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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第八十話 大スライム

 血しぶきとともに、槍が回頭する。

 剛力一閃。モンスターの壁に穴が開く。


『はぁはぁ。』


 やってくるモンスターは雑魚ばかりとはいえ、宇宙ダンジョンの時より密度は濃い。あの時は、休める時間があったけれど、今回は、ひっきりなしにモンスターが現れる。それもサトラの疲労に拍車をかけていた。血を流すモンスターが少なかったためか、「血槍姫」の回復もあまり効果が出ていない。

 それにしても流れている血が少なすぎる。何か別の要因でもあるのだろうか。


 そして、その上さらに、千樹を守りながらと言うハンディキャップ付きだ。

 サトラに限界が訪れようとしていた。


『まだまだ!』


 呼吸に喝を入れる。

 そう、まだ戦える。


 相手は強くてもLv300を越さない。疲労した槍捌きでも、問題なくあしらえる。



 それにそろそろモンスターの死骸でこの広場は溢れかえる。外からやってくる相手の侵入経路は乏しくなるはずだ。


 天秤の均衡はギリギリのところで保たれていた。



 だが、いつまで経っても、死骸で通路が埋まることはなかった。

 それどころか、死体の数がすごい勢いで減っている。


 なぜだろう。疑問を感じても、戦う手を止めることは許されない。

 そうして溢れかえっていたはずの死体は全て消え去った。



 代わりにそこに現れたのは、巨大なスライムだった。


『こいつのせいか!』


 死体漁りよろしく、全ての死骸を吸収してしまったのだろう。なんなら、生きているモンスターまで吸収し始めている。あの体に触るのは不味そうだ。


『結構手強そう?』


 とはいえ、全方面からの圧力と言う訳ではなくなったので、サトラは一息つくことができた。


『核を貫けばいけると思うんだけど、ここまで大きいと見つけるのは難しい。』


 冷静に状況を分析する。


『とりあえず火魔法で!』


 死体に燃え移ると面倒だったので封印していた魔法を解禁する。


 彼女の手から炎が鳥のような姿で飛び立ち、着弾する。


 効いている?


 デカスライムは少しのけぞった。


 表層が焼け焦げている。だが、それはスライムの体から見れば数%にすぎない。


『大きすぎる。』


 サトラは歯噛みする。


 せめて核さえ貫ければ。


 だが、見つからない。

 巨大な質量の中に隠れている核を見つけるのは、砂漠の中で砂金を見つけるようなものだ。

 相当な幸運がなければ難しい。



 相手の動きは遅いようで助かっているが、決め手がないのは良くない。


 対応に苦慮しているうちにスライムの体が泡立つ。


 ぼこりとそこからバブルが放出される。


 軽快なステップで避けるサトラだったが、バブルの当たった壁を見てゾッとした。


 溶けている。あの頑丈なはずのダンジョンの壁が。


 食らったらサトラといえど無事では済まない。


 彼女は気を引き締め直した。



 ●


 ひたひたと足音が迫っている。

 そんな強迫観念がする。


 モンスターの群れの行く先を目指して歩みを進めた俺たちだったが、その道のりはどんどん不吉なものになっていった。

 おそらく一階層降りたのだろう。先程までのようなひらけたダンジョンは消え、いつもの暗い、ジメジメとしたダンジョンが俺たちの前に展開している。


 そこかしこにモンスターの気配がある。それなのに、何とも遭遇していないのがなんとも不気味だ。


 この先に目指す人はいるのだろうか。


 そんな不安までむくむくと膨れ上がってしまう。


 首を振ってそれを追い出した。


『んー?どうしたの、直方?』


 そんな俺に感づいてレンさんが横から覗き込んでくる。


 綺麗なのは知っているのでそんなに顔を近づけないで下さい。


「モンスターがいないな。」


『確かにね。うじゃうじゃいたはずなのに。』


 レンさんは疑問に合わせて首をひねった。


 そう。二人と合流するまでは、どうしようもないほどエンカウントしたし、レンさんと出撃してからも、たくさんのモンスターと出会った。

 社歌からの報告だと、ブラブラと歩いていればエンカウントするくらいのモンスターがいるらしい。活発なダンジョンと比べても二倍以上のモンスターエンカウント率だ。


 このダンジョンの性質を考えれば、これでも少ない方なのかもしれない。ダンジョンマスター同士を戦わせて成長を促す。蠱毒のような今回のダンジョン。そしてその作り主である女神のことを頭に思い浮かべる。


 無事突破できても、あの女神を騙して帰還することができるだろうか。ダンジョンマスターたちを取りまとめる女神なんだから、それを攻略しようとする俺たちは殺される可能性だってある。



 あー。もう。


 弱気になるな俺。生きて帰って、両親に無事を報告しないと申し訳が立たない。

 それに何よりまだサトラと会えていない。それまでは俺は死ぬわけにはいかない。

 サトラとともにある日常へ帰るんだ。




 さらにモンスターの気配が濃くなってきた。

 慎重に進もう。


 そろりそろりと歩みを進めて、大部屋らしきものの前に着いた。


 あたりは不気味なほどに静まり返っている。


「あそこが怪しいと思うんだが。」


『奇遇だね。私もだよ。』


 互いに頷きあう。


「俺が先に突入する。レンさんは、後ろの安全を確保して欲しい。もしサトラじゃなければ全力で逃げるから。」


 この部屋にいる相手は、これほどのモンスターの気配を全て、沈黙に変える力の持ち主だ。

 警戒しすぎるということはないだろう。


「じゃあ、任せた!」


 真剣な顔をしたレンさんの同意を得て、俺は大部屋に突入した。




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[一言] カイザーフェニッ…げふんげふん
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