第一章 シャルの日記②
オープニング曲 『クレハの季節』
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「そこへ掛けたまえ」
「恐縮です」
「藤枝カヱデ君、だね?」
「はい。間違いありません」
「そんなに緊張せんでもよろしい。私はレガリス=フリームス。モルドレン法務局検察課課長だ。ここに呼ばれた理由は分かるかね?」
「昨日の取り調べの続きと認識しています」
「うむ。君は聡明な女性じゃな。では始めようとする。書記官、記述願うぞ」
「記述始めます」
「さて、君の仲間の荷物から、こんな物が出てきてな」
私の前に、1冊の…ノート? それにしては表紙がしっかりしている。多分、日記に使うような、なにか。
「中を見させてもらった。日記、とでもいうのかな、そういう物じゃった。これの内容について、君の意見を聞きたい。何しろ、日記だとしてもこの世界には日付というものが無い。なので、いつ頃の話なのかというのが分からんのじゃ。裏が取れれば証拠として使おうと考えておる。いかがかな?」
日記…か。
誰かの日常、そこに思うことを綴ったもの。
すなわちプライバシーの塊と言ってもいい。
それを読め、というのか。
気は進まない、が、一方で私は【魂の観察者】という能力持ちだ。
相手の心のある程度のところまでを察知してしまう特殊技能。
これゆえに、知能ですら力に回してしまったゴリ男君ともコミュニケーションが取れたのだから、悪いことばかりでは無いのだが。
逆にこれゆえ、相手の思うところを知ることに恐怖した私は、ハルキやシャルの心を探れなかった。
知れば…知らなかった方が良かった、と後悔するかもしれなかったから。
今にして思えば、とは後悔先に立たず、である。
他人の日記を読むということは、そういう、他人の心うちを読むのと同じことだ。
それでも、これを証拠にすると言うなら、あるいは誰かが無罪放免となるかもしれない。
そこに一縷の望みを掛けて。
「はい」
承諾した。
手錠が外される。
危険な人物とは思われていないようだ。
そして、自由になったその手で、目の前の一冊を手に取る。
書いた主は想像できる、と言うより消去法で一人しかいない。
無地の表紙を開く。
タイトル、なのだろうな。
『彼とアタシ 愛の日々』
出会い頭で顔面を殴打された気分だ。
やはり書いた主はシャル。
『彼』とは…ハルキのことだろう。
それ以外は…まぁ考えにくい。
そして、付箋の付いたところを読むよう、命じられた。
その一つ目
◆
を読み終えた。
端的に言おう。
これは…官能小説だ…
これを読めとはセクハラに等しい事案でもあるが…
さて内容は…『アタシ』という一人称の女性と『彼』または『アナタ』と表記される二人の出会いから初めて結ばれるところまで、である。
その、結ばれるシーンが克明に記述されているため、先ほど官能小説だ、と断言した。
それでも具体的性器の名称などが出てこない点、『アタシ』にはまだ恥じらいというか、そういったものが感じられる。
しかし、これを…強姦とは言わないのだろうか?
良くも悪くも克明に描かれているため、側から見れば尚更そうとしか思えない。
一方で『アタシ』の側に薄々期待していたフシも読み取れる。
初めて会ったその日で…私には理解不能だ。
さて、今回の事件に関すれば、ミキ、と比較的具体的な個人名が出てくるところか。
昨日の面会で、あちらのグループのリーダーであるミキさん、彼女から、ハルキとシャルは、元々彼女の所にいて、という話があった。
そしてこの…官能小説めいた日記の内容は、それを裏付けるものである。
そうか…事実、だったのか。
ミキさんの言を疑ったわけではないが、こうして裏付けが取れるとそれなりに感慨もある。
同時に、『アタシ』の年齢に関する記述もあり、これもミキさんの証言と一致する。
…なんだか私が捜査をしているようだな。
ともあれ、これは報告せねばならない案件だろう。
気は進まないが、次の付箋。
◆
官能小説であることには変わりない。
どうやら、おそらくはこのままこういう内容で話が進むのだろう。
タイトルの『愛の日々』とは、そういう意味、なのだろう。
さて、9割ほどが官能小説なのだが、最後に大事なことが書いてある。
正直、ここだけ読ませて欲しかった。
彼ことハルキの夢とある。
そしてシャルは、それに協力する、ともに実現する、と。
さてハルキの夢とは?
日記内に記述は無いのだが、一つは【魔王】の打倒。
これは私も言われたことだ。
打倒してどうするのかまでは知らない。
だが、この世界に若くして転生し、ここがどこなのか、自分が何なのかを探す旅に出た若者は一様に【魔王】の打倒を目指す。
打倒の目的は人それぞれで、その多くはそれを語らない。
だからハルキが何を思っていたか、私はそれを聞くことはなかったのだ。
さてもう一つの夢だが…これは私の憶測に過ぎないのだが、彼はハーレムを築こうとしていたフシがある。
私をその一員として数えるのは非常に癪なのだが、あの中で暮らしていたからこそ、そう思えるのだ。
というのも、私の後にも何人か女性がハルキによって連れて来られた。
しかしその誰もが、長くても三日の内には姿を消す。
そしてそうして連れて来られて居着いたのが、女性の私を除けばゴリ男君とモヤシ君の男性2名というのは皮肉なことだ。
だが、考えてみればおかしなことで、彼がハーレムを目指すことをシャルが容認するとは思えない。
私が入った時ですら…なのに。
だとすれば、私の憶測は外れたということになる。
次の付箋。
◆
長かった。
長編だった。
やはり彼らの性生活を読まされたことになるのだが、今回は序盤に大事なことが書かれている。
ロッジ、すなわち私たちが暮らしていた、あのロッジが、まずは強盗により手に入れたものであること。
これも知らなかった。
今にしてみれば確かによくもまああんな立派な物を二人が持っていた、とは思うが。
中盤からは、ロッジを不正に入手し、それに浮かれる様子。
浮かれ過ぎて建物中、至る所で彼らが媾った話が延々と続く。
あの建物、全ての部屋で場所で行為に至ったと。
つまり私たちは、少なくとも1回は彼らが媾った部屋で寝泊まりしていた、ということになる。
気持ち悪い話だ。
浮かれた若者とはこういうものなのだろうか?
それにしても、あのハルキとシャルが、こうも浮かれた様子だなんて。
あんな彼らも以前はこんなにも楽しげだったのか。
それがいつからあのように…
予想は付いている。
それを確認させられることになるのかと思うと気が重い。
いささかページが飛んで、次の付箋。
ここから4つ、連続してそれは貼られている。
◆
込み上げる不快感に抗うことができなかった。
「ウッ…うガァッ…ゲォォォォ…」
「藤枝君?! どうした?! 誰か救護科に連絡!」
喉を通らなかった朝食、それでも無理に押し込んだものを全て吐き出した後、私はそこからの記憶が、ない。
◆
エンディング曲 『私だけ(F)』
https://x.com/HanashioKikei/status/2013221745772376537?s=20
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◆
本文中に出てくる『彼とアタシ 愛の日々』。
これ…実在します。
中身が中身だけに「X」カテゴリになりますが。
リンクなんかで誘導すると怒られちゃうので大人♡はノクターンで探してみるよろし。
未成年のボーイズ&ガールズは大人になってからまた会おう。
ちなみに未完成ながらすでに文字数が75445文字(Nolaでのカウント)。
もうね、無駄に長い(笑)
カヱデでなくともゲロゲロするかもしれん。
読まねばならないものでもないのですが、「じゃいの」世界を骨までしゃぶりつくしたい方向けです。




