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児童戦士リトルホッパーJ  作者: サムライドラゴン
1/1

変身(ビルドアップ)!!


 いつもと変わらない毎日。

 いつもと変わらない一日。

 いつもと変わらない今日。


 そんな日々に飽きていた少年がいた。


「はぁ~あ・・・。」


 この少年の名は "鷦鷯葉太(ささき ようた)" 。

 農辺流(のうべる)小学校の四年生。


 現在、土手で寝っ転がって空を見ている。


「面白いことねえかなぁ・・・。」


 そんなことを呟いた。

 そして、ヨウタは起き上がってそろそろ帰ろうとした。


 すると、変なモノが目に入った。


 土手の先にある川で、なにかが浮いていた。

 ヨウタは距離を縮めながら、謎の物体をよく見ようとした。


「あっ!」


 ヨウタはそれがなにか気付いた。

 川に浮かんでいる物体の正体は、なんと人間だった。

 背中のみを見せている状態で、それ以外は川の中にある。

 それに気付き、ヨウタは大急ぎで川に向かった。



 子供だが一生懸命に川から大人を引き上げた。

 引き上げられた大人は、みすぼらしい服を着た、長い髭や髪を生やしたお爺さんだった。


 ヨウタはこういう場合どうすればいいか考え、前に授業で習った「人工呼吸」というモノを思い出した。

 ヨウタはお爺さんのかすかに見える口を見た。


「おえぇ~・・・。」


 しかしヨウタはお爺さんとキスをすることを想像し、「人工呼吸」をすることをやめた。

 仕方なくヨウタはお爺さんの体を揺らして、目覚めさせようとした。

 何度も「爺さん!」と呼び、たまに叩いたりもした。


 数十秒後、お爺さんは意識を取り戻した。

 上体を起こし、口から水を水鉄砲のように吐き出した。


「ゲホッゲホッ、し、死ぬかと思ったゾイ・・・。」


 お爺さんは意識を取り戻すと、周囲を見回した。

 そして横にいたヨウタが目に入った。


 すると、お爺さんはヨウタの右肩を左手で掴んだ。


「少年よ、助かったゾイ。」


 お爺さんは結構元気そうだった。

 ヨウタはお爺さんの勢いに対して苦笑いを浮かべていた。


 お爺さんはしばらくヨウタを見つめていた。

 ヨウタは気味が悪くなり、目を()らしていた。

 しばらくして、お爺さんは突然喋り出した。


「うむ、キミなら相応しいかもしれないゾイ。」


 そう言うと、どこからかモノを取り出した。

 それは、まるで腕時計のような形をした腕輪だった。

 お爺さんはヨウタの手を掴み、その腕輪をヨウタに渡した。


「これは・・・?」

「いずれ使うときが来るゾイ。 その時に教えるゾイ。」


 お爺さんは笑いながらそう言うと、勢いよく立ち上がった。

 そして反対方向を向いた。


「では、また会おうゾイ!」


 お爺さんはヨウタに背を見せながら去って行った。

 突然のことでヨウタは固まっていた。


「なんだったんだ・・・。」


 ヨウタは貰った腕輪をしばらく見ていた。

 赤や緑や黄色などのカラフルな感じの腕輪で、中央に変なマークが描かれている。




 そして数時間が経った。

 時刻は夜。


 ヨウタは既に家に帰宅し、自分の部屋の勉強机のイスに座っていた。

 勉強机に足を乗せて、昼間の謎のお爺さんから貰った腕輪をずっと見つめていた。

 しかし当然分かるはずがない。


 結局ヨウタは夕食を食べて、お風呂に入り、そのまま寝てしまった。






 次の日。

 小学生のヨウタは学校にいた。

 昨日貰った腕輪も持って来ていた。


 休み時間。

 ヨウタは自分の席で座って、今日も腕輪を眺めていた。

 すると、クラスメートの二人がヨウタのもとへ来た。


「ヨウタ、なにやってるんだ?」

「ジョー、ツトム・・・。」


 やってきたのはヨウタの親友である "六連(むつれ) (つとむ)" と "松本(まつもと) (じょう)" 。


 ツトムは小学生では頭がいい方の男の子。

 その反面、運動はやや苦手。

 基本優しいので意外と女の子から好かれている。


 ジョーは食いしん坊なやや小太りの男の子。

 ヨウタと同じく勉強は苦手。

 惚れやすい性格。


「なんだい、その腕輪は?」


 ツトムはヨウタが持っている腕輪に興味を示した。

 ツトムの言葉によって、ジョーも腕輪に気付いた。


「なんだこれ、変な腕輪~。」

「昨日変な爺さんから貰ったんだ。」


 ヨウタは腕輪をツトムに渡した。

 ツトムは腕輪を貰うと、顔に近付けてもっとよく見た。


「知らないオジサンから貰ったモノなんて、危険じゃないか?」


 ツトムはそう言いながらヨウタに腕輪を返した。


「でも、なんかあの爺さん、意味深長(いみしんちょう)なことを言ってたんだよなぁ・・・。」


 ヨウタは椅子を()らして、腕時計を回しながら言った。

 すると、チャイムが鳴った。


「おっと、次は理科室に移動だったね。」

