第四章 紅葉(クレハ)の始まり①
オープニング曲 『クレハの季節』
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牢に入り、2回目の朝を迎えた。
この世界の夏の朝は早い。
むしろ、夏至がもうすぐなはず。だから夜もあまり暗くはならない。
とはいえこの部屋から見える窓は、しっかり暗く、夜になるけど。
それでも今日は違う朝。
こともあろうか、犯罪者の身でありながら、憧れだったヴァンフォード先生の指導を受けられるのだ。
そんなことなら早く犯罪に手を染めておけば…なーんて、さすがに思わないけど。
朝食を終える。
今日はしっかり食べられた。
心も身体も落ち着いたのか、それともこれから始まることに身体も喜んでいるのか。
少し、量が多かった気がする。稽古をつけてもらう、身体を動かすということが食事のメニューにも反映されているのだろうか。それでもぺろりと平らげたのだから、我ながらゲンキンなものだ。
それから間も無く、警護の人が見えた。これから行くのだ、あの人の元に。
ゴリ男君とモヤシ君にも、朝のあいさつ、それから、行ってくるね、と。
二人にとても応援してもらえた。こんな素敵な仲間たちに、今まで何もしてこれなかったのだ、彼らを救うために、私は全力で事に当たらねば、と決意を新たにする。
そして…シャルの部屋の前は、規制線が張られ、立ち入り禁止となっていた。
それでも、彼女にも言った。
行ってきます、と。
◆
支部舎の道場へ着く。
ほんとに、どれほど久しぶりだろう。かつてはここで私も夢を追いかけ汗を流したのだ。
中に入ると、先生はすでに待っていた。
「お待たせしました」
「藤枝。すぐ始めるぞ。凍結を解除してもらって、準備運動が終わったら、装備しろ」
「はい!」
我ながらいい声で返事ができた。
『凍結』というのは【設定】の凍結のこと。牢にいる間、生きるのに必要な分だけを除き、全ての【設定】が封印される。
その封印は封印具というピアスのような物でおこなわれ、私の場合、左の耳たぶを貫通し、それがある。
指紋認証で、登録された者のみが凍結の解除と封印がおこなえるようになっている。
警護の人に耳を預ける。ピッという軽やかな、解除を知らせる音。
それからざっとストレッチをした後、【設定】の騎士服を呼び出す。
呼び出して、気付いた。
これは、犯罪者のままなんだな、と。
いや、中身もそうなのだが。
浮かれていた自分が恥ずかしくなった。
ちょっと気が沈むが、本来はこのくらいで丁度いいのかもしれない。
「よろしくお願いしますっ!」
「武器は?」
「これで」
いつもの、【設定】で創り出した大剣を呼び出す。
これも…これにも数多の犯罪の記憶がこびりついている。
いや、旅行者同士の諍いなど珍しくなく、どれほど斬ったところで罪に問われることはない。ただ自分の、私の気持ちの問題なのだけど。
「相変わらず、『それ』か」
「はい」
バカにされたのか? そうかもしれない。何しろ相手は『舞』のヴァンフォード先生だ。何をどのように思われ、言われても仕方ないのだが。
それでも、ちょっと見返してやりたいという気持ちも出てくる。先生は私の反骨精神を煽ったのだろうか?
ところで一方のヴァンフォード先生は…正直、舐めている、と言わざるを得ない。
ジャージ上下にサンダル。
それに、木刀を1本。
こちらの得物は真剣なのに。
「先生、その格好では…」
「当たらないなら何着てても同じだろ? 言いたいことがあるなら、まずは俺を斬ってみろ」
言ったな。
なら、お見せしよう。
盗賊とはいえ、実戦の中を過ごしてきた私を。
◆
エンディング曲 『私だけ(F)』
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