第5話 くらき"闇"の魔法使い
"闇"とは、深き黒……
当たらずとも遠からず、なんて言葉があるが、これはそれどころでは無い。
黒色の代表的な属性、それは"闇"だ。
そして彼女も、魔女の中では最も黒い気配と密接な関係を持つ存在だ。
魔法都市〔セブンス・ベル〕の次期七聖魔法士の選定は、決して世襲制では無い。才能の有る者なら、誰でも可能性は有る。だが、さすがに属性までは選べない。
それは宛ら、生まれてくる子供のような、その時の適合した魔法で決まる。
ある諸事情により、光と闇の魔法使いが引退する事になった。その為、魔女達は急遽都市の人間の中から新しく魔法使いを捜して選ぶ事になる。
そこへ、ある一人の男性が魔女達の元を訪ねて来た。
「私の家の娘二人、きっと魔法使いになれると思うのです。どうか、見ては頂けませんか?」
男性が連れて来たのは、二人の女の子。一人は黒髪で感情の少ない子、一人は金髪でとても穏やかで豊かな感情を持つ子。魔女達からすれば、見るまでも無かった。見るまでも無く、選定が完了した。
適合する魔法は見た目通り、金髪の子が光で、黒髪の子が闇。体から流れる魔力の要素から見ても、金髪の子は全魔女の中で最も綺麗で、黒髪の子は全魔女の中で最も妖しかった。
彼女達姉妹の素養は、元々が名門魔法使いの家系と言う事もあり、直ぐに己の属性に覚醒し、間も無く新しき七聖魔法士として迎えられた。しかし、彼女は、新しい闇の魔女は、納得がいかなかった。
自分だって、光の魔女になりたかった。もしかしたらなれたかもしれない、なれたかもしれないのに、何故私の中には、こんな淀んだ魔力が流れているの? 何故私の感情は、こんなにも冷え切っているの?
どうして……どうして……
『ルーチェ、貴方は私に、呪いを』
『そんな! 闇の魔女であるお姉様に私の魔法は苦痛以外の何物でも無いのに!』
『良いの……私が一番苦しんで、他のみんなが少しでも楽になるなら、構わないわ。少しでも、誰かの役に立ちたいって思って、ずっと生きてきたから……これで良いの』
嗚呼、私の妹ルーチェ……光の魔女、ルーチェ。魔女になる前から、いつも貴女の眩しさが、私はずっと羨ましかった。いつも優しくて思いやりのある子ルーチェ……私も、貴女の様な、光溢れる魔法使いに────
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「────んで、どうする?」
活躍が幻真とアルマに問い掛ける。地面には光の球体から解放した黒髪黒ドレスの女性が横たわっている。幻真はソッと、女性から距離を置くように腕を真横に開いた。
「離れてろ」
「ん? 何で? この人多分だけど魔女だろ? 保護しろって言われたじゃんか」
「幻真、何か知ってんのか?」
「あぁ、だからだ。────来るぞ!」
幻真が言葉を言い終えた瞬間、黒髪の女性から禍々しいほどの黒い流れが全体に表出する。夥しい量の黒い流れ……その範囲は、周囲100mを容易に覆い尽くす。
黒い流れの表出と同時に驚きを交えながら三人は飛び退いた。一度同じ黒い流れを見た事がある幻真からして、この範囲は明らかに異常だった。
天の魔女と相対した時、黒く妖しい流れは、表出してる対象を異質と捉えられる程判り易いものだ。
それは確かだ、確かなのだが────
『アアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ…………!』
これは何だ!?
形容に用いる言葉に『禍々しい』と足せるほど、この気配は妖し過ぎる! この魔女、一体何だ!?
何なんだ!?
