第1話 異世界転移
初めての執筆です。拙い文章ですが気楽に読んでください。
「あの大物アイドル捕まったんだってっ」
「えっ、マジで⁈ 何やったの?」
「JKとヤったらしい」
「げぇっ⁈あの人ウチのパパと歳そんな変わんないよ⁈……ないわ〜…」
高校生活の変わらない日常。
特にこれと言った特筆すべき事件も、思春期特有の夢見がちな幻想も、何も起きない日常。
いつも通りの3人。中学時代から続く変わない放課後だ。
まぁ少なくとも高校を卒業するまではこれが俺達の日常であって欲しいとささやかに思っていた…
「てゆーか、東高の失踪フェリー。続報ないの?何か学校全体で緘口令出されてて私の情報網じゃ全然手応えなくてさ」
彼女は名は早井 結。肩まで伸びたセミロングの髪に活発的な顔立ち どこかのアイドルグループに在籍しても引けを取らない程の美少女だ。
お互い中学から意識し合っていたが結の方から高校入学と同時に告白され、晴れて恋人同士となった。
「いや、今の所報道されてる以上の進展はないな。保護者会も混乱しててまともに機能してないし、東高の掲示板もゴシップだらけであまり建設的な意見がない」
「そっかぁ、ウチのリーダーとスタメンが4人もいきなり居なくなったから今度の大会、もぅ絶望的なのよね…」
結に返事を返したのが厚木 博樹。
他校にも知り合いが多く誰とでも直ぐに打ち解ける才能を持った情報収集の天才で俺の数少ない理解者の1人だ。
何気に爽やかイケメンで保護者にもファンが居るらしい。
俺も親友じゃなけりゃファンの1人として草葉の陰で乙女チックにモジモジしていたかもしれない……丁度あの陰に居る子の様に…
ってマジでいたよ⁈…一瞬幽霊でも居るのかと思ったわ‼︎
因みに結はここらでは結構有名なダンスサークルに所属しており、そこでサブリーダーなんて大役を任されている。
メンバー達から相談などを受けて、慕われる"頼れる姉御"的存在というから流石は俺の彼女。出来る女というヤツだ
その調子で将来俺も尻に敷かれるのかと遠くない未来を想像してみる…… 案外良いかもしれない…俺って主夫向きだからね!
まぁ、そんな思春期特有の夢見がちなキモい勝利のイマジネーションを想像している俺は翼希 創介
成績は中の下、友達少数。人よりちょっとだけ体力に自信のある何処にでもいる普通の男子高校生だ。
…若干2人とのスペックの違いに格差社会の縮図を感じる今日この頃。
そんな俺達は今、とある事件に少なからず関わっている。……さっき特筆すべき事件も無いとか言っといてアレだが……実はあった
2日程前、俺たちが通う公立中央高校のお隣さんである公立東高校の修学旅行生120名を乗せたフェリーに搭乗していた120名全員が出航間も無く忽然と姿を消した。
沖合い直ぐの場所にフェリーだけが座礁しているのが見付かるが中の乗員乗客は1人も見つからなかった。
テレビやネットはこの消失事件を"現代の神隠し"などと揶揄して現在進行形で流言飛語を飛び交わせている。
その中に、結と博樹の知り合い達も数名巻き込まれて居るらしく……2人は少しでも正確な情報を得ようと知り合い関係を当たってはいるが憶測や真偽不明な情報ばかりで未だ要領を得ていない。
……まぁ、俺達って言ったがぶっちゃけ俺はこの事件に関わっていなかった。……友達少ないからね…
「これはアレだな、今流行りの異世界転生ってやつだな」
適当に今流行りの小説とかで聞き齧った様な事を言ってみると2人にやや冷たい視線を送られる……
やめて!そのどうしょうもない奴を見つめる視線は!ちょっと言ってみただけです!ごめんなさい‼︎
「創介それは違うぞ。転生とは生まれ変わり。つまり死亡や事故でこの世界から離脱している状態で無ければ起こり得ないんじゃないか? この場合、転移もしくは召喚と表現するのが正しい気がするが?」
あ、そうなの? 聞き齧った程度の知識でゴメンねっ! ゴメリンコ♪
自分の頭をコツンと叩きながらペロっと舌を出して戯けてみせる俺…
「厚木君、そこ冷静に分析するトコじゃないから…創介も舌出してキモい顔しないでよね」
スミマセン…キミノ彼氏・顔・キモクテ……
少し居た堪れない気分になったので俺は手提げ鞄からミントタブレットを取り出し齧って気分を変えようと鞄を漁る……
そこで何時もは入っている筈の弁当箱が入ってない事に気付いた。
「ヤッベ!弁当箱、学校に忘れて来た⁈」
「あ〜、不味いねそれ、美咲さんこの前今度忘れたらぶん殴ってやるって言ってたよ?」
結が何故かナチュラルに俺のママンと俺の居ない所で会話してるよ?