「じゃあ、またなヨウタ。」


 ツトムとジョーは自分の席に戻って、理科室に行くための準備をし始めた。

 ヨウタも考えるのを一旦やめて、準備をし始めた。




 数時間後。

 下校時間になり、帰宅準備をするヨウタ。


「ヨウタ、帰ろうぜ。」


 ジョーが誘ってきた。

 ツトムも一緒にいた。


 ヨウタは二人と一緒に帰宅することにした。



 学校を出て通学路を歩く三人。


「とにかく、知らないオジサンから貰ったモノは危険だし、捨てた方がいいよ。」

「う~ん・・・。」


 三人は腕輪のことで話し合っていた。

 特にツトムは腕輪を捨てることを(すす)めていた。


「そうかなぁ・・・。 俺だったら使わなくてもとりあえず貰っちまうな。」


 ジョーは腕輪をそのまま貰っておくことを薦めていた。

 ヨウタはさらに迷ってしまった。


「まあ、でもヨウタ自身が決めることが一番だね。」

「それができねえから迷ってんだろうが。」


 ツトムの言葉にヨウタは呆れていた。

 ツトムは「ハハハハ・・・。」と苦笑いをして、頭をかいた。




 しばらくすると、十字路に着いた。


「それじゃ、また学校で。」

「ああ。」

「じゃあな。」


 三人はそれぞれ違う道に行き、別れた。



 一人になったヨウタは、一人帰路(きろ)を進んでいた。

 周りには人が誰もいない。

 ヨウタただ一人が歩いていた。


 ヨウタの頭の中には腕輪の事ばかりが浮かんでいた。

 ヨウタの左手首にはその腕輪を実際にハメていた。

 しかし特に変わった様子はなかった。


 あのお爺さんに出会ってから、ヨウタは悩んでばかりだった。


 次の曲がり角が見えてきた辺りまで進んでいた。

 すると、曲がり角から突然なにかが飛び出してきた。


 その飛び出してきたモノを見て、ヨウタは驚愕した。

 ヨウタの前に、顔のような模様が描かれた仮面をつけた黒い全身タイツを着た謎の男が現れた。


「その腕輪は・・・。 なるほど、キサマがそうか。」


 謎の人物は変な動きをしながらブツブツと喋っていた。

 当然ヨウタはなにが起こっているか全く理解できないでいた。


「あ、あの~・・・。」


 ヨウタは謎の人物に話しかけようとした。

 すると次の瞬間、思いがけないことが起こった。

 謎の人物が勢いよくヨウタに近付き、勢いよく蹴飛(けと)ばしたのだった。


「うわあ!!?」


 ヨウタは宙を飛んで、地面に背中を打った。

 咳払(せきばら)いをしながら上体を起こして、謎の人物の方を見た。


「い、一体、どうして・・・。」


 ヨウタはなんとか言葉を喋ろうとするが、その前に謎の人物が近付いてきた。

 そしてヨウタに向かって腕を伸ばしてきた。


 しかし、あと少しでヨウタを掴みそうになった瞬間、謎の人物の左側頭部に石が当たった。

 謎の人物が痛がりながらも、石が飛んできた方を見た。

 すると、今度は顔面に石がぶつかった。

 謎の人物が顔を押さえて痛がっていると、石が飛んできた方向から人が接近してきて、謎の人物を突き飛ばした。

 そのまま謎の人物は塀にぶつかって倒れた。


 ヨウタは助けてくれた人物を見た。

 すると、ヨウタの表情が変わった。

 なぜなら、その人物は昨日腕輪をくれた謎のお爺さんだったからだ。


「あ、あんた・・・。」


 ヨウタがお爺さんを指を差しながら喋ろうとするが、その前にお爺さんが倒れているヨウタの方を向いて、ヨウタを起こしながら喋り始めた。


「今こそ腕輪の力を使うときゾイ!」


 ヨウタを立たせると、少し距離を空けて説明しだした。


「腕輪を天に掲げながら、「ビルドアップ」と言うゾイ!」


 お爺さんがジェスチャーをしながらヨウタに説明していた。

 しかし、当然ヨウタにはなにが起きているか理解できず、ただ困惑していた。


「い、一体なにを言ってるんだ・・・?」

「いいから、さっさとやるゾイ!」


 ヨウタはなにも分かってはいない。

 しかし、自分を襲ってきた人物が再び立ち上がろうとしていることと、目の前のお爺さんが必死になっていることで、ヨウタはなにも分かってはいないが言われるがままに行動し始めた。

 腕輪を付けた腕を天に掲げた。

 そして大声で叫んだ。


「ビルドアップ!!」


 次の瞬間、腕輪が光り始めた。

 そしてヨウタの周りを光が取り囲んだ。


 数秒後、光が消えたと同時に謎の人物が中から現れた。

 その人物は背丈はヨウタと変わりないが、見た目はまるでテレビとかで見るヒーローのようだった。

 全身が主に赤く、顔はまるでバッタみたいだった。


「ホッホッホッ、変身できたゾイ。」


 ヨウタは自分の体を見える範囲で見た。

 そもそも目の前にはバイザーのレンズがあり、バイザー越しに体を見ている。


「こ、これは・・・。」

「それこそが、キミの力ゾイ。」


 お爺さんはニヤリと笑った。






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