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『仙人と小僧』
跪いた小僧が、問うた。
「生きる意味とは、何でせうか?」
「人、其其じゃ」
小僧の額に、脂汗がじわり。
「では、何故、人は生きているのでせうか?」
「出逢い、別れるのでは無い。逆じゃ」
小僧の額の汗は、顎へと流るる。
「小僧の頭では、理解が及びませぬ」
「言葉が、理解の邪魔をしておる」
顎に溜まった汗が一滴、地面の小石に、ぽつり。
「実感が、出来ぬので御座います」
「“生”と“死”の言葉を入れ替えて、考えてみよ」
小僧の頭に、微弱な電氣が流るる。
「彼世の者は、自分等の居る世を、彼世とは言わぬ。彼等において彼世とは、我々の居る此世の事じゃ」
仙人は、鼻下の白髭を撫でた。 小僧は独言の様に、呟いた。
「人は、己の今現在の状態を“生”と呼ぶ、故に、生も死も同義である、か」
脇に置いた傘を被って、小僧は山を下りていった。




