2人で猥談
お酒が入る反省会の後半は、何時も下世話な話題に花が咲く。 まして、今回は未成年のセレスティアがいない。 僕とダイアナはしこたま飲んで酔っ払った。
「何で直樹は追ってこないのよ~? ぐすっ」
「あん時は、引継ぎやら何やらで忙しかったんだ」
あれ? 今度は奈央子の夢か。
「妊娠した彼女を捨てるなんて最低」
「捨てる訳ないだろ? こっちは覚悟を決めたのに、自殺なんかしやがって」
「えっ? そうなの?」
「そうだよ。 絶望するの早すぎだっつーの」
「ごめーん。 あれ事故なの。 ぼーとしてたら落ちちゃって」
「はぁ? お腹に子供がいるのに奈央子てめぇ」
「あっ・・あれ嘘。 妊娠したって言えば結婚してくれるかな~て」
「なにー!? 僕がどれほど後悔したと思ってる」
「ごめんちゃーい」
*****
朝か・・頭が痛い。 何だか救われる夢を見た気がする。
「うーん・・ムニャムニャ」
ダイアナと一緒に寝てたようだ。 透け感のキャミソールが眩しい。 パンツは履いてる。 なにも無かった・・たぶん。
「何かある前にちょん切ってます」
「シンシアか。 おはよう」
ダイアナの護衛騎士で魔導七剣士のシンシア。 銀髪をベリーショートにしたクール系女子だ。
「ダイアナ殿下は、宮廷のゴタゴタで心がささくれておられます」
「そのようだな」
勇者君の件しかり。 今回のダイアナはらしくない。
「知己の仲である閣下と楽しく飲んで、タガが外れたのでしょう」
「ああ、楽しいお酒だった」
記憶はないけど。
「どうか、忘れて下さい」
「わかってる。 彼女が起きる前に出ていくよ」
僕の寝室だけどね。
+++++
遠征から戻ったガイアは大怪我を負っていた。 傷は回復魔法で癒えたものの、血を失い過ぎて意識が戻らない。
「看病してもらって悪いわね」
「いいえ。 ガイア様には助けて頂きましたから」
いつの間にか夜が明けたのね。
「こいつ、あんな無茶して・・ほんと馬鹿」
「ガイア様を本当に慕っておられるのですね?」
「まあ、元婚約者だからさ」
胸がチクリと痛む。 2人はブルースの死後、添い遂げると誓った仲だという。 エルフの価値観は、時の尺度が違い過ぎてピンとこない。
「あの・・もし仮にですが」
「うんうん」
「私がガイア様と番になったら、テラ様はどう思われますか?」
「マリアンヌが?」
ガイアがブルースの死を待つのであれば、その逆だってあって然るべきだ。
「飽くまで仮にです」
「そうねぇ 少なくとも、私にガイアを咎める資格はないわね」
理性が『止せ』と囁く。 それでも、心が答えを求めてしまう。
「では、お気持ちは?」
「若干、モヤモヤする?・・みたいな」
既にマスタング家に嫁いだ私が、こんな事を訊いた所でなにがあるというの。
+++++
アキラが戦乙女を置いて帰ってきた。 用意してやった侵攻軍まで引き連れて。 辺土でいったい何があった?
「何とかしてくれ! ヴェロニカ」
「まあ、アキラ様。 その首・・どうされたので?」
何だこの珍妙な有様は? 頭の天地と前後が逆さになってる。
「ゴリマッチョに絡まれて。 首が・・首がぁ」
「あらあら、魔法で撃退されれば良かったですのに」
反撃する前に首をへし折られたか?
「それが・・緊急魔法で許可申請を・・システムエラーが中止されて」
「アキラ様 落ち着いてくださいませ」
主様のシステムが作動しなかった。 何者かが干渉したのだろうか?
「ヴェロニカぁ 俺の身体を元に戻してくれぇ」
「見たところ・・この形で骨が繋がっておりますわね。 無理に曲げれば再び折れます」
「ひぃぃぃ!!!」
「どのような人物に治療を受けたので?」
形はともかく、即死レベルの損傷を瞬時に治した者がいる。
「治療? 知らない。 勇者だから、即死回避スキルとかあるんじゃ」
「いいえ、勇者にそのようなスキルはございません」
何処まで無能なんだ? 何も確認せず逃げ帰ってきたのか。
「ダイアナ殿下はその場に?」
「あの女・・俺を見捨てやがった」
「それは、赦し難いですわね」
「そうだ! あの女、俺が酷い目に合ってるのに、嗤って観てやがった。 全部あの女の差し金だ」
取り敢えず、現場の状況は眷属から聴取しよう。 あとは、この状況をどう上手く利用するかだ。
+++++
従軍書記官デイビッドが早速報告したいと言うから、何事かと思えば。
「何ですの? この・・『食べられてみた』なる奇怪な企画は?」
「今回の遠征で得た新機軸です」
「魔獣に食べられれば人は死にます」
「はい。 死に至るまでに体験する全てを克明に記した記録・・これは売れます」
この書記官は何を勘違いしているのかしら?
「奇をてらったフィクションなど不要です」
「いえ、ですから実録です」
「は? 貴方は生きてるじゃない」
恐怖のあまり気でも狂ったか。
「自分でも不思議でなりません」
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