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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

森の迷い家(もりのまよいが)

作者: 天野建
掲載日:2020/12/26

「すいません! 誰か!」


 男の声に老婆が家の奥から出て来た。


「どうなさった?」

「道に迷ってしまったようで」

「それは大変でしたな。どうぞ。お疲れのようだ。お茶を出そう」

「ありがとう」


 男は老婆に続き家へ入る。


「自宅へ向かっていた筈なのに、いつの間にか森を歩いていて。ここの藁ぶき屋根を見た時はホッとしました」

「ああ」


 囲炉裏が切られた部屋へ入ると、老婆は男の座る前にお茶を出した。

 男はごくりと飲む。

 刹那ぐにゃりと視界が歪んだ。

 咄嗟に閉じた目を開けた時、老婆はいなかった。

 代わりにいたのは。


「頼子」


 元婚約者。


「なぜここにいるのか? ふふ。貴方が聞きたいのは違うでしょ? 殺した筈の私がなぜいるのか? でしょ?」

「うわああ!」


 ニタリと笑った女に恐怖し、男は逃げた。

 何枚、何十枚の(ふすま)を開け、奥へ奥へ。部屋を駆け抜ける。

 息が上がった所でくずおれた。


 なぜいる?


「山へ捨てた筈なのに?」

「!」


 顔を上げた先。女が見下ろしていた。


「貴方言ってたわよね。痩せろって。山に捨てられたお陰で私、肉がとれたのよ」


 女の目、鼻、口から(うじ)が湧き出、女の体の肉が(ただ)れ落ちる。


「うわああああ!」

「見て。ダイエット成功」


 骨の手が男の足首を掴む。


「理想の女になったでしょ? もうずっと貴方から離れない。社長の娘になんて渡さないわ」

「放せ!」


「は~な~さ~な~い~!!」


「悪かった! 放してくれ! 何でもする!」


「本当か?」


 突如、老婆が姿を現す。


「お(ぬし)には二つの道がある。一つは社長の娘と結婚する。ただしずっと頼子は()いたままじゃ。今一つは自首して罪を償う。どうする?」

「自首すれば、頼子は離れるのか!」

「ああ」

「自首する! ずっと骸骨といるなんて真っ平だ!」

「ならば、そこの(ふすま)を開けろ。警察へと出る」


 老婆は一つの(ふすま)を指し示す。


「いいか? ずっと見ているぞ。もし約束を違えたなら、頼子は再びお前に()く」

「ああ!」


 男は一目散に出ていった。

 残されたのは、老婆と泣き濡れた女。


「さあ。お前ももうお行き。あんなつまらない男のせいで迷ってはだめだ」


 女は頷くと、スッと消えた。


 出世の為に女を殺したが、僅かな罪悪感からこの森に迷い来た男。

 最後は償う道を選んだ。

 間違えば死後地獄のような罰が待っていた。


 罪は必ず報いを受ける。

 それが(うつつ)か死後かの違いだけ。



 ここは迷い()。迷いがある者が訪れる家。

 正しき道を選べ。さもなくば、家の最奥が口を開く。

 開いて(なんじ)を飲み込むだろう。








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