「うわ……これ、マジでヤバそうだな……」
「あぁ……俺が最初に相対した魔女は、"天"に属する魔法使いと言っていた。オマケに7人の魔女って事は、それぞれ7つキッカリに属性があるって事だ。察するにこの魔女の属性は、より黒い流れと同調し易い属性、つまり────」
『ツマリ"闇"、ご明察ト賞賛したいワネ』
確実な知識の理解が有ったワケでは無い。なのに、態々黒髪の女性本人が肯定してくれた。確かめるまでも無かった。それを、幻真は黙認し、活躍は敵を見据え、アルマは……アルマは……
「うわ!? 喋るのかよ!?」
────緊張感の欠片も無かった。
「テメェ、今どんな状況かわかってんのかよ」
「おいやめろ! 構う相手を違えるな!」
アルマの様子を見て活躍が怒りを滾らせて迫るが、幻真が押さえて宥める。そんな二人を他所に、アルマは黒髪の女性に向かって歩き出し、言葉を垂れ流す。
「緊張してどうすんだよ? リラーックス、リラーックス」
そこへ、黒い流れの表出を抑えて、黒髪の女性がアルマに歩み寄る。
『アナタ、オモシロイわね。気ニ入っタ……私ノ名はオンブラ・アイゲングラウ、"闇"に属スル魔法使い』
闇の魔女、オンブラはアルマとの距離を詰め、手を伸ばせば触れ合うまで近づいた。立ち止まると、二人は睨み合った。オンブラとアルマは、共に僅かな微笑みを浮かべながら互いを見ていた。
「あの野郎、一体何がしたいんだかわかんねぇなオイ」
「取り敢えずアルマを支援するぞ! 魔女は未知数の実力だが、確実に言える事がある。それは────俺達より強いって事だ……!」
幻真が警告を活躍に発すると、突然アルマとオンブラから途轍もない爆発が起こる。既に戦闘は始まっていた。アルマはどこから出したかわからない身の丈近い大剣を構えて振り被って、オンブラはそのままの右手を振り被って、一気に叩き付ける!
これにより生じたのが、幻真と活躍が見た爆発だ。そしてこの一撃が、同時に開幕の合図。目前で行われる高速戦闘を繰り広げるのは剣と手────ん?
おかしい。刃物に対して素手とは、例え魔女であろうと正気の沙汰では無い。だが、あろう事かこの闇の魔女、アルマの携える大剣に素手で、ただの素手で、何の変哲も無い素手で応戦している。
「おかしいねぇオイ、あんたの手どうなってんの?」
『オカシイわネぇ、アナタの剣、随分と鈍過ギない?』
アルマの持つ大剣は『大百足』と呼ばれる魔の大剣だそうで、魔力を用いて振るうと、剣の刃が文字通りムカデの足が如く動き、チェーンソーの役割を為して斬れ味を増すとの事。大剣は"独特の奇怪な音"、略して"奇怪音"を発している。
どうやら大剣の刃は駆動している様子だが、それなら尚更妙に感じて然るべきだ。
闇の魔女の手には、何の作用も見られない。黒い流れの表出は見られるが、それは飽く迄『流れ出てる』だけと捉えた方が良いだろう。ならば一体、彼女の手には一体何が、何の謎が有るのか?
「言ってくれるじゃん魔女様、ならばこいつを使わざるを得ないよね〜」
軽い口調でアルマは突然自身の右手を自身の左胸に突き刺した。余りの出来事に一瞬オンブラも驚くが、その後のアルマの表情を見て冷静に戻った。
笑っていた。己の心の臓腑を貫く勢いで貫手を刺したアルマ自身、当の本人は、不敵な笑みを浮かべていた。暫くして、彼は左胸から血を排出し始めた。ドクドクと、鼓動に合わせた流血と共に、胸からは無機質な棒が伸びていた。
「『死をも奪う心の鎌』……」
棒を強く握り締めて一息に引き抜くと、アルマの胸から長さ2mの長い無機質の棒が現れた。程無くして、棒の先端から血が滴り、そこから徐々に緩やかなアーチ状の刃が形成されていく。
それは、自分の心臓を大鎌に変える"異法"。明らかに異質な武器召喚が故に、武器の姿形でさえも異形。刃には目玉が生え、棒の部分には鎖が巻き付き、その鎖さえも脈拍の動きを得ている。
ハッキリ言おう、これは人間の闘い方では無い。
「形通り、命を懸けてやる」
『ナルホド。アナタ、混じッテルワね……半分、ソう、半分ハ人なのネ』
闇の魔女はアルマの武器、その出し方でアルマの血の混じりを見極めた。武器の存在と出現の方法、これは魔界の"邪法"である。
己の四肢や内臓を武器とする狂気の技、それが"邪法"。中には相手の体内から引き摺り出した腸を鎖鎌に変えて無双した猛者も居たそうだ。
しかもコレは魔界の中でも頂点に位置する者の"邪法"。自らの心臓を武器とするのだ、それ相応の威力も当然ながら確保される。
でも、それがどうした?
