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エリシアが、仲間になった!

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「ダン……ジョン」


その言葉に俺とミユキは顔を見合わせ。


「ごめんなさい、やっぱりそういう反応するわよね……危険だし、ただ」


「すげええぇ!? ミユキミユキ! 聞いたか?」


驚愕と歓喜の雄たけびを二人仲良く上げる。


「はい、バッチリくっきりこの耳で聞きましたリューキ様! 初めての不思議なダンジョンです!ちなみにミユキも初めてなので、すごい楽しみですね!」


ダンジョン。 それは健全なる男児であれば一度は必ず夢見るであろう空間。


摩訶不思議にして奇想天外、罠があり冒険がありお宝がある……そこに、転生して真っ先に赴くことになろうとは……。


「……な、なんだかすごい喜びようね……頼んだ私が言うのもなんだけど、気は確か?」


「当然だ! エリシア、いいか?」


俺はジョッキに入った葡萄酒を一気に飲み干すと、エリシアへと俺のダンジョンへの想いをぶつける。


「へ? はい」


「俺達(ゲーマー)はダンジョンが大好きなんだ……不思議なダンジョンで帰還方法を失いたい!!罠だらけの地下迷宮で回復薬を枯渇させたい!!アンデッドだらけの地下墓地で木霊する地獄めいた賛美歌もいい、救いのない無限ループに気づかずはまって、気が付いた時に怒り狂うのですら快感だ!回転床の嵐でアイテムをすべて落としたってかまわない!道を外せばひたすら爆弾のみのダンジョンだろうがお構いなしに愛している! 世界樹の下の地下迷宮なんて夢以外の何物でもない!? これは俺だけの感情か? 

ミユキに聞こう! ミユキはダンジョンは好きか?」


「ダンジョン マイ フレンド!!」


「よろしいならばダンジョンだ!」


「……ごめん、よくわからない」


一蹴された。


「……すいません調子に乗りました」


「のりました」


「……あ、うん……いいんだけど、その、落ち着いて」


「あ、はい」


エリシアは少し引き気味にそういい、俺はそこで冷静になる。


「こ、こほん……とりあえず、ダンジョンに行くのは構わない」


「そ、そう。 何はともあれ、利害が一致することは大切よね……できれば、そのテンションは封印していただけるとありがたいんだけど」


「善処します」


「ですが、ダンジョンといえばこの世界では危険視されている聖域の一つです。 なぜそのような所に行くんですか? エリシアさん」


「そこに夢があるからだろ常考」


「少し頭冷やしましょうかリューキ様」


「!?」


「あなたが冷静で助かるわミユキ」


「適切なサポートも私の仕事なので」


「まぁそれで、私がダンジョンに挑む理由だけど」


「はい」


「魔王の復活を止めるためよ」


「魔王の?」


神様がまだパッチ当ててないから出てこないとか言ってた気がするけど。

。

「かつてこの世界を牛耳り、世界を恐怖に陥れた恐怖の魔王フォース・オブ・ウイル。

その力が覚醒し、再度この地に降り立つことを、私達エルフ族の神官が予言をした、それが数年前」


「予言?」


「エルフ族の神官はミユキ様を信奉していて、神官の方には時々ミユキ様直々にお言葉を賜ったりしてるんですよ」


こそりとミユキは俺の耳元でそう告げ、俺はなるほどねと納得をするが。


「おい、話が違うじゃねーか……魔王は今いないんじゃなかったのか?」


「第二第三の魔王はですよ、リューキ様、今までいたやつが復活しないとは限らないです……事実、この世界にはほんの二百年前まで確かに魔王がいました」


「んなっ……今はいないってだけか!?」


詐欺じゃん!?


「知らないですけど、ミユキ様は言葉が足らないお方なので」


「苦労するな、お前も」


「ちょっと、何ひそひそ話してるのよ! 嘘じゃないからね! 痛い女じゃないからね!」


「悪い悪い、ちゃんと信じるから」


「本当?」


「あぁ、それで、どうして魔王が復活するってなるとダンジョンを攻略することになるんだ?」


「言葉がたらなかったわね、ごめんなさい。ダンジョンといっても、自然にできた奴じゃない。 それぞれが魔王の力を封じた洞窟が、その魔力によって異次元化した場所なの……」


