ようこそ暖かい日常と冷たい裏世界
「ユトームの街?」
「はい。 ここから東の方に行くとそんな街があるという事を聞きまして」
にこやかにリターナが笑う。
「そりゃあいいな! あっ、俺金持ってなかったなぁどうしよう」
「それはほらここにありますよ?」
リターナはそういう言って三袋分の金貨を取り出した。
「うわぁ! ありがとう! リターナ! あっ、このお金の分俺稼いで見せるから!」
「別にいいよ? まだお金の当てはあるから!」
こうしてのどかに二人の旅は続く。
「へへ兄貴! お金が溜まりやしたね!」
「ああ騎士団との癒着によって俺達はたんまりと稼げる!」
「ゲスな笑みを見せて誰もいない廃墟で男どもが笑う」
「見つけた」
「な、なんだお前!?」
「主人の旅費を稼ぐべくお前らの金を貰う」
いきなり目の前に女性二人組が現れて男達は驚いた。
足音が立たなかったのもそうだが二人共この世の者とは思えぬほどに整った美貌を持っていたからだ。
「えっ?」
そんな美貌に惚れていると血の匂いがする。
それが男の部下達から発生する物だと分かり男は恐怖を抱いて尻餅をつく。
「弱い」
白い髪を三つ編みにしたメイドが血のついた剣を振って血を落とし帯刀そのままなんて事のないように歩く。
「そうですよミュルシャ。 彼らは強者と思っている弱者に過ぎません我々裏の人間ならいざ知らずに浅知恵の悪党に我らシンカキックスの臣下は遅れを取りません」
そう笑いながら黒髪に紫色のアイマスクを掛けた少女が笑う。
「お、お前何者なんだ?」
「私はカリシー。 リターナお嬢様の世話係を任せされております」
とても穏やかな声。
恐怖で何も考えれない男に対して黒髪に紫色のアイマスクした女性が笑う。
「な、なんのために俺らを殺すんだ?」
「お嬢様。 そしてキックスシンカの繁栄の為に」
そう言ってカリシーはそのまま男の首を刎ねて穏やかに笑った。
「終わったな」
「我らは表に出る事はない。 お嬢様の慈愛に救われた戦士だ」
すると背後から黒いフードを被った集団が現れた。
「どれほど集まりました? お金」
「金貨五十枚ほどかと」
カリシーの声にフードの集団が答える。
「まだ足りませんね。 後さらに五十枚
は必要です」
冷淡にカリシーが集団に対して声を告げる。
「カリシーすまない我々の落ち度だ。 一年前のあの日から我らは弱体した」
「弱体? いいえ我らキックスシンカに忠義を誓う我らはお嬢様と旦那様そして奥様に対する忠義があれば何でも出来る集団です。 ですよねミュルシャ」
「ああ。 我は主人の剣。 負けと失敗は許されない」
「今度こそ我らはお嬢様の願いを守って見せる」
二人の旅の裏で人知れずシンカキックスの手足は忠義を改めて誓い、力無き悪党共はその体を血に濡らし、地面の冷たさに口付けをする。
残酷な世界はこうして日常を刻む。