表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/80

第2話 異世界へ

 それから3日間の事はあまり覚えていない。


 あの後、兎に角警察に助けを求めたが信じてもらえず、逆にクスリや思春期特有の病気を疑われる事となり、ユイ博樹ヒロキの両親と連絡を取って警察署へと来て貰い ついでに俺の親も呼ばれる。


 未成年の供述なんてものは所詮たいした発言力を持たない為 仕方ない。


 というか、こんな荒唐無稽な話などこの場に集まる 誰一人として理解なんて出来なかった。 調書の最中もあの光景が現実離れし過ぎてて 段々と説明が二転三転とし出し、俺自身も夢か現実か釈然としなくなって行った。



 結局、警察では証言に整合性が取れない為2人は只の失踪として処理された。



 2人の両親は連絡の付かない我が子に直ぐに捜索願いを出し捜査を依頼。 俺も落ち着いてからもう一度改めて事情を説明して貰うとの事で一旦帰宅を促された。


 その際、ユイの母親に血の気の引いた俺をとても心配してくれたが 何も言葉を返すことが出来なかった。




 俺は帰宅と同時に強烈な睡魔に襲われ そのままベットに倒れ込んだ。



 その翌日俺は熱を出し、意識朦朧としている所を心配して様子を見に来た妹に発見された。


 家族に抱えられならがら辛うじて病院へ行き 医者に肺炎の一歩手前だとか言われたらしいがあまり覚えていない。

 こうしてこの日は熱にうなされながら1日が過ぎて次の日の昼頃にようやく動ける程度に回復する。



 今、俺は家のリビングのソファーに腰掛けテレビをぼんやりと眺めていた。



 既に日は傾き、昼の静けさが過ぎ去って、子供達が家路へを向かう騒がしい笑い声に包まれた時間。


 テレビでは消えた東高の修学旅行生の報道が流れているがあまり進展は無いのかフェリー会社の危機管理問題ばかりが取りだたされていた。


 結と博樹が探していた他校の親友達…


 そして光る魔法陣と目の前で消えた2人…



 何もかも悪夢の続きを見させられている気分だった…




 「ただいまぁ、 お母さ〜んお兄ちゃん大丈夫?…って、お兄ちゃん⁈」


 「おかえりー。母さんなら今買い物に出掛けたよ」とソファーにもたれ掛かったままの姿勢で帰ってきた妹のヒナタを出迎える。



 ヒナタは俺の1つ下の妹で今年から同じ高校へ通うことになったカワイイ妹である。


 高校生だというのに見た目は小さく、小学生と間違えられる事を本人は気にしているが俺からすればそれもヒナタの魅力の1つだと言える


 そんなヒナタとも最近はあまり会話らしい会話も少なくなった 思春期真っ盛りの俺達には年相応な関係性になったという事だろうか。



 「も、もう大丈夫なの?ビックリしたんだからお兄ちゃん、いつもなら起きて走りに行ってるのに起きてこないから…」


 「そういやヒナタが俺に気付いてくれたんだってな。悪かったな、心配掛けた。」


 「いいよ別に。それより、ホント…あの、なんて言ったらいいのか…」

 そう言って安心した途端に気まずそうにし出しすヒナタ。


 まぁ、気持ちは分からなくないが、俺も何て返せば良いのか困ってしまう。

 いつもならそのちょこんと可愛らしい鼻先でも摘んでからかう所なんだけどな…



 「俺はもう、大丈夫だよ。それよりあの2人の事、学校では…みんなは何か言ってないか?」


 起きてから俺は母親に2人の失踪に進展はない事を聞いていた。 なので学年の違う妹に学校での生徒達の様子を確認する為聞いてみたのだか、その途端ヒナタの表情は更に悪くなって行った。



