プロローグ
ども、初めまして大変お久しぶりです。
名前、ちょっとだけ変えました。
今作は「そのままボードゲームにできるクオリティ」を目指して作っています。
至らぬ拙作かもしれませんが、対戦よろしくお願いします!
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
軽快に一度。
しばらくの沈黙の後にもう一度。
「……ぅ…………?」
そうだ。わたしは宅配のチャイムで目覚めたのだ。
サイドデスクの上にはウォッカやテキーラの瓶が数本、綺麗に空けられている。
そして、まるで子供が暴れた事後のように、多機能デスクの上はよだれとわたしが脱ぎ散らした服で悲惨な状態にあった。
うわっ、ばっちい。なんこれ? ん?……全裸??
……。
てか……なんで、わたし服脱いだし???
ぼけーっとデスクチェアの上。寝起きで呆けているわたし。
ピンポーンピンポーン、と玄関の音が警戒音に変わった気がする。
用件が何にせよ(案の定宅配であったが)ともかく待ち人を待たせるわけにはいかない。
「ぁー、ぁーー……ん″ぅ″ん……」
……どうやら昨夜は相当飲んだらしい。
喉が荒れている。のろのろと椅子を立ち一つ伸びをした。
ごそごそと新しい服を出して着替え……着ながら、横目でチラリと見たサイドテーブルには、普段飲まない、荒酒ばかりが並んでいた。
服を脱ぐなんて、未だかつて遭遇したことのないエキセントリックでファンタスティックな悪酔いの記憶は当然のように覚えていないのだが……どうやら、勢い余って悪酔いするまで飲むことになった経緯すらも忘れてしまったらしい。
「あ、……あれ? 二日……?」
幸いなことに頭痛も吐き気も感じない。
二日酔いのよの字もない快調な朝を迎えたわたしは、多少の違和感に首をかしげながら玄関へと向かった。
* * ** *
宅配の青年は顔を引き攣らせながら小包を渡してくれた。
チラチラとこちらを振り返りながら去っていく彼はだいぶ失礼な様子であったが。
よくよく考えてみると、散々待たせた挙げ句、ぼさぼさの髪、酒精の匂いを放っている、どこからどう見ても幼女にしか見えない風貌、すなわち、ロリババア属性(わたしの名誉のために補足しておくが、わたしはガチで26歳だ)を拗らせているわたしに、嫌な顔一つせず、あまつさえ、ぎこちないとはいえ営業スマイルを贈ってくれた彼は聖人君子に違いない!
おお、彼は天使か……。
と思ったけど。どちらかと言うと……彼はただ、幼女から酒精が漂うことに過敏に反応してただけかもしれない。
まあ、わたしは見た目だけは幼女だもんな。彼には子供に対する大人の対応を強要したようで申し訳ない。
いや、本当に……。
その後かかってきた児童相談所の電話をあしらいながら、わたしは届けられた小包とにらめっこをしていた。
むう。
差出人には見覚えがない。梱包を剥がした中身は、何か製品のパッケージの様であった。白い箱で上面にお洒落なクジラのイラストが描かれている。
えーと、しんかい……【深海公社】? あのVRの??
深海公社とは電子上の仮想空間へ五感を接続する技術、通称FVRを世界で初めて開発した企業だ。
現在は幅広い業界に対する仮想現実の導入に貢献しており、企業向けのハード開発をやっているイメージが強い。
「へー、これ最新型のVRデバイスじゃん」
さっとネットで調べて見ても、パッケージに書かれた型番より大きい製品は見つからなかった。つまり、これは最新型ということだ。
「…………」
というか、どれだけ調べても同じ型番が見つからない。
「え、え、え、?」
冷や汗がたらり・り
「あー!あー!あー!!
誰だ、こんな(意味のわからん)もん送りやがって!」
もう頭から完全に思考停止していた。
型番がない? 未発売のもの? そんなバカな。一体、どうやって?
混乱の渦中に思考はかき乱される。
どれだけ記憶を参照しても意思のある行動が取れない。
そもそも、これを送ってきた者は誰か。
抑圧は時に偉大な一歩を踏み出させる。
それは無意識に、
わたしはただ、なんとなく
白いパッケージに手を伸ばし、ひょいっと持ち上げた。
「……ん?」
両手で掲げた箱の下。その箱の裏面には一通の手紙が貼り付けられていた。……ベタか。
謎のVRデバイスに同梱されていた手紙とのこともあり、内容が気になる。
ゴソゴソと。
やり場のない気持ちを誤魔化すように座り直したわたしは、
箱の裏から取り外した手紙を開封し、神妙な顔で読み始めたのであった。
それが不可解な世界への招待状であった、なんてことは、その時のわたしが知るよしもないことであった……。
改行周りは後々調整する可能性があります。
(今後、修正などは該当ページで報告します)