『────ト同時に、私はアナタに失望シタ』
闇の魔女は、これっぽっちも、アルマを脅威とは思っていなかった。
「ほぇぇ、おたく余裕だねぇ〜」
『エェ、何故ナラ私ハ────』
次の瞬間……
「ア゛ァッ!?」
アルマの体は錐揉み回転をしながら弾け飛んだ。
「おいボーッとしてる場合じゃないぞ幻真!」
「みたいだ! 行くぞ!」
いきなり自分達の方へ飛ばされて来たアルマを見て、活躍が手元で即座に形成したRPG-7を構えた。幻真は跳躍しながらアルマを掴まえ、腰の左側差し込んである武器を抜く。
「最初から全開だ! アクセル! モード4ォ!!」
頭髪が赤く変色した後に体を赤と金の混合色のオーラが纏う。掴まれた勢いでアルマも意識を取り戻し、幻真の手から離れて空を蹴る。
地面からは活躍のRPG-7、空中からは全力の幻真とアルマの武器攻撃。対して闇の魔女は、口を動かした。
『私ハ、魔ノ神ヲ殺シタ事ガアル』
言い終わると同時に三つの攻撃が一斉に炸裂した。手答えは十分にあった。
『ソウ、例エバコンナ風ニ』
闇の魔女は煙幕を黒い流れの表出で払うと、そこには驚愕で動きが止まる三人の姿が在った。
まず、活躍の能力は『銃火器爆発物を作り操る』事にある。先程形成されたRPG-7は、彼の魔力がふんだんに込められた特別弾頭を備えた武器だ。威力で言えば、爆発は小規模でも原水爆程度は余裕だろう。
だが、それを受けて無傷で佇む闇の魔女を見て、彼は驚愕した。
次、幻真の持った武器は『真神剣』と言う属性を自由自在に変える白刃の剣。特別に作成してもらったその剣は、日本刀の小太刀程度の長さで、斬れ味も良しの優れ物。
その剣が、何故か刃が粉々に砕け散っていた事で驚愕した。
最後、アルマの武器は異法の大鎌、元は自分の心臓と言う狂気の沙汰。その威力は自信に満ち溢れて当たり前な程だろう。
それが、容易に刃欠けになった事で驚愕した。傍から見ればただの刃欠けだが、彼には何故こうまでも簡単にこの武器の刃が欠けるのか、不思議で仕方が無く、同時に今までの軽口が嘘だったかの如く、彼の心に恐怖が込み上げて来た。
「お、い……冗談やめてくれよ。何なんだこりゃ……? あんた一体何者なんだよ……?」
アルマの声は震えていた。無論、闇の魔女オンブラはその様子を見逃しはしない。緩やかにアルマに近づくと、そっと指をアルマの額に当てて、妖艶に名前を口にする。
『【黒い殻】……』
その瞬間、アルマの景色は漆黒に染まり、目の前には黒を背景に立つ闇の魔女。何処を向けども何も無く、ただ目前に闇の魔女。
闇の魔女とは言え、オンブラは美人だ。だが、アルマにはその美しさが、目に見えるただの脅威でしかない。
「……あんた、恐怖って抱いた事あるか?」
アルマは右手で拳を作りながら6体の怪物を闇の魔女の目の前に出現させた。まだ、諦めたワケでは無い。ただ、先程から彼は彼女の、オンブラの感情を弄ろうとしているのだが、妙なのだ。
アルマの能力は『感情を弄ぶ』事にある。"操る"では無く"弄ぶ"ので、その操作圏は非常に広く、独占力も操作力も桁外れに強い。その能力で、先程からオンブラの感情を弄ろうと躍起になって、何も起きない。……妙だ。
『何? アナタ達』
「あぁぁぁ……怠ぃなぁぁ」
[ねぇ、お腹空いた]
〔うわ美人! あの人欲しいな〕
〈確かに、見目麗しい人ですね〉
(あら、それは私を見ても言えるの?)
