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死あれど超えてゆけ

「全く最近騎士団の奴らはどうしたんだ?」


 ジキサルが机に肘をついて手を組む。

 最近はマフィアも騎士団も数を多く減らした。

 魔獣の災害はもちろんだがそれ以外にも失踪という事で行方不明になった者達が多いのだ。

 故に団長と言えるのはジキサルのみであり、騎士団の数が既に三百人以下となっていた。

 おかしい。

 あまりにもおかしすぎる。

 一万近くいた騎士団がここまで数を減らすことがあるのだろうか。


「はぁい」


 すると扉が開いて一人の女性が出て来た。


「……お逃げ」


「がぁ」


「お、お前達!?」


 すると地面にジキサルの部下達の死体が転がる。

 血の匂いが部屋に充満し、ジキサルは眉間にシワを寄せる。


「お、お前は!? がぁ!?」


「あっはぁ! やっぱ殺して奪う魔力は最高ね! やっぱり闇の力はこうでなくっちゃ!」


 女がジキサルの首を刎ねて笑った。


「レイニア様」


 すると背後に騎士団の死体を笑いながら引きずる黒フードの男達が現れた。


「騎士団は片付いた?」


「はい。 後はギャング? マフィアでしたっけ? この大陸の強い奴らを殺して魔力に変えるのですよね?」


「ええ、後はこの世界に新しく精霊と言われる存在がいるらしいけどそれは西の大陸にいるらしいわね? まぁそこにアザイア様が皆殺しにしているんだけど」


「確かジッテルド大陸でしたっけ?」


「まぁ。 カラス天狗の奴や野生児みたいな奴らがいてあまり殺すとが出来ないと言っていたけれど既に新生して生まれた天使族と悪魔族は殺したわ。 だからこそアザイア様は必ず目的を達成するわ。 ほらはやく行きなさい」


