第七話 ナイスリカバリ!
宣言通り、二人と少し離れてついていく。
二人はショッピングをすることにしたらしく、雑貨屋フォーゲルネストに入っていった。
私とイナノは中に入らず、外で待つことにした。
しかしショッピングデートとは、いいのを引いたな。
好感度が高い状態でショッピングデートをすると、デート相手からランダムで何かアイテムをひとつ貰えるのだ。
残念ながら高価なアイテムは除外されるけど、パラメータアップのアイテムが貰えれば今後の調整が楽になる。
「レイさん!レッカさんにお人形を買っていただきました!このお人形、レイさんに似てると思いませんか!?」
店から出てきたレイが真っ直ぐに私の元に駆け寄り、買ってもらった人形を嬉しそうに見せる。
…なーんでデート中に私に話しかけるかなあ…。
ああ、ほら、レッカがすごい顔でこっち見てる。
こっそりステータスを確認すると、オトネへの好感度はそのままなのに私への好感度ががっつり下がっている。
ああああああ!もおおおお!
なんで!?なんでそうなるの!?
私悪くなくない!?
バグ!?これもバグなの!?
もういいけどさ!レッカの私への好感度、逆ハーエンドに関係ないからさ!
「…オトネさん。お相手を待たせるのは淑女としてどうかと思うわよ」
「あ、すみません…!」
はぁ…。
ああ、ちなみに人形は芸術パラメータを少し上げるアイテムだ。
そんなに高くないアイテムだから効果はそれなり。
その後、隙を何度も見て帰ろうとしたがそのたびにオトネに気付かれ、結局最後まで付き合うことになった。
…なんで?
「じゃあ、また学校でな」
「はい、お疲れ様でしたレッカさん」
レッカがオトネに手を振り、踵を返す。
去り際に私のことを睨んでいったけど、私に怒っても仕方ないでしょうが。
私が何度も何度も帰ろうとしたのを見てただろうに。
すっごい理不尽。
「はぁー、疲れましたね。よかったら何か食べていきませんか?」
緊張の糸が切れたのか、安堵のため息をついてオトネが私に駆け寄り声をかける。
疲れたのはこっちじゃい!
これは説教が必要なようだ。
「オトネさん、私怒ってるのよ。わかる?」
「え?な、なんでですか?」
怒りをあらわにした様子で胸を張るようにしてオトネを見下ろし、いつもより低い声でそう告げるとオトネはビクリと肩を震わせた。
「そうやっていつでもどこでも私についてこさせる気?一人で何もできないの?そういうのが許されるのは初等部までだわ。貴方、いつまで私に助けてもらうつもり?」
「あ…」
事の重大さに気づいたのかオトネが青ざめた表情で私を見上げる。
と言ったものの、我ながらどの口が言うかと思う。
自分の目的のために散々オトネを誘導して、オトネの選択する権利を奪い続けてきたのは私だ。
オトネをこうしてしまったのは私自身なのだ。
そう思えば今日レッカの私への好感度が急降下したことも納得がいく。
バグなんかじゃない。
自業自得だったんだ。
…でも、私はこんなことで心折れたりしない。
「私たち、しばらく距離を置きましょう」
「え!?い、嫌です、そんなの!」
「貴方が私以外の人とちゃんと休日を過ごせるようになったら付き合ってあげるわ。そうね、私の助けなしで生徒会の5人と各4回ずつ出掛けることができたら私のところに来なさい」
ナイスリカバリ!
オトネと距離を置いて自分で選択をできるようにも仕向けつつ、逆ハーエンドの条件だけは満たすよう条件を提示。
私天才か…?
「…私が一人で生徒会の方々と出掛けることができれば、付き合っていただけるんですね?」
真剣な表情でオトネが私を見つめる。
逆ハーエンドの条件さえ満たせば遊びに付き合っても何の問題もない。
私は「淑女に二言はないわ」と頷く。
「楽しみにしてるわ、オトネさん」
クス、とほほ笑むとオトネに背を向けて歩き出す。
と、しばらくは口を出すことをやめると宣言したものの、ふたつ問題点がある。
隠しキャラ二人のエンディング条件に関わる大事なことだ。
まず一つ、あと一回定期テストで赤点をとらなければいけないこと。
もし今後オトネが勉強コマンドに手を出してしまったら非常にまずい。
赤点をとるには一定値以下の学力パラメータである必要があるんだけど、幸い今のオトネは学力パラメータがほぼ0だから少しならば勉強をしても問題はない。
定期的にこっそりステータスを確認して、学力パラメータが一定値以上になるようならなんとか邪魔をしなければ。
そしてもう一つ。
もう一人の隠しキャラだ。
この隠しキャラは2学期の学園祭に登場する。
それまでにオトネと仲直りしてない場合、学園祭も別行動ということになる。
そうなると隠しキャラに出会えない可能性がある。
これから夏休みがあるからその間にデートを済ませてくれればいいんだけど、あのオトネが本当にデートできるんだろうか…。
…不安すぎる。
…よし、私はこれからしばらくオトネに口は出さない。
でも、こっそり見守りはする!