【貴様等! 各々自由に喋るな! アルマ様が呼んだ意味、わかっていよう?】
極度に気怠そうな歪な角を生やした黒眼の悪魔のような男、空腹を訴える紫眼の幼い少女、オンブラを欲しがる青眼の少年、見るからに怪物の見た目をした赤眼の紳士、オンブラと美しさで張り合おうとする桃眼の女性、王の様な見た目の統率力のある金眼の男性。
これを見て何が何だかわからなくなってもおかしくは無い異形の者達の集結に、オンブラは睥睨すらせずどこ吹く風で6体の怪物達を眺めた。
そして一言……
『タダノ雑魚ネ』
怪物達は、その一言を決して聞き逃さなかった。このオンブラの言葉を聞いたアルマは6体の怪物達に注意を呼び掛ける。それが果たして、意味のあるものか否かは、後々わかる。
「お前等! 何をやっても良い、ただ気を付けろ! そいつは……」
『私ハ、魔神ヲ殺シタ事ガアル、ト、言イタカッタノ?』
唐突、何かの肉片がアルマと怪物達に飛来した。ふと飛んで来た一個の肉片を悪魔のような男が掴み取ると、それは瞳孔の開いた金眼だった。見回すと、自分達の中に、一体足りない事がわかり、同時にわかりたくない事までわかってしまった。
「まさか……あいつがやられた?」
『ヤッパリタダノ雑魚ネ』
可能性は、ただ一つとなった。直後、怪物達の中で抑制されるべき怒りの箍が外れた。
[グワァァァッ!!!]
『ネェ? アナタノ口って、幾ツ有ルノ?』
悍ましく口を広げて飛び掛かる少女を前に、悍ましい言葉を口にしながら少女の口内に自分から手を入れて無理矢理押し広げる。メインの口を止められたが、少女は止まらず、手や足から口を生やして掴み掛かろうとする。
だが口は、オンブラから伸びる黒い触手に止められ、同じ様に押し広げられる。オンブラは加減を知らないらしく、少女の口を何処までも何処までも広げていき、口内を触手でズタズタにしながら押し広げ、野球ドーム程の大きさになってもまだ押し広げ、尚且つ後ろに反らせている。
[ガ! ガッ!? ゴェッ!!!]
〔おい! そいつを返せ!〕
苦しそうに悶え、開きっぱなしの口々から血やら吐瀉物やらを撒き散らす少女を見て少年が激昂して叫んだ瞬間、少年の左胸に黒い触手が一本突き刺さる。刺さった触手は少年の血を心臓から直接吸い取り、同時に触手が口に変わって少年を丸ごと呑み込んだ。
『怪物ハ不味イケド、アナタハ美味シソウネ』
バリ、ボリ、ガリ、ゴリ、ザクザク……耳で聞いてわかる、骨だ、骨を噛み砕いている、咀嚼している。怪物達の骨を、臓器を……
〈○#*〜△×♢4444444!!!〉
怪物の紳士が激昂し、その姿形を更に醜く変貌させつつ言葉にならぬ言葉を放ちながらオンブラに突進する。オンブラは少女を甚振り、少年を喰らいながら怪物の紳士に何かを飛ばす。
理性を失った怪物には当然着弾し、当たった何かは怪物を瞬く間に溶かし尽くして触手で吸い取ってしまった。言葉すら掛けず、気にも留めてない様子で、オンブラと言う魔女は怪物を次々と食らっていく。
(イヤ……私イヤ! アルマさ────)
アルマの名前を敬称で呼ぼうとした美女の怪物は、触手に脚を喰われ、間も無く頭を噛み千切られてから全身を咀嚼された。逃げようとした瞬間だった、闇の魔女の触手は、怪物達を容赦無く喰らい殺す。
「このままじゃヤベェぞ! おいアルマ! 何をしてやが────」
悪魔のような男ですらも、触手に抗おうとして腕を噛み千切られ、頭から丸呑みにされた。当然ながら、触手からは咀嚼する音、それが痛々しくアルマの頭の中に響き渡る。
[ガァァァァァッッッ!!? ガッベルュヤガァァァァァァーーーーーーッ!!!?]
