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第十二話 遊園地と子守りと私

「レイ様!早く早く!」


 貴重なRTAの自由時間トイレタイム

 そんな時間に私は子守りをしている。

 私の逆ハー計画の一人だったカイがまさかの9歳ということが判明したのだ。

 犯罪者になりたくない私はカイを私の逆ハー計画の一員からクビにした。


 つかあんな9歳児がいるかー!

 180cmだぞ!?

 そしてあのイケメンだぞ!?

 本当に、本当にシュトまほスタッフはどこまで性格が悪いんだ…!

 ちょっと今シュトまほスタッフのことを嫌いになりかけてる…!


 カイはもう逆ハー計画の一員じゃないからデートを断ろうとしたが、「うえーん!レイ様の嘘つきー!」と泣かれたので仕方なく子守りをしているというわけだ。

 しかもいつもなら何があっても付いてくるイナノも「では今日はカイがレイ様のお付きをしなさい」とか言って付いてこなかった。


 何がレイ様のお付きだ。

 子守りを私に押し付けただけじゃないか…!


「ローラーコースター楽しいー!もっかい!もっかいいいでしょレイ様!」

「もう4回目なんだけど…」


 草原で走り回る犬のようにカイの目はキラキラと輝いている。

 この底抜けの体力はさすが9歳児というところだ。

 イナノが付いてこなかった理由がよくわかる。


 しかしイケメン未亡人のアキナさんは女だったし、ワンコ系年下彼氏だと思ったカイは9歳だった。

 もし転生前の世界に戻れるなら全部暴露してやりたい。

 どうせ信じてもらえないだろうけども。


 4回目のローラーコースターに並んでいると、前の方に他より頭一つ飛び出ている金色のツンツン頭が見えた。

 あれは…


 ライコウだ。

 人ごみに埋もれているが、隣にオトネがいるのも見えた。


 そうか、いつの間にか夏休みも後半に差し掛かっていたのか。

 どうやらオトネは補習授業から開放されたらしい。


 開放されてすぐにデートとか、オトネもヒロインの自覚が出てきたか。

 せっかくのデートなのに何故オトネが制服なのかはわからないけど。


「まだかなー、まだかなー」

「しっ、カイ、待て!」


 ぴょんぴょんジャンプしながら列の前の方を眺めるカイに「待て」をする。

 どこまでも犬らしいカイはしゅんとしながらおとなしく待っていた。


 チッ、離れすぎててオトネたちの会話内容が聞こえない…。

 でももうすぐ列の折り返し地点だ。

 折り返せばオトネたちが隣に来るはず…。


 …ん?そうなるとややこしいことにならないか…?


『え!?もしかしてレイさんの彼氏ですか!?』

『俺、狛津カイ!9歳です!』

『ハァ?9歳のわけねェだろ…。空ノ城家の嬢さん、お前自分の彼氏に幼児プレイを強いてんのか…?引くわ…』

『レイさん、気持ち悪いです…』


 …こう、なるわな。


 いや、それは困る。

 イナノならうまく説明してくれるだろうに…!

 こんなときに限って傍にいないイナノを恨んでしまいそうだ。


「カイ、向こうに私の知り合いがいるんだけど、何か言われても絶対に自分が9歳だって言わないでくれる?」

「なんで?」


 子供に言い聞かせるようにカイの目をしっかりと見つめ、小声でそう言う。


「9歳はね、コースターに乗っちゃダメなの。もしバレたら逮捕されるのよ」

「え!?やだ!絶対内緒にする!」


 この辺は本当に9歳児だなあと思う。

 シュテルン・パルクのコースターに年齢制限はないし、たとえあったとしても逮捕されるわけがない。


 カイのあまりの純粋さに呆れていると押し返し地点が近づいてきた。

 最初に私たちに気付いたのはオトネだった。


「え…!?レイさん…!?と、隣の方は…!?」

「ヒュー、そっちも彼氏連れか。空ノ城家の嬢さんもやるじゃねェか」


 オトネがカイを見上げながら驚き戸惑っている。

 フフ、カイのイケメンっぷりに恐れをなしたか。


「あら、二人とも奇遇ね。こっちはうちの執事のカイよ。今日はイナノが休みだからその代わりにきてもらってるの」

「は、はじめまして!狛津カイです!」


 バレたら逮捕という言葉が効いているのか、カイは緊張した様子で背筋を伸ばして挨拶する。

 オトネはカイが私の彼氏ではないとわかると、露骨に安堵の表情を浮かべた。


 お、次はカイを狙う気?

 でも残念!カイは9歳だからオトネの逆ハーには加わりません!

 …私の逆ハーにも加わらないんだけど…。


「私は星宙オトネといいます。いつもレイさんにはよくしていただいて…」

「あ、えーと、こ、こちらこそ?よく?してだいて?」


 深々と頭を下げるオトネに対し、カイはうろたえるばかりだった。


 駄目だ、これ以上カイにしゃべらせるとボロが出る。


「ほら、列進んでるわよ」


 これ以上カイにしゃべらせる前に、と列が進んでいることを指摘する。

 結局オトネとライコウが何をしゃべっているのかはわからなかったが、その様子を見るからにちゃんとデートはしているようだ。


「あー、緊張したー。ねえレイ様!バレなかったかな!?」

「バカ!声がでかい!」


 緊張の糸が解けたのか、カイが大声を出す。

 慌てて自分の口に指をあててしーっとするものの、しっかりと聞かれてしまったようでオトネとライコウがこっちを見ていた。

 ライコウのニヤニヤした視線が痛い…。


 あー、もう、誤解を解くのが面倒…。

 私にそんな趣味はないのに…。


「ほらあんな大きな声出すからバレたわよ。あーあ、逮捕されるわね」

「え!?」


 頭にきたのでちょっと意地悪してやった。

 やりすぎたのか、その後カイはでかい図体を小さくして私の影に隠れ(隠れきれてないけど)、周りを気にしてずっとそわそわしている様子だった。

 そして帰るなりイナノに抱き着いて「イナノお姉ちゃん!俺逮捕されちゃう!」と泣いていた。


 純粋なカイを騙したことがバレてイナノにわりと強めに怒られた。


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