 「えー…と、その…ねぇ、なんて言うのかな…」



 「あぁ、何となく今ので伝わった」


 答え辛そうにするヒナタの肩をポンポンと叩いて先を促す。


 「うん…。えっとね皆、結さん達がお兄ちゃんから逃げたって…ホントは2人が好き合ってるって…違うって…!…わたし…そうじゃないって…!」



 俯いて手を握り締めるヒナタ。その姿を見て俺もやるせない気持ちになる。


 「悪かったな、気を遣わせちまって。俺の説明じゃ誰も納得なんて出来ないしな、俺自身見た事が現実だったかどうかわからなくなってるし」


 人の口に戸は立てられない とはよく言ったもので真相がはっきりしないこの状況は思春期真っ盛りの生徒には刺激的な他人事なのだろう。



 少し目を拭いながら顔を上げたヒナタは俺の話を聞いて来た。


「お兄ちゃんは、2人が居なくなる所を見てたんだよね?」


「ああ、けど現実離れ過ぎてて今じゃ自分でも 夢でも見てた気がするよ」


 俺はそう言ってあの日見た光景をもう一度ヒナタに説明する。




 ヒナタは黙って俺の話を聞いた後、少し考えながらそれでも強い意思を伝える口調で話し始める。


 「正直、わたしも今の話で何が分かったとも全部を信じられるとも言えない。

 けど、2人の居ないこの現状を伝えられるのはお兄ちゃんしかいないんだよ。お兄ちゃんが自分を信じなくちゃ 2人が消えた原因はずっと分からないままかもしれないよ。」


 ヒナタにそう言われて俺は得心する。



 本当は、ずっと不安だった。誰も信じてくれない現実に心が折れ掛けて俺自身が誤魔化そうとしていたのだと気が付いた。



 俺が信じなくて誰が信じると言うのか。



 ヒナタの言葉に勇気付けられる。 俺が俺を信じなくちゃ2人が消えた理由も嘘になる。

 どんなに現実離れしていようと此処で日和ってはいけない気がした。


 歩き出し、ヒナタの頭を撫でてお礼を伝える。



 「ありがとなヒナタ。お前の言葉で元気出たよ」


 「ううん、どういたしまして。」



 目を細めて満足した様な表情のヒナタ

 その顔に安心し俺は玄関に向かう。


 「お兄ちゃん、今から出掛けるの?まだ身体の調子戻ってないんでしょ?」


 「だいぶ良くなったし、ちょっと散歩してくるよ。何日も身体動かさないと落ち着かないしさ」



 靴を履きながら言い訳の様に答え 玄関の扉に手を掛ける 後ろから、あんまり無理しちゃダメだよ。と心配の声を掛けられ俺は口元を緩める。


 「…行ってきます。」


 「行ってらっしゃい」





 これが家族との最期の言葉となった。




 夕暮れの中 俺は1人あの日、2人が消えた現場に立っていた。

 民家の立ち並ぶなんの変哲も無い路地


 あんな事が起きたとは今でも信じられない。 それでもあの日、ココで起きた事は現実だった。

 嫌という程に


 思い出す。光の魔法陣と2人の姿を。



手を伸ばしても届かなかった…



 沈黙を続ける情景を睨みつける。


 何か少しでも何か無いのか⁈


 何か見落として無いか、そんな切望を込めて何も無い景色を睨み付ける。



 …フ、と気付く。何も無いはずの()()に、その景色に違和感を感じる。

 よく見てみると魔法陣の有ったと思われる空間の景色が縦に少しズレている。

 まるでそこを無理矢理繋ぎ合わせた様な違和感 気が付くと無意識にソコへ手を差し出していた…



 バチィィィッ!!



 瞬間、電流でも流された様な鋭い痛みが走り、咄嗟に手を離した。


 触れた指先を見てみると触れた箇所の指がデジタルノイズの様に明滅していた。

まるで指の部分の映像だけ壊れた様に視える。


明らかな異常を感じながらも俺は違う思考に意識が傾いていた。



 …まだ…繋がっている‼︎


 何故そう思ったのかは分からない。けど何か直感的にそう感じた。消えた2人の行き先、それがこの空間の亀裂の先に在るのだと。


 バリバリバリッバチィィィ!!!

 痛みすらかなぐり捨てて俺はその亀裂に腕をねじ込む! 強烈な拒絶感と電流が身体を暴れ回るが知った事かと! 意識が遠くなりそうな絶望感を堪え一歩、また一歩、と前へ進む。

「っつ!…ぐっ…あ…あぁぁぁ!!」

 絶叫と共に足を踏ん張りもう一歩。


 頭の中を支配するのはあの日のゆいが見せた顔と伸ばした指の先…

 あの時、届かなかった手を今度こそ必ず掴んでみせる…!


「今度…こそ…こん…ど…こ、そぉぉ!!」


 轟音と共に俺は遂に亀裂の中へと入った。




 其処は真っ白い空間だった。


「ここ…は⁈ …⁈」


 自分の声に驚く。まるで声が大気に留まっている様なそれなのにどこまでも響き渡ったかの様な感覚。自分の声が身体の中だけに反響されたみたいな感覚、水の中で声を出した感じに似ていた。


 遠くから光の塊が此方に飛んでくるのが見えた。

 そう思った瞬間俺は光に包まれた……



 眩しさに眼がぼやけ立ち尽くす…



 …暫くすると段々と視力が回復して来た。


 ようやく目が慣れた頃、そこに映っていたものは土と石で出来た壁だった。


 少し薄暗いのは何処かの路地といった風景。先程まで居た俺の住む街ではない場所。




 俺は亀裂の先へと辿り着いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