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花菖蒲のほとり  作者: B星
第?章
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 ###. 光の粒


 真っ暗な空間に、無数の光の粒。


 光の粒は規則正しく並んでいる。よく見ると台座の上に水晶のような球体がのっていて、その球体が光っている。球体の中でキラキラと舞う光は、雪のようで雪ではない。ひとつひとつが様々な光景を映している。


 ここは、人間から生み落とされた『世界』を管理している場所。『世界』は、小説や漫画、ゲーム、歌――人間がつくった物語から生まれている。形になっていない、ただの想像から生まれることもある。


 その生まれた丸い『世界』を、台座にのせて並べるのが私の使命。


 私は管理者。ここにある無数の『世界』を見届けている。


 この『世界』、ひとつの物語からひとつのみ、ではない。ここに並んでいる『世界』の中には、同じ物語から生まれた、異なる『世界』が数多ある。


 その誘因は大きくふたつ。


 物語にない部分でも、創造した人間が設定していることであれば、ほぼその通りに生まれる。それ以外――未設定の部分は()()される。


 補完には、物語を受け取った側――読んだり聴いたり観たりした側の想像が影響していることが多い。非常に珍しいことだが、この想像が、創造した人間の設定をうち壊すこともある。


 この補完の内容の違いが、同じ物語から生まれても、異なる『世界』になる誘因のひとつだ。


 もうひとつは私――私が選んだ魂の影響。


『世界』を台座にのせて並べると、水晶のような球体が輝き『世界』が動き出す。しかし稀に、『欠けた世界』が生まれることがある。台座にのせて並べても、動かないものがそれだ。


 動かしたいときは、人間の魂で欠けを埋める。魂は無作為に選んでいるが、ひとつだけルールを設けている。肉体をもつ『せい』の魂には手を出さない。生きている人間から刈りとったりはしない。


 生を待つばかりの無色透明な魂。最期を迎えたばかりの色鮮やかな魂。最期を迎えてからしばらく経ち、色鮮やかから無色透明へ――初期化中の魂。


 誘因となるのは、色づいた魂だ。記憶や知識などで色づいた――『前』を覚えている魂は、『世界』に影響を与える。『世界』で生を受けたものの、拒絶反応を起こし全うできず、それが影響する場合もある。特に初期化中の魂はもろく、馴染みにくい。


『世界』の()()()も様々だ。物語の終わりと同時に終わることもあれば、続くこともある。


 光を失った『世界』を台座から外すと、球体が消滅する。サラサラと砂が落ちるように、蒸気のように、すぅっと消えるように、弾けるように。消滅の仕方も多種多様だ。




 ここに、色鮮やかな魂と初期化中の魂で埋めた、『欠けた世界』だった『世界』がある。


 ふたつの魂は『世界』で生を受けた。片方の拒絶反応がひどいことに気づき、少し手を加えた。


 手を加えたのは気まぐれだ。『世界』は無数にある。拒絶反応に気づかないこともあるし、気づいてもそのままにすることがほとんどだ。その影響で『世界』が物語よりも早く終わってしまったとしても、それはそれ。そういう『世界』だっただけのこと。


 球体の中でキラキラと光が舞う。


『世界』は煌々と輝いている。


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