馬鹿なの、××の?
実家の母に紹介する為に秋田への旅行を3ヶ月前から計画していたのにだ。
なぜこいつは穴のがあいたと言うより、ぶさぶさに切れててボロボロの作業着のズボンを履いてきているのだろうか。
「え?なんで?紹介する予定だよ?」
「え?駄目かな?」
駄目に決まってんだろが!と説教かましたいが、まだ旅に出る前なんだよね、待ち合わせして会ったばっかり。
「・・・・」
「・・・・」
今から帰ってもらうのと、当日キャンセルのホテル代、レンタカー代、往復の旅費を考えた結果。
ポクポクポク・・チーン!
こんなことで自分が怒ってしょっぱなから空気悪くするのもなと思いぐっと我慢して話す。
「まぁ仕方ないね、向こうで買うかー」
「俺そんなに持ち合わせない・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
なんなの?こいつ馬鹿なの?旅行は3ヶ月前から決めてたじゃん、準備とかさぁ・・いや・・馬鹿だ、こいつはめっちゃ馬鹿なんだ。わかっていたけどここまで馬鹿だと思ってなかった。
ふっと力を抜く。
「うちが買うよ・・」
「すまない・・」
※※※※
秋田に着いた、無難なショップに入ってメンズを見る。
「これとかどうかな」
「えーこうゆうのはいたことないからなあ、これは?」
いやそっちは値段が倍なんだけど・・・・。
値段と相談して勧めたんだけど。
おまえそれ言える立場じゃ無いんじゃんとモヤモヤが、なんかケチ臭い自分が嫌になってくる。
そんなに金持ちなわけないし、むしろ貧乏だしこの旅行の為に1年コツコツ貯めたので来てるんだけどね。
どんどん嫌な思考回路になる。
まあ、お腹空いてるからかな・・。
「ご飯食べようか」
「・・だな」
秋田名物稲庭うどん、久し振りに食べたかったからね。
ちょっとテンション上がる。
「あー俺水でいいや」
「は?」
「え?所持金いくらなの?」
「・・二千円」
「・・・・」
「・・・・」
もっかい言うけど、急に決めた訳ではない。
ちゃんと計画立ててた。
「え、一泊二日なんだよ?知ってるじゃん」
「うん」
「なんで二千円なの?」
「いや、昨日弟に金貸して」
「・・・・」
「・・・・」
あんたの弟はパチンコで金無くなったからだよね。
弟にいい顔して金貸すくらいなら、断ってもらってアタシにいい顔してほしいんだけど。
あ、心の声が言葉ででてたみたいだ。
「・・すまない」
「いいよ、もう・・一万貸すってことで残りの飲食代、それから出して」
「うん、ほんと悪い」
なんか、お通夜みたい、ついでにアタシ悪者な感じなんだけど。
旅行めっちゃ楽しみにしてたのになあ・・。
要所要所で水をさされる。
実家の母に会って、紹介して、ちょっと観光して。
モヤモヤしたけど一緒にいたら、まぁいっか、になる訳で。
※※※※
「やーやっぱり新幹線はいいねー」
「だな、行きの深夜バスはキツかったなー」
「だよねーあれは辛かったね」
あ、そうだ新幹線降りたら乗り換えだったな。
「あ、切符代とか大丈夫?」
「は?」
「ん?」
「ん??」
え?なんで急に怒ってんの?
「え?どしたん」
「うるせーな、俺停車駅で降りるわ、電話して親父に迎えにきて貰うわ」
「・・・・」
「・・・・」
切符代ある?で切れたらしいが。
彼のプライドをいたく刺激したらしい。
二千円しかもってこなかった癖にだ。
今更な上に、どうもズボン買ったのも、お金貸したのも、こいつからしたら当たり前の事のようだ。
急に白けた、色々な感情があったけど。
「あのさあ、一泊二日にさ二千円しか持ってきてなくて、ズボン買ってお金貸してさ、最後に切符あるって聞いたらさ、なんでそこまで切れられなきゃいけないの?、あたしなんか悪い事した?
むしろ、色々気をつかってたんだけどさぁ」
「・・・・」
「帰りたかったら帰ったらいいよ」
「・・・・」
はい、出ました、無言。
別にいいけど。
座席で携帯いじってたら、荷物持って席を立った。
旅も最後だし、もう気をつかわなくていいよね。
思わず、ふーーってため息ついた。
暫くしたら、もそっと座席に戻ってきた。
「・・ごめん」
「うん」
どうせ、親に電話して断られたんじゃないの?
とは、言えない。
それーはー、言えない。
断られたとしてもおくびにもださず、『俺は反省したから戻ってきてやったんだ』っていうポーズを大切にしなければいけない。
くそ面倒くせー男だな!ハハハ!
ほんと、なんで付き合ってるんだろ。
ほんと、アタシ、馬鹿なの死ぬの?