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無口で無表情で無距離な幼馴染と、無自覚にいちゃいてる話。  作者: さーど
第一話:無口で無表情で無距離な幼馴染
7/14

EP7.上の弟に説得される少女

黒神(一家の頭脳) (れい) 視点】



「……伝わるし」


「ダメ。いい?好意っていうのはね、言葉でこそ一番伝わるものなのよ」


 問題の片方……郎亜(ろあ)は、流石に我が家の夕飯時には帰っていった。

 彼にも自宅の夕飯があるだろうからな。逆に一緒に食べ始めたら僕は驚愕(きょうがく)するぞ。うん。


 しかし、安心するのも(つか)の間だ。

 その夕飯の時間となると、今度はなんだか変な(もよお)しに巻き込まれてしまった。


 もう既にいっぱいいっぱいで疲れてるのに、本当に勘弁して欲しい。

 今日はなんだか波乱(はらん)な日だな。個人的には、平穏(へいおん)な日々を望んでいるのだが……。


「……よく分からない。世の中には、以心伝心(いしんでんしん)っていう(ことわざ)が、ある。私と郎亜は、それ」


「……とか言い続けて、どれくらいの時間が経ったのかしら。どう?付き合えた?」


「………」


「それで、今日は進展はあったの?」


「………」


 そんな事を考えながら、僕は目の前で繰り広げられている論争(ろんそう)(なが)めていた。

 論争と言っても、(たた)()ける母さんに、無表情ではあるが黙り込んでいる姉さん。

 どう見ても一方的に見える。

 

「……いいから、やってみなさい。絶対に何かは変わるはずだから。ね?」


「………」


 (さと)すように話す母さん。それに対し、姉さんは……無表情だが、眼を泳がせていた。


 ……それにしても、今日の母さんはやけによく(しゃべ)るな。

 別に姉さんみたいな無口という訳では無いのだが、普段の母さんはこんなに喋らない。

 事務的、とも違うが……母さんはいつも聴く側で、自分からは積極的に話さない印象だ。


 いつもと違う母さんの様子に、少し意外に思いながら……僕は口を開いた。


「……姉さん」


「……なに?」


 泳がせていた視点を、僕に向ける姉さん。

 無表情だが、何かを期待するキラキラとさた眼になっているような……気がする。


 母さんは姉さんに逃げられたと思ったのか、不服そうな顔をしていた。……が。


「僕も郎亜とは普通に話した方が良いと思う」


「………」


 僕がそう切り出すなり、黙り込む姉さん。どこかガッカリしているような……気がする。

 ……姉さんには悪いが、率直に言うと僕は母さんの意見に賛成だった。


「まあ、まずは聴いてくれよ」


 といっても、このままでは納得してくれないだろう。僕はそう前を置いて、述べる。


「これは僕の自論だが、''言葉''というものは放った人の気持ちが込められると思うんだ。小説、歌詞とかね。その中でも、''会話''はそれが顕著(けんちょ)に現れると思う。例えばだけど、『ありがとう』などの''感謝''や、『ごめんない』などの''謝意(しゃい)''、『やった』などの''喜悦(きえつ)''、その他色々とね。''好意''もそうさ。特に''好意''は受けると嬉しいものだし、嬉しい程その効果は大きいものだ。姉さんは話さなくても、持っているその気持ちは郎亜に伝わるのかもしれない。しかし、一度考えて欲しい。話すことで''言葉''にする事と、しない事、どちらの方が郎亜にとっては嬉しいと、姉さんは思う?」


「………」


 いつしか僕の説明を真剣に聴き始めていたらしい姉さんは、尋ねた質問に首を傾げた。

 先程、母さんの話にあまり納得できていなさそうだったが、どうやら聴いてくれそうだ。


「……少し()ずかしいが、先程行っていたバックハグを例としよう」


「待って」


「ん?」


 想像しやすいように、羞恥(しゅうち)(こら)えて更に説明を重ねようとしたら、姉さんが止めてきた。

 見ると、姉さんは再び眼を泳がせている。表情は相変わらずではあるが。


「……あれ、私が郎亜の事を好きだと、(れい)に伝えようとしてやったこと」


「……え、そうなのか?」


 それを聴いて、僕は驚いた。

 僕が知らなかっただけで、いつもあのような事をしていると思ったからだ。


 まあ、姉さんが伝えたかったその意図はしっかり伝わっているが。


「……うん。けど、思い切りすぎた。……今は私も恥ずかしい。から、その例えはやめて」


「わ、分かった」


 ……思い切りすぎにも程がないか?

 とは思ったが、僕は頷いた。これ以上掘り下げるのは、両者に取って何も得は無い。


「……じゃあ、郎亜が姉さんにハグだけをするか。もしくは、ハグをしたまま『好き』と伝えてくるか。……姉さんにとって、どっちが嬉しい?」


「……ハグ好きなの?」


「うるさいな」


 自分で例えながら恥ずかしくなってきてるんだぞ。妄想力豊かでキモイな、僕……

 姉さんは眼を泳がせながらも、頷く。

 

「……もちろん、嬉しいけど」


「……だろう?」


「……でも、郎亜がどうかは違う気がする」


「いや、嫌っていない相手なら大体は嬉しくなるものだ。姉さんは、郎亜に嫌われていると思っているのか?僕は思わないが」


 というか、郎亜も好いているのでは?

 バックハグされてもなんともなさそうだったから、恋愛的かは別問題だが……


 少なくとも、郎亜は姉さんを嫌っているとは微塵(みじん)も思えない。


 姉さんは俯きながら、頷いた。表情は相変わらず変わらない。


「……思わない」


「なら、問題はない」


「……けど、急に郎亜と話すの、なんだか恥ずかしい。ずっと話してないから……」


 あー……気持ちは分からなくもない。


 というか先程、説明を始める直前も姉さんに話しかける時に少し気まずくなった。

 久しぶりに話すのは、少し気まずいものなのだと知った。


 うーん、そうだな……。


「……じゃあ、まずは挨拶と助けられた時に『ありがとう』だけに絞って言ってみないか?挨拶は会話の基本と言われているし、『ありがとう』は気持ちが顕著に現れるぞ」


「……わかった」


 姉さんは頷いてくれた。よかった。


「……零」


「ん?」


 説得できたことに胸を()で下ろしていたら、母さんが名前を呼んできた。

 眼を向けたら……なんだかドン引きしているような眼をしてる。どうした??


「あなた……ほんとに中学生??」


「そうだが???」


 ──というわけで、今日の作戦会議とやらはお開きになった。


 そういえば、来人(らいと)が全く話に入れていなかったことに後から気がついた。

 まあ……まだ小学生だし、夕飯を美味しそうに食べていたからまあいいか。

【おしらせ】


ご勝手ながら、タイトルを変更しました。


Before『無表情で無口で無距離な幼馴染と、無自覚にいちゃついてる話。』


After『無口で無表情で無距離な幼馴染と、無自覚にいちゃついてる話。』

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