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出会いと裏

「んあ? ……俺」


 レントが目覚めると騎士団本部の休養場にいた。


「おはようレント下級騎士」


 すると背丈の長い男が現れた。


「あ、あのうなんでしょうか?」


 レントは緊張しながらも用を尋ねた。


「私は騎士団の運営をしてる。 ジキサル。 今日で君はこの騎士団を辞めて貰う」


「ど、どうして!?」


「はぁ我々騎士団がいるのは敵を全滅する為にある。 だが君は敵から逃亡した挙句この騎士本部にまで逃げて来た。 それは騎士団員として怠慢ではないかね?

レント下級騎士。 まぁ君のような才能のない騎士がいても金の無駄だから。 騎士団の証のタグも外してある。 明日になったら出て生きたまえ」


 そう言ってジキサルは休養場を出て行った。


「……そんな」


 レントはその言葉を聞いた後項垂れた。






「んー元気になった」


 よく朝レントは目を覚ますと騎士団本部を出ていき、シャツにズボンそして腰に剣を帯刀した格好で出て行った。


「これからどうしよう」


 少ない路銀の詰まった袋を持ちながらレントは街並みを歩く。


「……二年間頑張った方だよな」


 晴天の空を見ながらレントはため息を吐く、正直騎士団は辛くキツかった。

 他人より教養も剣の実力もないレントは馬鹿にされ、いじめられた。

 唯一レントが騎士団所属の時に楽しかったと思えた仕事といえば一年前とあるマフィアの壊滅任務が終えた仕事帰りにボロボロになった人をパンを上げて宿に止めてあげた事だ。

 その日貰った報酬を全て使い切ったが別に後悔していない。

 ただそのボロボロになった人が元気かどうかが心配だった。


「これからどうしよう。 まぁこれから当てがないし、どっか旅をするかぁ」


 そんな事を言いながら背伸びしてレントは笑う。


「よぉ嬢ちゃん俺達とこないかい?」


「嫌です」


 レントが路地裏を見ていると男三人が

フードを被った一人の女の子を囲っていた。


「やめろよ」


 そんな態度を見過ごすわけにもいかずレントは男の腕を掴んで睨んだ。


「なんだよにいちゃんぼごぁ!?」


「あ、兄貴ぃ!?」


「こっちだ」


 レントはぐだぐだ言う男の顔面を殴りそのまま女の子の手を取って逃げる。



「はぁはぁ。 よかったぁ」


 レントはため息を吐いて誰もいない場所に逃げ込み尻餅をついた。


「別に助けてなんて言っていません」


 そう言いながら女の子は呟く。


「フードぐらい取ったら?」


「……そうですね」


「わぁ」


 とても綺麗な顔だった人形の彫刻のように綺麗でジト目青い髪と珊瑚の瞳が目立つ美少女だった。


「私はリターナ。 よろしくお願いします」


「俺はレント・ユルズ! よろしく!」


 そう言ってレントはリターナと握手を交わす。


「いきなり手を握るなんて失礼ですね」


「ご、ごめん!」


 レントは謝りながら手を離す。


「……はぁ。 散々ですね」


 呆れながらリターナがため息を吐く。


「あ、あのぅもしよかったら俺と来ないか?」


「はっ? なんでですか?」


「えっ、えっとぉなんか君とならいろんな事出来そうな気がする!」


「なんですか? その根拠のない自信」


 冷たい目線を向けながらリターナはレントを見る。


「ダメか?」


「はぁ。 別にいいですよ? 当てもありませんし」


「よっしゃぁぁぁ! ありがとう! 今日からよろしな! リターナ!」


 そう言ってレントは改めてリターナの手を取って笑う。


「ちょっと手を離して下さい後、一人なる時間をください」


「なんで?」


「言わないと分かりませんか?」


「ごめんな! 変なこと言ってあっ、近場の酒場で待ってるから!」


 何が事情があると察してレントはその場を離れた。









「や、やっと会えた! ちゃ、ちゃんと顔を合わせて話せたし手も繋いだ! こ、これって恋人繋ぎ!?」


 レントが離れて行った後リターナは赤面して両手を覆う。


「や、やっと君に会えた。 ど、どうだったかな? か、可愛いって思える演技出来てたかな?」


 手をブンブン振り回してリターナはぴょんぴょんとその場を跳ねて笑う。


「見つけたぜテメェ!」


 するとさっきまで自身をナンパして来た男達がリターナを囲んだ。


「何?」


 冷淡な声を出してリターナは笑う。


「さっきはよくもやって!?」


 すると男の右腕が吹き飛んだ。


「我らが主人を傷つけるな無礼者」


 背後にいつの間にか白い髪を三つ編みにしたメイドが立っており、剣を振るい三人の男を瞬殺した。


「ありがとうミュルシャ」


 そう言ってリターナは笑ってミュルシャと言ったメイドの頭を撫でて笑う。


「はいリターナ様我らあなた様を守る剣!」


 ミュルシャはリターナに向かって笑い膝をついて忠義を誓う。


「みんな」


 リターナが手を叩くとゾロゾロと場にフードを被った人物達がリターナを囲む。


「みんなありがとうお陰でレントと二人きりになれる時間をくれてありがとう」


「我らはお嬢様の為にいるのです」


「何なりと言って下さい」


「ありがとうみんなこのリターナ・シンカキックスみんなに心からの感謝を申し上げます」


 リターナはただのリターナではない一年前に壊滅したマフィアシンカキックスファミリーの一人娘だったのだ。

 実はレントが助けた人は騎士団によって壊滅したアジトから逃げ出したリターナであり、リターナは自身を助けてくれたレントに恋心を抱いた。

 そして自身の父と母を殺した騎士団を抹殺する為に数少ない人数で魔獣討伐に向かわせて復讐を果たした。


「みんなこれからのエスコートよろしくね?」


 花のような笑顔でリターナは臣下達を見る。


「御意」


「ええ」


「はい」


 リターナ自身も強い暗殺者だが彼らはリターナが直接スカウトした精鋭部隊であり、一人で騎士団を壊滅出来る猛者揃いだ。

 そんな化け物達は可憐な少女を主人として忠誠を誓う。


「これから私はレントと一緒に旅をします。 護衛よろしくお願いしますね?」


「はっ」


 こうしてレントは知らずのうちにマフィアのお嬢様と旅に出る事になるのだった。


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