第三十話 オトネの見る景色③ part2/5
※この話は25話のオトネ視点になります
星宙オトネです。
レイさんのお宅に来ました。
相変わらず迷子になりそうなほど広くてドギマギしてしまいます。
「やっぱりお菓子がいいかしら?あ、これなんかイブキさん喜びそうじゃない?」
レイさんはぬいぐるみや本など、いろんなものを並べて楽しそうにそうおっしゃられます。
「あの、やっぱりレイさんからいただいたものをイブキさんにプレゼントするのは…」
レイさんの選んだものをイブキさんが身に着けるなんて耐えられません…!
そんなの、レイさんがイブキさんにぎゅってされてるみたいで絶対に嫌です!
「そう…、迷惑だったのね。受け取っていただけないなら仕方ないわ。イナノ、これ全部処分してくれるかしら?」
「かしこまりました」
「え!?」
レイさんが悲しそうにそうおっしゃるとイナノさんがゴミ袋を取り出し、レイさんの前に並べられた数々の品に手を伸ばします。
レイさんのものをゴミにするなんて、嫌です!ダメです!
「す、捨てるなら貰います!」
今にも捨てようとされている品々に覆いかぶさり、そう叫びました。
レイさんのものがゴミにされて燃やされるくらいなら、イブキさんの元で大事にされる方がまだマシです…!!
でも、でも…
「うう、レイさんのものを人にあげるなんて…」
「人から貰ったものをプレゼントするのでは誠意を伝えられないと思ってらっしゃるのかしら?では手紙を添えるのはどうかしら?」
私が嫌なのは人からいただいたものをお礼の品として渡すよりも、レイさんの私物を他の人にあげることなのですが…。
いえ、もちろん人からいただいたものをお礼の品として渡すことも道理に反しますが。
しかし手紙とは、さすがレイさん。名案です。
たしかに生徒会の皆さんには大変よくしていただいているので、感謝の気持ちをしっかりと文章で伝えることはいいかもしれません。
かっこよくて美しくて優しいだけじゃなくて聡明だなんて、レイさんは本当にすごいお方です…。
「わかりました。あ、あとやっぱりタダで貰うのは悪いので、少し出させていただきませんか?」
せめて少しでもレイさんにお返ししたい…。
なんて、お小遣いあんまりないんですけど…。
やっぱりバイトとかした方がいいのかなぁ…。
「じゃあ次の日曜日のお出かけ、オトネさんが支払ってくださるかしら?」
「はい!喜んで!次のデートは私が全部出しますね!」
よーし、頑張るぞ!
レイさんにいいところを見せるんだ!
「じゃあこのペンダントをいただきますね」
本当はレイさんのものをイブキさんにあげるなんて嫌なんですけど、イブキさんがちゃんと大事にしてくれるなら…。
ぎゅっとペンダントを握りしめ、イブキさんに大事にしてもらえますようにと祈る。
「じゃあこっちは私からオトネさんへのプレゼント。よかったら使ってね」
レイさんはそうおっしゃられると魔導書とエプロンを私にくださりました。
なるほど、もっと魔法の勉強に励みなさいということですね。
レイさんに釣り合えるようにもっと頑張らないと!
もう一つの…エプロンは一体何でしょうか?
学園祭でレッカさんが身に着けていたような可愛いエプロン…。
もしかして空ノ城家のメイドになってほしいとか…いや、そんなわけないですよね!
じゃあこれは一体どういう意図で…あ!そうか!
「わかりました!頑張ります!」
きっと私が作ったお菓子を食べたいということですね!
いっぱい練習して完璧なお菓子をレイさんに食べてもらうぞ!
「シンドさん、大丈夫かしらね。シンドさんさっき様子が変だったでしょ。最近生徒会の皆さんの関係がよくないってオトネさんも言ってたし、心配だわ」
さすがレイさんです…。
観察眼も優れている上に気配りまでできるなんて…。
なんて素晴らしい方なんでしょうか…。
「そう…ですね。何か悩みでもあるのかもしれませんね…」
「生徒会の皆さんに悩みがあるとしたら、解決できるのは皆さんと一緒に修行をしているオトネさんだけだわ。シュトラール学園のためにも頑張ってね」
私だけにしかできないこと…?
レイさんに期待されている…!
レイさんが私に期待してくれている!!
嬉しい、とっても嬉しいです!
生徒会の皆さんに何か悩みがあるなら全部私が解決してみせます!
心の中でそう誓って、両手でぎゅっと拳を作って気合を入れました。
それからレイさんたちとお話したりレイさんのお宅のお庭を散歩したりしました。
「日曜日、期待しててくださいね」
絶対美味しいお菓子を作ってきますから!
***
帰ってからイブキさんにいつもお世話になっている感謝の気持ちを込めて手紙を書きました。
イブキさんへ
いつも魔法を教えてくださってありがとうございます。
イブキさんのおかげでこんなにすごい魔法を使えるようになりました。
魔法の使えなかった私が今の私を見たらきっとびっくりすると思います。
イブキさんにはどれだけ感謝の言葉を並べても足りません。
これからも沢山ご迷惑をおかけするかもしれませんが、
末永くお付き合いよろしくお願い致します。
星宙オトネ
よし!これできっと感謝の気持ちが伝わるはずです!
この手紙にペンダントを添えて…。
…ううー、やっぱりレイさんのペンダントあげたくないなぁ…。
そうだ、レイさんにプレゼントするお菓子の練習もしたいしペンダントの代わりに手作りのお菓子を…。
ダメです、私のお菓子ではレイさんのペンダントの代わりにはなりません。
やっぱりレイさんのペンダントをイブキさんにプレゼントするしか…。
…いや、あと一つだけ方法があります。
同じペンダントを買うんです!
そしてレイさんのペンダントは私が貰います!
なんていい方法を思いついたのでしょうか!
そうと決まれば早速雑貨屋フォーゲルネストに行きましょう!
「えーと、すみませんが足りませんね…」
店主さんの困ったような笑顔にいたたまれなくなりました。
レイさんのペンダントは、高かった、です。
結局、レイさんのペンダントはイブキさんの物になりました。
ぐすん…。




