2
アオイは成績優秀者で、スポーツもできる。
家柄も申し分なく、母親なんて教育委員会を勤めているぐらいだ。
まあ学校にいる限り、彼に逆らうなんて誰も出来ないだろうな。
彼は―小賢しいから。
移動教室の時間になり、近くにいた仲の良いコに話かけようとした。
けれど彼女は顔をそむけ、他のコとそそくさと行ってしまった…。
彼女は昨日、いじめる側にいたからなぁ。
気まずいんだろうな。
「あれ? 一人?」
アオイがまた声をかけてくる。
「うん。先に行かれちゃった」
「じゃあ、僕と一緒に行こうよ」
「お取り巻きは?」
「先に行っちゃったよ。薄情だよね」
彼は困ったというように笑い、肩を竦めて見せる。
―ウソ、だな。
でも一人で移動はさみしい。
「なら、一緒に行きましょうか。昨日の話の続き、しましょう?」
「いいねぇ。楽しく移動できそうだ」
そして二人で移動した。
…その後もクラスメート達からは無視され続け、何故かアオイだけが話しかけてきた。
……新手のイジメの形なのかしら?
頭を悩ませている間にも、アオイは話しかけてくる。
彼と話をするのは楽しいので、わたしは彼を受け入れていた。
―が。
上履きが無い。
ノートに落書きされた。
運動着がゴミ箱へ。
黒板に誹謗・中傷が!(しかもエッチなこと)
………イジメの王道だ。
ちょっと思わず感心してしまう。
イジメをするのも、知識や行動力がいる。
ある意味、勇気ある行動だな。
でもイジメをされるたびに、彼が…アオイが助けてくれた。
なのでプラスマイナスゼロってカンジで…何だかスッキリしない。