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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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君がために俺は戦う

 瘴気の発生が止まった。 これで、『奈落』の魔獣が今以上に増えることは無くなった。 問題は事実をどう伝えるか。 魔獣の脅威が消えたとして、人々が安堵するのはいい。 しかし、為政者は魔獣が消えた土地の価値を値踏みする。 


「内緒にしておく?」

「神官団は既に異変に気付いていますわ」

 トルクも同行してたしな。


「輜重隊に参加した冒険者も騒いでました」

「王都に伝わるのも時間の問題だな」

 冒険者の口は綿毛のように軽い。 酒を飲ませれば、守秘義務なんて意識の彼方に飛んで行く。


「シンセスには情報を共有するべきだな。 下手に隠すと心証が悪くなる」

「ですわね」

「バドッグ王家はどうされますか?」

「補助金は打ち切り、事実上、辺土は放逐状態だ。 親切に教えてやる義理はない。 ヘロウ公爵家を通じて必要な人物にだけ伝えよう」

「では、そのように」

 残るは。


「レビゾン側の対応は一任していいか?」

「問題ない。 元より帝国とは戦争中だ」

 侵攻軍が撤退して以降、正式な手打ちは成されていない。 建前上は一時停戦状態なのだ。


 さて、皆さんどう動くかな?


 *****


 噂では新王ウィリアムが、再び辺土侵攻を目論んでいるらしい。 謁見の申し入れも断られ、和解のしようもない。


 ともあれ、今日は領都の見回りだ。 足下は疎かに出来ない。


「『週刊:魔導人形ゴーレムを作る』は本日発売だ。 魔導人形ゴーレムの仕組みや歴史を学びながら、毎号付属するパーツを組上げて、聖母テラ謹製の魔導人形ゴーレムを作り上げる。 創刊号は胴体パーツが付属してなんと500Pt!」

「すげぇ! 500Ptで魔導人形ゴーレムが買えるのか?」

 迷宮の攻略本で味をしめたエーレンティカのバーター商品だ。 2号からは1,000Ptに値上げされ、完成させるには24号まで揃える必要がある。 つまり、毎月4,000Ptを2年間払い続けることになるのだ。


「止めておきなさい。 結局、普通の魔導人形ゴーレムより高くつく」

「そうなんですか? 領主様」

「あっ ちょっと、ばらさないでよ」

「煩い! 子供の小遣いを巻き上げるじゃない」

 この手のやり口に子供は弱い。


「売るなとは言わん。 但し、子供相手にアコギな商売は禁止だ」

「わかったわよ! ガイア、呼び込みを続けて」

「う・・うむ」

 未だエーレンティカに顎で使われるガイア。 負い目でも感じてるのかな。


 悪徳業者に指導をして、次は街のパン屋を訪ねる。 最近、開店したマスタング領 初のパン屋だ。


「また、小麦の値段が上がったのか?」

「はい、何でも関税がまた上がったとかで、困ったもんです」

 庶民の食卓にパンが行き渡って早々、新王の強権で元に戻されてしまった。 やはり、穀物を外部に依存する体勢はリスクを伴う。 自給率アップは喫緊の課題だ。 


 そう言えば、『奈落』の土地は肥沃だったな。


 +++++


 俺とステファンはマダム・ボンボヤージュの密命を受けて、バドッグ王国へ戻ってきた。 ウィリアム陛下とバドッグ王国は俺達にしか救えない。


「君達が無事で本当に嬉しい」

「はっ レビゾン帝国のボンボヤージュ卿に保護され、恥ずかしながら生き延びましてございます」

 久しぶりの陛下は、少しやつれておられる。 大臣たちとも上手くいってないようだ。


「ステファンとベレンが居れば、もう安心だ。 直ぐにでも辺土を攻め落として、マリーダを安心させてやろう」

「畏れながら、今はその時では無いと存じます」

「どういう意味だ? 其方たちもベアトリス討伐に反対するのか?」

 今更ながら正気の沙汰とは思えない。


「いえ、マリーダ様の御為、優先すべきは他にあると申し上げたいのです」

「どういう意味だ?」

「現在、マリーダ様はレビゾンの皇宮に監禁されております」

「何だと!?」

「我らも帰国前に面会を申し出ましたが、適いませんでした」

 本当はマダムの邸で何度もすれ違っている。 犬耳奴隷姿とはいえ、あの女はまったく気付かなかった。


「そうだったのか・・マリーダから手紙の返事が届かないのも」

「検閲されているのでしょう」

 手紙は全てマダムの間者が回収している。 これ以上、陛下に毒を囁かせたりはしない。


「ゆ・・赦せん」

「私も気持ちは同じにございます。 されど、レビゾン帝国は大陸随一の軍事大国、安易に事を構えては、マリーダ様に危害が及びます」

「そうだな・・いったい如何したらいい? 私はマリーダが心配でならない」

 次は俺達が毒婦を出汁に使う番だ。


「マリーダ様をお救いする策がございます」


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