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第六話 誤差も積もればガバとなる

 あれからしばらく経った。


 この前二度目の定期テストがあったが、目論見通りオトネは赤点をとり、私は無事赤点を免れた。

 しかしギリギリ赤点を免れたものだからオトネに「もしかしてまた私のために赤点とろうとしてくださったんじゃ…?」と誤解された。


 プライドが傷いた。


 それはさておき、最近の生徒会の5人のことなのだが…。


「オトネ、今週末空いてるか?もしよかったら一緒に…」

「は?オトネちゃんはボクと一緒に出掛けるんだけど」

「オトネさんが困ってるでしょう。さ、こんなバカたちは放っておいて僕とでかけましょう」

「オメェラ邪魔だ!オイ、オレと行くよな、オトネ!」

「ハァ…僕も誘いに来たんですけど、どうせ僕なんか選ばれませんよね…」


 好感度がカンストした。


 は?まだ序盤も序盤なんだけど。

 属性パラメータもSになってないし、まだ二人目の隠しキャラに出会ってもないんだけど。


 羨まし…いや、逆ハーエンドのためには喜ばしいこと…。

 いやでもやっぱり羨ましい!

 私もイケメンたちにちやほやされたい!


 イケメンに囲まれるオトネを険しい表情で睨んでいると、オトネは私に気付いたのかこちらに駆け寄ってきた。


「ごめんなさい!私、週末はレイさんと出掛けるので!」

「「「「「「は!?」」」」」」


 生徒会の5人と私の声がシンクロする。

 いやいやいや、そんな約束してないし!

 たしかに逆ハーエンドのために毎週オトネを連れまわしてたけど、今週末は約束してないし!

 まさかあのアホの子天然娘はもう週末は私と過ごすのが当たり前だと思ってる!?


 これはまずい。


 シュトまほは2年の4月からゲームがスタートし、3学期の終業式を迎えればエンディングに入る。

 しかし逆ハーエンドだけは各キャラのエンディング条件を満たした状態であることをすれば3学期の終業式を待たずしてエンディングが見れるのだ。

 その条件のひとつがデート回数。

 オトネがデートを断り続けたら、たとえ好感度がカンストしてても属性パラメータがオールSになってても逆ハーエンドを迎えることができない。


 え?ガバった?

 あ、慌てるな私。

 ここはなんとかリカバリを…!


「あら、今週末は約束してないわよ。たまには生徒会の誰かと出掛けるのもいいんじゃない?」

「私はレイさんと出掛けたいです!」


 こんのアホの子天然娘…!

 いつもオロオロしてるくせに、こんなときばっか私の言葉にかぶせるような勢いで主張してきやがって…!

 前々から犬みたいだと思ってたけど、まんまパブロフの犬じゃねぇか!

 やっぱり週末は私と出掛けるのが当たり前だと思ってやがる!


 ああ、どうしよう。

 生徒会の5人がすごい形相で私のことを睨んでる。


 あの表情はゲーム開始時に見られる好感度マイナスのド塩対応時のものだ…!

 は?なんでオトネの行動で私への好感度が下がんの?

 生徒会の5人がオトネとくっつくことは仕方ないと思ってるけど、嫌われることまでは想定してない!

 あわよくば友達の友達、みたいな関係で逆ハーエンド後もそれなりにイケメンたちと仲良くできたらとか考えてた!

 シュトまほのド塩対応は好きだけどそれはあくまでこれから好感度が上がるとわかっているからこその萌え要素であって、ずっとド塩対応は耐えられない!


「ちょっと失礼!」


 オトネの手を引くとイナノすら置き去りにして物陰へ走る。


「オトネさん、これからもずっと週末は私と出掛けるつもりかしら?」

「はい!」


 すがすがしいほどのいい返事に眩暈がする。

 ダメだ、ダメだダメだダメだ!

 早くリカバリしないと…!

 デートできる回数は限られてる。

 このままじゃRTAどころかクリアすらできない。

 爆死エンド一直線だ。


「今週末レッカと出掛けてみなさい。私とばかり一緒にいてはダメよ」

「でも…」

「レッカならきっと貴方を楽しませてくれるわ」

「私はレイさんといる方が楽しいです!それに、私、レイさんがいないとダメなんです…!」


 いつも私の言うことならなんでも聞くのに今日のオトネはやたら強情だ。

 何を言っても歯向かってきて水掛け論になってしまう。


 何?反抗期?


「何がそんなに不満なの?私をあんまり困らせないでちょうだい」

「…わかりました。じゃあ…」


 押し問答の末、オトネはある条件を飲むことでようやく折れてくれた。

 その条件と言うのが…




 ***




 日曜日。

 トラオム広場の噴水前。

 ここは待ち合わせスポットになっており、そわそわしながら恋人を待つ人や待ちぼうけを食ってしょんぼりしている人など、沢山の人で賑わっていた。


 その人ごみの中、ふんわりとした淡い色合いのいかにも女の子らしいワンピースに身を包んだオトネが立っている。


「悪い!遅れた!…あ、今日の恰好すげー可愛い…」


 私服のレッカがオトネの元に駆け寄り、オトネの姿を見て頬を赤らめる。

 そりゃそうだ、レッカの好感度が上がるコーデを私が選んだんだから。

 レッカはガーリー、イブキはカジュアル、シズクはきれいめ、ライコウはセクシー、シンドはクラシカル、ヒサメ先生はシンプル、と、キャラによって好みが違う。

 キャラの好む格好でデートに行けばデート中の好感度がいつもよりも上がってお得なのだ。


 …あれ?今気づいたけど好感度はすでにカンストしてるから別にどんな格好でもよかったんじゃ…。

 あー、時間無駄にした。微ガバ。

 次からはオトネの好きな恰好をさせよう…。

 たとえデート相手の嫌いな恰好をして好感度下がってもどうせまたすぐにカンストするし。


 で、何故私がこんな詳しくオトネの状況を解説できるかということに関してだが…


「…なんで空ノ城が一緒にいんの?」


 私がオトネの隣にいるからである(ついでにイナノも)


「…ごめんなさいね。どうしてもオトネが一人じゃ不安だって言うから…。少し離れてついていくから私たちのことは背景だと思ってくださる…?」


 オトネが生徒会メンバーとデートをする条件。

 それは私も一緒に来ることだった。


 情けない!デートすら一人でできないなんて!


 でもこれは今までオトネが自分で選ぶべき選択肢をずっと代わりに選んできた私にも責任がある。

 先日の押し問答。

 オトネはあの時、“レイさんがいないとダメなんです”と言った。

 つまり、オトネはプレイヤーが選択するのを待ち続けるヒロインのように、自分では何もできない子になってしまったのだ。


 ガバもガバ、特大ガバだ!

 前にイナノに言われたように私はオトネに干渉しすぎてしまったんだ!

 逆ハーエンドのためとは言えど、たまにはオトネに選択させるべきだった!


 少しずつ距離をとって、自分自身で選択するようにさせていかないと…。

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