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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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残り物には福がある

『奈落』の開拓を始めて15年が経った。 全域から全ての魔獣が淘汰され、実りある豊かな土地に生まれ変わった。 最近の日課はのんびり釣りをすること、神亀タロウの背中に乗って、今日もパンドラ湖に釣り糸を垂れている。


「父上、魚釣りも結構ですが、私も、そろそろ『パパドーラ・スタリオン支店』に挑戦してみたいです」

「エリックには未だ早いんじゃないかな?」

「何を仰います。 王国貴族時代、15歳で貴族学院に入学した父上は、バドッグ王都支店でその武勇を誇ったのでしょう?」

「えっと・・何をする店かは知ってるんだよね?」

「戦いに勝利し、少女の祝福を受ける店だと聞いております」

 嘗てパパドーラ王都支店で出会った少女マリーダは、14年前、正式にウィリアム3世と結婚して、バドッグ王国の王妃となった。 ジルベルトの話によると、慎ましい態度と平民出身の庶民感覚で、民からの信任も厚いらしい。 ウィリアム3世の治世は盤石と言って良かろう。


「祝福なら、カリファがしてくれただろう?」

「勝ち取ることに意義があるのです」

「とにかく駄目だ。 初体験をプロに任せると、碌なことにならない」

「仰る意味が解りません」 

 シンセス聖教国3人目の王女カリファは、帰国した勇者アキラとの結婚を拒み、僕の息子エリックと婚約した。 その後、行方不明となった勇者アキラは、バドッグ王都で目撃されたとの不確定情報もある。 それにしても、シルフィーナとセレスティアが僕の嫁になって、更にその妹が息子の嫁に・・シンセス聖教国との関係は、もうガッチガチだ。


「陛下! 緊急事態です」

「なにか?」

「旧レビゾン領ゾンダ州で難民が蜂起、多数の被害が出ております」

「また、サピルスのところか」

 15年前に誕生した新生レビゾン帝国は、革命勢力の蜂起によって、僅か2年でその幕を閉じた。 その後、レビゾンは、ゾンダ王家を排した集団指導体制を執り、新たな国家を樹立する。 その革命政府も、悪政と粛清の末に5年で崩壊、旧貴族や財閥が版図を奪い合う泥沼の内戦へと突入した。


「おのれ蛮族」

「エリック、簡単に『蛮族』などと蔑んでは本質を見失うぞ」

「ですが、余りに身勝手な者達です」

「彼らにも、彼らなりの理屈がある。 嘗てヌゥイ族は野蛮な『土人』と蔑まれ迫害されてきた。 ミィカは果たして『蛮族』だろうか?」

「ミィカ姉さんは民を想う立派な方です」

「だろう? 偏見は視野を狭くする。 憶えておきなさい」

「はい」

 10年前に建国した我らがスタリオン共和国、ゾンダ州を始めとした旧レビゾン連邦西部と辺土魔境全域を版図に収め、スラグ人、ヌゥイ族といった人族から、エルフ族、ドワーフ族、獣人族といた種族までが暮らす多民・多種族国家で、国家運営は各民族代表の族院と、民衆代表の衆院から議員が選出され執り行われる。 国王の僕は、基本的に彼らの政策に口を出さない。 僕の役割は、武威を以て国家を治める象徴的な存在であることだ。


「さて、我々の出番だエリック」

「はい、父上」

「マスタング家の本懐は戦にこそある。 いざ、出陣だ!」


最後まで呼んで下さった方、誠にありがとうございます。

 

1ヵ月の短期連載ではありましたが、登場人物への思い入れもあり、継続も検討しました。 しかし、当初の構想通り完結する方が美しいと判断致しました。


感想・評価お待ちしております。


また、次回作も読んで頂ければ幸いです。

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