ってかぶん殴るってなに⁈ カーチャン家庭内暴力をよそ様に言い触らさないで⁈恥ずかしいから…
「おぉぅ…マジか…悪いけど学校へ取りに戻るわ」
「もぉ〜!じゃあまた夜に電話するから、寝てたらダメだかんね」
俺の腕の裾を摘んでリスみたいに頬を膨らませ上目遣いに覗いてくる結……
全くもって拗ねた表情も可愛らしい。
こんな可愛い子の彼氏になる奴はきっと幸せ者だね!
俺のことだねっ!
「…っち、リア充共め!」
博樹の嫉妬が心地いい。
俺は博樹に向かってもう一度テヘって舌を出しておどけて見せる…
「キモっ⁈ …まぁいいよ、お前も1人で帰るんなら気を付けて帰れよ。間違えても異世界召喚なんかされるなよ」
「そんなわけあるか!何で弁当箱取りに異世界まで行かなきゃならんのよ⁈」
本日2人目のキモい奴発言に内心傷付きつつも元来た道を戻ろうとする俺に博樹が続ける
「俺はお前なら異世界へ連れて行かれてもおかしく無さそうだと思うよ」
何その意味不明な評価?
ってか変なフラグ建てんなよ。
振り返らずに手だけ振って返事をしながら学校へと戻る…
…そこから100m程離れた頃、結達の方から上擦った短い悲鳴の様な声が聞こえた……
「キャッ‼︎ な…何⁈ 何なのこれ⁈」
「うわっ‼︎ 何だ一体⁈」
驚いて振り返る俺の目に飛び込んで来たのは……腰辺りの空間から浮き出ている円形の光だった……
そこから伸びて来る光るツタの様な物に絡み取られている2人の姿……
⁈ 何だアレは⁈
それは幾つもの光の円陣……そこに描かれている六芒星の様な紋様の中には幾何学文字のみたいな物が隙間なく描かれていて……まるで何処ぞの漫画やアニメに出て来そうな魔法陣といった光のオブジェだった。
「そんなまさか⁈ありえねぇだろっ‼︎」
さっきの馬鹿げた会話を彷彿させる光景
背筋を駆け抜ける嫌な予想に俺は咄嗟に走り出した。
理解不可能な現象に思考が追いつかず、頭に浮ぶの事は "結達が連れて行かれる"や "本当にフラグ建てんじゃねぇ!"とか "とにかく助けなきゃ!"と声にも出せず言葉だけが浮かんでは消えていた…
『⁈ 創介!!!』
2人の叫び声と結の求める様に伸ばされた指先…
既に2人の体は半分ほど魔法陣らしき物に吸い込まれ腕や身体には何本もの光のツタが絡み付いている。
届かずとも手を伸ばし2人の名を叫びながら必死で駆けて行く俺…
それでも少しずつ…2人の体は光へ溶け込んでしまう…!
涙に濡れた結の顔が消え……やがて…伸ばした指先はあと数歩のところで完全に見失ってしまった……
「うそ……だろ……⁈………」
俺は……行き場を失った自分の手の先と…2人が消えたその空間を見つめ…ただ立ち尽くす事しか出来なかった……