最後まで残った少女の怪物も、滅茶苦茶に千切られた挙句に綺麗に、そして汚く噛み砕かれ、ゴクリと飲み込まれる直前まで悲痛の断末魔を上げていた。
そして、誰も居なくなった。そこには、異形以上に恐ろしい闇の魔女と、ただ魂の抜けた面で佇む半人半魔の男のみ。
『オードブルニモナラナイ怪物ネ。使役スルモノ、間違エタノカシラ?』
「なんで能力が……」
『アァ、アナタサッキカラズット何ヲシテルノカト思エバ、アレアナタノ能力ナノネ。体ニ入リ込ム痒イモノダッタカラ吐キ捨テタワ。アト、私感情ガ無イノ。コノ魔法ヲ継グ前カラ』
これが、闇の魔女だと言うのか? 異形をも喰らう、魔性そのものを喰む、アルマの、魔界の王だった男をも、噛み砕かんとする者が、魔女だとでも言うのか……?
これが闇の魔女だと言うのなら、それなら一体、アルマは何なのだ?
『マァ、取リ敢エズ御礼ヲ、シナキャネ』
オンブラがそう言うと、突如黒一色の世界に、どこからか射し込む光が無数に現れた。それは次第にアルマから遠ざかり、銀河のような渦を巻く。
そうつまり、今彼は、宇宙を見ている。
『闇ノ魔法ト密接ニ繋ガル力、実ハ宇宙モ私ノ手中ナノヨ』
"闇"とは即ち"宇宙"。宇宙の力をも、その手で再現出来るようだ。それからオンブラは徐に手を頭上に翳し、橙色に燃え滾る超巨大球体を出現させる。
それは宇宙では当たり前に存在する巨星。それも、黄道十二星座で最も明るく輝く星と言われる橙色巨星、その名も……
『"巨星アルデバラン"ッテ、知ッテル?』
アルマは魂の抜けた面からやっと戻って来た。だが目の前には、頭上に掲げるオンブラでさえ豆粒以下に見える程の超巨大恒星が、超巨大恒星が頭上に有った。
「おいおい嘘だろ……?」
半分涙が目から溢れ出るアルマに対し、オンブラは真顔で答えた。
『大マジ』
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一方で突然目の前から消えたアルマとオンブラを探していた幻真。再び突然に何も無い場所から超巨大な爆炎が噴き出し、人の形をした何かが中央総合広場まで一気に飛ばされるのを見た。
「おい幻真、あれ、今飛んでったのって……」
「考えたくは無いが、そうだろうな……」
爆炎が噴き出た位置から夥しい数の黒い触手を伸ばし、這いずる様な音を立てて活躍と幻真の前に堂々とオンブラは現れた。最初に遭遇した時より取り巻き……あ、いや、触手が増えて視覚的精神ショックを受けるが、これはどう見ても魔女の範囲の風貌では無い。
『サテ、次ハ誰ガ私ノ相手ヲシテクレルノ? ナンダッタラ全員デ来テモ構ワナイケド』
「────だったら、私が相手をしてあげる」
その時、オンブラ目掛けて一発の光弾が飛来する。それを簡単に触手で遇らうと、幻真と活躍の背後にいきなり見た目15歳の女性が立っていた。アルマが飛んで行って間も無く彼女が来たと言う事は、優の支援で間違いない。
「初めまして、闇の魔女オンブラさん。私は夜桜、ただ"夜桜"。夜に眺める桜は好きか嫌いか知らないけど、以後お見知り置き願うわ」
続く……
ア「……」
白「お前、さては負けたな?」
シ「あれ? 姉さんどこ? 姉さーん!」
また次回