブ!!」
ゴーブ君のお友達こと。全長10メートルはある火竜の子供レッド君がアレクシアを乗せた状態で僕達の元へと下降して来た。
そう。ここセイフ山地は火竜種の巣でね。ここら辺一帯はレッド君の縄張りでレッド君に僕がこれまで手に入れた財宝の管理を任せているんだ。
気性が荒いレッド君を僕の親友ゴーブ君の好物の謎の魔肉をあげてマブダチになってもらったんだ。
謎の魔肉はセイフライド領地のとある秘密の場所に生えているんだけど。生前のゲーム知識さまさまだよね。簡単に手に入ったよ。
財宝の中には異世界転生の必需品でもある『収納魔道具』『魔法の短剣』『魔力の指輪』なんかもあったから常備装備して身を守れる様になったよ。
それとレイラちゃんは夕方から屋敷でお勤めがあるから先に屋敷に帰らせたんだ。もっと居たいですとか駄々《だだ》をこねてたけど。アレクシアが強制的に連れ出して帰って行ったんだ。あの2人本当に仲が良いよね。
僕達の最近の1日のルーティンは朝は瀕死の重傷を負いながらの稽古(僕だけ限定。2人は軽い打ち合いだね)。
昼から夕方までは魔法や雑学のお勉強(僕だけ魔法耐性を付けされるとかでライチ師匠の全力の魔法を生身で受けるんだ)。
夕方からは大陽が沈むまではセイフライド領地の探索だね。この時に予め知っている金脈は、僕が速攻で発見&所有権を登録。
隠し財宝は3人で山分けだね。2人は要らないとか言い張るんだけど。財はあって損はないからね。ちゃんと三等分で分ける事にしているよ。
将来アレクシアとレイラちゃんが結婚する時にでも資金として使ってもらえると嬉しいな。
まぁ、僕はその頃になったら2人の前からフェードアウトして。どこかの僻地でスローライフを送っているだろうけどね。
そして、アレクシアが自分の屋敷に帰って僕一人になったら野猿の様に野山をゴーブ達とリアル百鬼夜行でモンスターの列を成して遊び回っているんだ。
まあ、夜の10時になったら解散して屋敷には戻るんだけどね。
「シン君っ! 離れている間寂しかったの……レイラちゃんを送っててあけだご褒美に頭撫で撫でしてほしいの」
『キュララ~』
アレクシアは地上へと降りると同時に僕の目の前に来て頭を下げて来た。それを見たレッド君も同じ仕草をしているね。
「はい。アレクシア。良く頑張りましたね。ありがとうです」
「ゴブゴーブ!」
僕がアレクシアの頭を優しく撫でるとゴーブ君がニヤニヤと僕達のやり取りを見ていた。何だろう? 凄いデュフフみたいな笑い方なのが凄く気になるね。
『キュラランン!』
「はいはい。レッド君もお疲れ様でした」
続いて謎の魔肉で僕に懐いてくれたレッド君の頬を優しく撫でた。
いやー、本当に謎の魔肉って凄いよね。子供とはいえこんな屈強な火竜種と強制的にお友達になれるなんてさ。どんな催眠効果があるんだろうね?
「む~! レッドちゃんばっかりズルいよ。私の頬も撫でて。シン君」
アレクシアは頬を膨らませながら自身の頬を指差して、僕に迫って来た。最近は何かにつけて僕に身体の部位を触らせようとしてくるのは何でなのかな? いや。仕草が可愛いから触るけどね……ロリアレクシアは可愛いからさ。
「え~嫌ですよ。シュリディンス家に変な誤解をされちゃいますし……護衛の方々に首チョンパされたくありませんからね」
「首チョンパ?」
(((………)))
居るね。数人。あれは多分、アレクシアの護衛兼専属メイドさん達かな? ジョブは暗殺者辺りそうだね。
アレクシアが無事に過ごせる様に姿を隠して見守ってるなんて随分と忠誠心が高い護衛の人達だね。流石、隠しヒロイン三姉妹。アレクシアとのニャンニャンニャーンシーン時は感動の場面で震えたのを今でも覚えているよ。
某七つの玉を巡る物語でも語られていた様に。人は死に際に己の潜在的才能を開花させたり。自身の限界値を越えたりするらしいんだけど。
この世界でも然りでね。肉体を失わずに死に戻りをすると魔力増強、身体活性、潜在開放、ジョブ適性開眼なんて事が起こるんだ。
そして、その事をこの世界の人達は全く知らない。前世の知識がある僕だけが知っている知識なのさ。
恐らくだけど。この世界の剣鬼オーフェンさんは何度か肉体への死に戻りを経験したんだと思う。
でなければこの世界であそこまで突出した力を持てる筈がないんだ。
そして、この世界の主人公アレクシアも。ゲーム中出てくる敵対者達によって何度か凌辱しかけたり殺されそうになっている場面があって、その度に何かの謎パワーで切り抜けていたんだよね。
それが肉体への死に戻りで得た力だったって事は《乙女達は男装乙女に恋をします》のコンプリートガイドを見るまでは知らなかったんだよね。
「ゴブゴ! ゴブゴブ!」
僕がアレクシアの頬を撫でているとゴーブ君がとある木の幹の樹洞を指差して話し掛けて来た。
「え? 姫も戻って来たし『妖精の国』の国に行くって?……(妖精の国って。確かアレクシアがメンヘラ快楽堕ちルートの時に行ける場所じゃなかったっけ?)」
「ゴーブゴブ!」
うんうんだって。本来人族は滅多に招かないらしいんだけど。僕や姫はマブダチだから女王に様に謁見させてるって言ってるね……ていうか。さっきから言ってる姫って誰の事だい? さっきから近くの水溜りに擬態しているスラちゃん(♀)の事でも差してるのかな?
まさかスラちゃんは粘膜種族が暮らすスライムの里のお姫様だったりしてね。ハハハ……まさかね。アレクシアはシュリディンス家の貴族だから違うし。本当に誰の事を差してる姫なんてゴーブ君は言っているんだろう?
「ゴブゴブ~!」
「シン君……ゴーブ君が木に空いた穴中に入って行っちゃうよ」
アレクシアが僕の服の裾を摘みながら不安そうな声で木の樹洞を指差している。見知らぬ場所に行くから怖いのかな? 心配だね。
「ゴーブ君に着いて行きましょう。アレクシア。もしかしら何かの『加護』を授けてもらえるかもしれません」
「……『加護』?」
この世界の精霊種は時々、気に入った相手に特別な『加護』を与えてくれる場合があるんだ。
それが分かるのはゲームのアレクシアのメンヘラ快楽堕ちルートで発覚するんだけど。あのルートは興奮したね~!
今隠れている美少女三姉妹とアレクシアが夏の時期に汗のかき合いながらくんずほぐれずの……これ以上は止めておこうか。
僕の後ろには本人と樹洞が僕達サイズしか入れなくて。アレクシアの護衛をしている美少女三姉妹達が四苦八苦しながら慌てているんだからね。
しかし妖精国か~、ゲームでは終盤でしか行けなかった場所なのにまさか幼少期に行くことになるとは思ってもみなかったなぁ。
「ちょっとっ! お尻が突っ掛かって入れないわ」
「私達の大切なアレクシア様が追えない~!」
「あの悪童にアレクシアを任せられませんのに~!」
そして、後ろの方から聴こえて来たのはデカ尻三姉妹達の悲痛な叫び声だった。




