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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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とりあえず流血してればチートと呼ばれないだろ

ドラゴンがブレスとともに、小さな岩を吐き出す。弾丸のような勢いを持って飛んできたそれを避ける術はなく、俺の肩に風穴が空いた。


またかよ、と激痛で朦朧とする頭に喝を入れる。戦闘早々片腕をやられることは珍しくなかったので、応急処置さえすれば、片手剣を振り回せる。ポーションをかけ、圧迫止血とともに包帯を巻く。残ったポーションを一息に飲み干せば、視界が点滅した。頭の中がぼうっとする。


そうこうしているうちに、増援はちゃんと役割を果たしているらしい。敵をこちらに定めている隙に、高台を占拠して弓矢を放つ。おびただしい数の火矢が空を埋めつくし、ドラゴンの体へと突き刺さる。


皮膚の表面なのか鱗にすぎないのか、小さな延焼はあるものの致命的とまではいかず、それでも弓矢の軍勢に息を吹き付けんと身をくねらせたドラゴンに向かって、翔んだ。


勇者の剣の名にたがわず、するりとその貧弱な足に突き刺さった片手剣は、体重とともに深々と傷口をえぐっていく。


怒りと痛みの雄叫びとともに、こちらを振り落とそうとするドラゴンに、二度目の一斉射が降り注ぐ。


ドラゴンは中途半端に宙に浮いている。


剣の柄を握り、振り落とされないようにしているだけで、全体重が腕を襲う。激痛に奥歯を食い縛り、ドラゴンの体を登って行けないか、ピッケル代わりに剣を突き立てる。


やがて、尋常でない血が、神社の神木のように太い足から噴き出して、一瞬にしてドラゴンの血に染められる。


風穴が空いた肩の傷に、流れ込まなければいいのだが。


次、と頂上を目指した俺の体が、横に大きくぶれる。ドラゴンの鉤爪が俺を握りつぶそうとしていた。爪が見事に肩の傷を抉り、意識が飛びそうになる。


それでも、濁った瞳がこちらを捉えた瞬間に、剣を一閃させていた。両目を薙いだ剣筋に手応えがあった。


その体を中空へ舞い上がらせる羽根を、暴れ狂うこのタイミングでズタズタにする。ここまでくればもはや技や型など滅茶苦茶で、鈍器のように振り回して滅多刺しにする。


英雄譚からは程遠い戦いだった。


地に落ちたドラゴンを、歓声を上げて突き刺していく連中を尻目に、俺は勝鬨の声を上げた。


そして俺は当分、ポーションという名前の痛み止めの、薬漬けになっていた。



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