第三章 協議
オープニング曲 『クレハの季節』
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『自分の部屋』に戻る前に、みんなとの話し合いの時間を取ることが許された。といっても、シャルは…やはり「見ない方がいい」とのことで、『彼女の部屋』の前には警護の人が通せんぼで立っている。
もうこのままなのか?
もう会うことはないのだろうか?
どうしても会いたい相手ではないのだけれど、会えないとなると寂しいものだ。
今なら…色々と話ができるような気もするのだが、それも彼女の心うちを知ってしまったからこそ、そう思うのかもしれない。
ともかく、あまり感傷的になっていられる場合ではない。
早速だが、モヤシ君とゴリ男君の部屋の間に座り、先ほどあった件を二人に伝えた。
「それで、どう、かな? 二人には、私と一緒に来る意思はあるかな?」
「僕は…やめておきます」
「そう。どうして?」
「僕が委員長と一緒に行っても役に立てることが無さそうだから…それに、また扱いきれないモノを呼び出しちゃって、あんなことになってしまうのが、怖いです…」
「そう、か。ゴリ男君は?」
「おデもゴごじノごう。ガがひがデギがイガあ、ベいガウがえウ」
「そう。残念」
「ゴリ男さんは何て?」
「来ない、そうよ。話が通じないから迷惑がかかる、だって」
「そうですか。すごいですね、委員長。僕もゴリ男さんと話ができたら良かったのになぁ」
「それは無いものねだりかもしれないわ。相手の気持ちが分かって、良いことばかりでもないしね」
「そう、ですか」
「ごめんね、説教臭くて。こんなだから『委員長』なんて呼ばれちゃうのよね」
「そんなこと…委員長は、戻ってくるんですか?」
「当然よ。アイツの首根っこ掴んでね。そして、モヤシ君たちの無罪を証明して、ここから出られるようにするの」
「はい。待っています。ずっと」
「…私は…ごめんね、見て見ぬふりをしてたから…こんなことしかできない。でも、こんなことでもやれることはやっておきたいから」
「僕は…嫌なこともあったけど、委員長と一緒にいられて、楽しかったです」
「おデぼ」
「そう…嬉しいような、むしろ辛いような」
「すみません…」
「謝ることないわ。私の気持ちの問題だから。さて…」
立ち上がり、シャルの「部屋」の方を見る。
話は…できないのだろう。それでも彼女と話がしてみたかった。いや、私の話を聞いてほしいと思った。このまま何も言わず、というのも何か気が引けたからだ。
「あの…シャルに、彼女に会わせてもらえないでしょうか?」
通せんぼしている警護の人に聞いてみた。
「うーん、正直、見ない方がいいと思うんだがねぇ」
「それでも…彼女に会わせて下さい。何を見たとしても、後悔はしません」
「…そうかい? 一応、上に聞いてみるけど」
と、警護の人は電話をかける。
そして
「許可が出た。本当に、いいんだね?」
「はい」
「では…」
通せんぼの道をあけ、人目を遮断するように掛けた布を取ってくれた。
シャルの部屋の前に進む。
…確かに見ない方がいいと言われるだけのことはある。
牢の明かり取り窓から差し込む夕陽の赤に照らされ、薄暗い部屋の中にまるでスポットライトを浴びたように、それはそこにあった。
衣服を残して、元の形が分からぬほどにグズグズになった…おそらくは元はシャルだったモノ。そしてそのモノの真ん中に、銀色のような、ソフトボール大の球体。あれが…【人格設定】、なのか…? その存在は知ってはいても、目にする機会は無い。【人格設定】が弾け飛ぶ時は、肉体と一緒に弾け飛んでしまうからだ。
そんな、『シャルだったモノ』の前にしゃがみ、私は話し掛ける。
「シャル。聞いて。私、ここの支部の支援で、カナート君たちを追うことになった。理由は、行方不明になっている反町ハルキを捜索するため。3日後、ここを出発するわ。支部の計らいで、元のメンバーも連れ立つことが許された。でも、ゴリ男君も、モヤシ君も来ない、って。それで、シャル。あなたはどうする? どうしたい? あなたの大好きなハルキを探しに行くんだけど…ごめんね。捜査の都合上、あなたの日記を読むことになってしまった。正直、嫌だったんだけど…ハルキが今どこでどうしているのかは、分からない。でも、もう一度、彼に会うチャンスではある。会ってどうするかは、あなたの自由。裏切りを断罪しても。それすらも赦して復縁しても。あなたは今、そんな姿で…何をどう考えているか分からないけど。それでも、私は伝えたから。あなたに。 …それじゃ…」
言いたいことは全部言った、と思う。
立ち上がり、警護の人に礼を言うと、私はまた居るべき場所へ戻った。
そして、また一人になった。
だが、少しだけ違うのは。
旅立ちへ向けての準備が始まる。
そしてそれは、少なからず私に未来への希望をもたらしている。
エンディング曲 『私だけ(F)』
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