「はっ!」


 そして黒フードの集団は解散した。


「確かキックスシンカファミリーだっけ? どんな奴らなのかしら」


 レイニアは知らない。

 新しく新生したこの世界の強者達が恐ろしく化け物である事を。

 それが闇さえも凌駕する修羅である事を。




「着いたー!!」


「レントやったね!」


 レントとリターナはユトームの街に着いた。

 既に空は夕日を出して降り、とても綺麗な景色だった。


「ねぇレント! 今日はもう遅いから宿で休まない?」


「いいね!」


 二人はそんなのどかな事を話しながら宿に向かった。



「いらっしゃい。 泊まる人数は二人でいいかい?」


「よろしくお願いします!」


「へへ楽しみだな!」


「仲がいいね」


「まぁ。 それほどでも」


 そう言って二人はとりあえずご飯を食べる事にした。


「注文は?」


 席につくと店員が注文を聞いて来た。


「レントは何がいい?」


「とりあえずパンで」


「私はステーキを!」


「かしこまりました」


 レントとリターナの注文をした後、店員は去っていった。


「ありがとうなリターナー! おかげで楽しい旅が出来そうだぜ!」


「そんな事ないよ。 私もレントと一緒に旅が出来て幸せだよ!」


 そんな仲が良い会話をしながら二人はご飯を食べた。


「ふぅ。 お腹いっぱいだ」


「私もおいしかった」


 二人はご飯を食べた後、部屋の中に入っていた。


「なぁリターナ」


「何?」


「なんで俺達二人一緒で部屋に入っているんだ?」


 そうなのだ。

 何故かレントとリターナが部屋に二人きりで入っており普通は部屋を別にするものではないのかと思う。


「ふふ。 それはね?」


 するとリターナがベットに腰掛けたレントを押し倒してベットに抑えつけた。


「レントを食べる為だよ?」


 するとリターナはレントにキスをする。


「んぐぅ!?」


 レントはキスをされると体が痺れて頭が真っ白になった。


「ふふ。 レント可愛い」


「はぁ……はぁ。 リターナ?」


 リターナが自身の上着を脱ぎ始め下着のみとなっていた。


「ねぇレント私ね、レントの子供が欲しい。 この腹にあなたの子を宿したい」


 するとリターナはレントの手を掴んで自身の腹に手を当てる。

 あまりにも柔らかくスベスベした女性の肌に女を知らないレントは混乱する。


「り、リターナ!? や、やめろ! お、俺は騎士! 騎士なんだ! じょ、女性にそんな乱暴な事を俺は出来ない!」


 今からリターナがしようとする事がレントには分かった。

 リターナは最初からレントを食べる気でいたのだと今この瞬間に悟った。


「な、なんで俺なんだ?」


「ふふ。 罪な人。 私の胸をこんなに高まらせておいてそれはないでしょ?」


 既に花のような少女はいない。

 既にリターナはこの世で恐ろしい狡猾な一人の男に狂い愛する魔女へと変貌を遂げていた。


「ほら私こんなに高鳴ってる」


 腹から胸へ、レントの手を動かして当てる。


「うぁっ?」


 もう分からなかった。

 初めて知る女性の持つ愛という名の毒にレントの頭は支配されて既に脳は獣のようにリターナを求め初めていた。


「ほら。 味わって私を」


 そう言ってリターナはレントの耳元で囁いてその理性を溶かして壊した。


「リターナ。 お、俺は!」


「抑えつけないであなたの本能を。 取り繕わないでその愛を」


「はぁはぁ!」


 レントはリターナを抱きしめる。


「嬉しい」


 そう呟いたのが最後だ。

 二人は求め合って混ざった。

 互いの命の鼓動を感じながら。








「あ、ああ」


 その真夜中レントは目が覚めた。

 隣には裸となったリターナがいる。


「……お、俺なんて事を」


 騎士の一員にも関わらず未婚の女性を胸に抱いてしまった。

 それはレントの心を揺れ動かすのには十分過ぎるほどのものであり、しかも顔を合わせて一日の女性だ。

 それをレントは乱暴に扱って獣へと堕ちた。


「よ、夜風に当たろう」


 そう言ってレントは外を出た。


「さ、寒いな」


 肌を擦りながらレントは街並みを歩く。


「死ね」


「えっ?」


 声が聞こえて後ろを振り返ろうとしたがいきなり胸から剣が飛び出して来てレントは呆気なくその命を落とした。


「……死ね外道」


「へへあっけぐぶぇ?」


 男が笑った時だ。

 背後からカリシーがナイフでレントの命を奪った男の体を切り捨てた。


「……申し訳ございません。 お嬢様」


 カリシーはレントの遺体を見ながらそう呟いた。





「レント?」


 リターナは目を覚まして隣を見たがレントの姿はなく、温もりがなかった。



「どこに行ったのかしら」


 服を着てリターナは外に出かけた。


「寒いわね」


 そう言いながら街並みを歩くと地面に倒れている人がいたのでリターナは駆け寄って起こした。


「大丈夫です……か?」


 リターナの思考が止まった。


「……レント?」


それはレントだった。

 胸に穴が空いており、おそらく何者かに刺されて死んだのだ。


「……う、嘘。 嘘よ!」


リターナは両目に涙を溜めて声を振るわせた。


「……カリシー」


「はっ」


 リターナが呼ぶとアイマスクをした女性が現れた。


「レントを殺したのは誰?」


 ゾッとするような冷たい声を出しながらリターナはカリシーを見た。


「この男です」


 そう言ってカリシーは殺した男の遺体を転がす。


「情報は?」


「足音から手練れだと判断して殺しました」


「そう。 でもよかった。 お客様がいらしたから」


「はぁい? こんにちわー私レイニアあなたの名前を教えて?」


 すると目の前には大量のフードを被った軍勢が目の前に現れた。


「……あなたがレントを殺したの?」


「さぁ? 私はただ身内が死んだって聞いたから来てみたけれど収穫あったわね。 あなた達がシンカキックス?」


 元々狙いはリターナ自身であると会話から悟る。


「皆さんシンカキックスの怒りに触れたものを殺しなさい」


「「はっ」」


 リターナが冷たい声で部下達に命令を下す。


「あらぁ? 私に勝て」


 レイニアの首が飛んだ。


「主人。 ここは私が始末します。 主人は安全な所へ」


「……ミュルシャ」


「この大陸はもうダメです。 この者達によってほとんどの人が死んでいます。 新しい土地をお探し下さい」


 白髪が目立つメイドがそう言いながら次々と敵を切り殺していく。


「……サランカの一族であるあなたが私の為に死ぬ事はないのよ?」


「私の死に場所はここでいいです。 後の者は全て退却させて下さい。 私は主人に拾われて幸せでした」


「そう。 皆さん退却を」


「お幸せに」


 別れを告げた後、ミュルシャが一人で黒フードの集団を相手取り、リターナ達はその場から逃げ出した。






「……レントもミュルシャも死んだわね私はどうすればいいのかしら?」


そう言いながらリターナは登る朝日を見ながら静かに涙を流す。


「……お嬢様。 部下の報告によりますとやはりミュルシャの言う通り大陸にいる人間が我らシンカキックスのみとなっているようです」


「そう」


 リターナはカリシーの言葉を聞きながら黙って頷く。


「……お嬢様提案なのですが、昔に旦那様が誰も手をつけていない無人島が南の方にあるとおっしゃられていました。 その島にミュルシャとレント様の墓を作り改めて我らシンカキックスの新たな繁栄を築くのはどうでしょう」


「……そうね。 カリシーあなたの言う通りだわ。 私はシンカキックスの一人娘ここで死ぬ訳にはいかない。 お父様とお母様の為にも私はシンカキックスの繁栄を築かなければ」


 リターナは自身の腹を抑えながら涙を流して笑う。


「皆さん力を貸して下さい。 こんな愚かな娘の為にその命と力と知恵をどうかお貸し下さい」


「「「……我らはリターナお嬢様の忠義の為に」」」


 リターナの一言に臣下達は傅く。


「行きましょう。 新たな新天地に我らの繁栄を」


 こうしてリターナ・シンカキックスは南へ向かう。

 その一団が無事無人島に辿りついたかは誰も知らない。

 この物語の裏で一人の傭兵魔法使いの少女が仲間達と世界の命運を賭けて災厄の男と激しい戦いを繰り広げていた事はまた別の話。


 







 


 






 



 






 

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