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第十五話 学園祭がやってきた! part1/3

 秋です。

 シュトラール学園もにわかにざわついている。

 シュトラール学園一のお祭りイベント、学園祭の日を迎えたからだ。


 転生前の世界にも学園祭はあったが、シュトまほの世界の学園祭はもっと大がかりだ。

 校門には炎でできたゲートが設置され、ゲートをくぐると何もないはずの地面から水が噴き出し噴水でお出迎え。

 他にもここが魔法のある世界だとあらためて実感させられる仕掛けが盛りだくさんだ。


 あと何故かなんの脈絡もなくクソウサギ…もとい、ラナビィに似た風船やお面が売られている。

 一応シュトまほのマスコットキャラということもあって、ゲーム内の学園祭でもやたらとラナビィモチーフの飾りが背景を彩っていた。


 …そういえばあいつプロローグ以来見てないんだけどどこいったんだ。


「レイさん、イナノさん、お待たせしました!」


 ラナビィモチーフの趣味の悪い飾りを眺めていると、オトネが息を切らして走ってきた。

 学園祭を回るなら宣伝もしてくるように頼まれたのか、制服の上からかわいらしい文字で「2-Cチョコバナナ」と書かれたエプロンをつけている。

 ちなみに私のクラスは“魔力石研究”とかなんとかいってクラスの一人一人が魔力で生成した石を展示している。

 宝石みたいで綺麗っちゃ綺麗だけど、学園祭の出し物として楽しいかどうかというと正直楽しくはない。

 教室の中にただずらーっと石が並んでいるだけだ。

 まあおかげで何かしなきゃいけないこともないから一日自由なんだけど。


 あ、ちなみに私の作った宝石が一番大きくて綺麗だった(自画自賛)


「クラスの仕事はいいの?」

「はい!休憩を貰ったので大丈夫です!」


 今日の重要事項として、絶対に隠しキャラとのイベントを起こさなきゃいけないんだけど、まだ早い。

 それまでは学園祭を堪能させていただくとしよう。


 やっぱり今日しか見れない限定立ち絵を見なきゃシュトまほの学園祭は始まらないからね!




 ***




 まずはイブキのところへ向かった。

 イブキのクラスは猫カフェだ。

 といっても普通の猫カフェではない。


「あ!オトネちゃん来てくれたんだ!」


 教室に足を踏み入れると猫耳と尻尾をつけたイブキが出迎えてくれた(オトネだけを)

 そう、猫カフェといっても動物の猫と触れ合えるわけではなく、猫耳尻尾をつけた店員たちと触れ合えるカフェなのだ。

 猫耳尻尾も私が元いた世界のようなちゃちいヤツではなく、魔法で生やされた本物の猫耳尻尾というこだわりようだ。


 可愛い猫ちゃんを期待してやってきた客にとっては詐欺でしかないが、私にとってはご褒美だ。


 猫耳のイブキ…!

 ふわふわの髪の毛にぴょこんとはえた猫耳…!

 動くたびに揺れる尻尾…!

 あざとい、ああ、あざとい!

 だがそれがいい!

 なでくりまわしたい!!


「イブキさんが猫ちゃんなんですね」

「そうだよー!オトネちゃんならなでてもいいよ!」


 私もなでたいんですけど。


 席に通され、メニューを見ると“夢見る猫ちゃんのふわとろプリン”だの、“ときめき猫ちゃんの甘酸っぱい恋のオレンジジュース”だの、口に出すのがはばかられるようなネーミングでいっぱいだった。


「じゃあ私はミルクティーをいただけるかしら」

「私はプリンをお願いします」


 さすがにあの恥ずかしい名前を言うわけにはいかないので普通に注文する。

 イナノは「私は水で大丈夫です」とか言っていた。


 しかし注文を取りに来たイブキが無情な言葉を言い放つ。


「ダメダメ!セイシキメイショーじゃないと注文うけられないからね!」


 は?

 このこっぱずかしいネーミングのメニューを口にしろと?

 何それ?罰ゲーム?


「えーと、夢見る猫ちゃんのふわとろプリンお願いします」


 が、オトネは恥ずかしがることもなくあっさりと口にしていた。

 これもヒロインのなせる技なのか…?

 しかしオトネができて私ができないというわけにはいかない…!


「こ、恋する猫ちゃんの好き好きミルクティーを、い、いただけるかしら」


 あああああ!

 恥ずかしい!

 顔から火が出そうだ!

 クソッ!イナノが水を注文してたのはそういうことか!

 メニューの一番下に「水 0円」ってあったのはそういうことか!

 あああああ!恥ずかしい!!!!

 自分でも今顔が真っ赤なのがわかる!!


「はーい、かしこまりましたー!」

「…イブキさん」


 オトネがイブキの方を見て小さく親指を立てている。

 …?

 なんのサイン?

 二人だけの秘密のサイン?

 よくわからないけど二人が仲良くて結構だ。


 結局イブキをなでくりまわすことができないまま、猫カフェを後にした。

 ミルクティーの味は普通だった。


「はぁ、散々な目に遭ったわ」

「そうですか?私は楽しかったです!とてもいいものも見れましたし…」


 すでにぐったりしている私とは対照的にオトネは生き生きとしている。

 まあたしかにイブキの猫耳は眼福だったけども…。




 ***




 次はシズクのクラスだ。

 シズクのクラスはクラシック執事喫茶だ。

 普段は髪を下ろしているシズクの貴重な一つ結び姿が見られるのだ。


「オトネさん、来てくださったんですね…!あ、貴方も暇なんですね。まあゆっくりしていってもいいですよ」


 教室に足を踏み入れると執事服に身を包んだシズクが出迎えてくれた(オトネだけを)


 はい、二回目。

 私とイナノもいるんですけどね。


 執事喫茶と言うだけあって女子も執事服を着ている。

 教室内にはクラシックが流れており、メニューもイブキの猫カフェと違ってまともなものだった。


 執事喫茶…か。

 シズクには悪いけどもう見慣れちゃった。

 執事服のシズクはたしかにレアかもしれないけど、うちには本物の執事がいっぱいいるからなぁ…。

 なーんにも真新しくない!


「お嬢様、紅茶とケーキです」


 そもそも元々シズクは敬語キャラだし、意外性がない。


 シズクがさっきからオトネの周りをうろうろしている。

 多分「シズクさんかっこいいです!」とか言われたいんだろうけど、オトネはケーキに夢中でシズクに興味を示していない様子だった。


 …不憫な子よのぉ、シズクは。

 でもケーキで釣ったのはお前だ、反省するといい。


 と、うろうろするシズクを横目に紅茶を飲んだ。

 味は普通だった。


「いってらっしゃいませ、お嬢様…」


 オトネから賛美の言葉を聞けなかったシズクがしょんぼりしながら私たちを見送る。

 ちょっと可哀想だった。


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