「魔王の力を?」


「そう、ハートっていうんだけれども。 打倒された魔王のハートは4つに引き裂かれた……」


「グロテスクな話だな……」


「リューキ様の世界でだって、アインシュタインやザビエルさんはバラバラにされて保管されてるじゃないですか」


「そうだった……罪人じゃなくて偉人をそうしているあたり、今思うと俺たちの世界って恐ろしいな」


「ちょっと聞いてる?」


「わりい、続けてくれ」


「だけど、4つに分かれたハートは今もまだこの世界で脈動を続けている」


「なぜ?」


「魔王はハートを抜かれても生きているのよ、地中深く、この国のダンジョンの奥底でまだ眠っているの」


なにやらへんな言い方だが、ハートっていうと心臓のことだろう……。


「……心臓を抜かれた状態で魔王は力を蓄え続けていて……近々心臓のない状態で復活をするということか?」


「そういう事、魔力の核、生命の核であるハートを取られた状態で復活して、そんな状態でハートを手に入れたらどうなると思う?」


「控えめに言っても世界は破滅だな」


「そうでしょう?」


「だが、どうして心臓を封印するだけにとどめたんだよ、斬っても死ななくても他に方法は幾らでもあるだろう?」


「まぁね。 だけどそれをしなかったのは、魔王のハートはその国に繁栄をもたらしたから」


「繁栄?」


「そう、魔王のハートはまさに魔力の塊みたいなもの、今みたいに平和じゃなかったこの世界で、魔王のハートは減らない資源になり、繁栄をもたらした」


「魔力はこの世界で言うエネルギーの源です。 石油やガスを燃やして発電等々をするように、この世界ではマナと呼ばれる大気中の魔力を利用して生活をしているんです」


なるほど、考え方としては、魔力=石油みたいなもんか。


そんでもって、魔力を生み続ける心臓ということは。


「枯れない油田みたいなもんか」


「そう考えて差し支えないですリューキ様」


「それで、こうして魔王の魔力を利用しつつこの世界は復興を遂げた」


「だが、いつまでもそうしているわけにはいかないと?」


「ええ、だけど魔王が倒された後、人々は魔王のことなんて忘れてしまっていた。 それどころか、忌むべきものとして関連する記録をすべて消してしまったのよ、異端につながるってね……」


「なるほど、おかげで心臓のありかはわからずじまいというわけか」


宗教関連ではよくある話だ。


俺たちの世界でも古代ギリシャの科学者は地球が球体で自転していることを理解していたが、キリスト教徒によって文献は抹消され、天動説が広まったという話を聞いたことあるし。


「そういう事……確かに、ハートのあるダンジョンっていうのは魔力とハートの呪いによって異界と化しているし、魔物も多く住み着いている。 だけど、それは自然に発生したダンジョンも同じこと。 各種族の国も冒険者をこうやって雇い入れてハート探しに躍起になっているんだけど」


「未だに収穫は得られていない……」


「?」


ちらりと横目で周りを見ると、顔を赤らめた冒険者が2~3人こちらの話に興味を持つように耳を傾けている。


なるほど……情報が集まり、奪い合う場所ね。


なんとなく、ここの流儀を理解した俺は一度エリシアの耳元まで口を寄せ。


「が……その場所を、お前は見つけた? そういう事か?」


小声で誰にも聞こえないように耳打ちし、エリシアにわかるように横目で耳をそばだたせている奴らを見やる。


「あぁ……ええそうよ……さっぱりだわ……ごめんなさい」


「だけど探してみる価値はあるってことか」


「そう言うことね」


エリシアは口元を緩めて俺の意図を読み取りそう語ると、一獲千金の可能性のある話は夢見る若者の戯言へと形を変えたのか、視線が外れ冒険者たちはまたいつもの日常へと戻っていく。


「なるほど、なんとなくわかった。 世界の命運をかけた宝探しに、俺を誘ってくれたというわけだな?」


「そういう事よ、転生者は皆総じてダンジョンに詳しいと聞いたことがあったから……一緒にいてくれるだけでいいと言うのはそういう事。 戦いは私が、ダンジョンの知識はあなたが担当する……ダンジョン内は当然宝や魔物の素材がある、私はハートを破壊できればそれでいいし、貴方はロマンを求めて宝を手に入れられる……どうよ? 悪い話じゃないと思うんだけど」


悪い話じゃないが、俺にダンジョンの知識が無かったらどうするつもりだったのだろうか?

 

いや、あるんだが。


「むしろ好待遇ですよリューキ様!」


無邪気に喜ぶミユキ。


確かに言い分は通るし、筋道は通る内容だ。


だが一つ気になることがあるとすれば。


「しかし、解せないことがあるな」


「なにかしら?」


「……話を聞く限りかなり大きな大役だ。 富と名声を求めるならば危険を承知で飛び込むものも多いだろうけどよ……だが、なんでお前がわざわざそれをやるんだ?」


そう、宝はいらないといったエリシア。 しかしそれでは、危険を冒す意味もない。


しかし、エリシアは俺のその質問に静かに口を緩めると。


「魔力の源、魔王は私の国……エルフの国に眠っている。 復活をすればまず最初に滅ぼされるのは私たちの国……だから私は、頑張るのよ」


愛国心……聞こえはいいが、俺にとってはその感覚はさっぱりであり、そんな奇々怪々な感情を理解するつもりもない。


それを理解するならばまだ、高校生の教科書を開いて連立方程式を好きになるように努めた方が有意義にも感じてしまうのが俺という人間であり、当然のことのように自分の国を守るために命をかけている少女に俺はどこか彩のようなものを感じていた。


「それだけのものを背負っておいて、俺なんかを助けたのか」


「ギブアンドテイクよ……貴方だって私を助けてくれた。 似た者同士なのね、私達。 

言っちゃえば、バカのつく程のお人よしってやつ」


すみません……ただ足場が崩れただけなんです……助けたのも成り行きなんです。


「リューキ様、エリシアさんはとってもいい人ですね」


「そうだな、俺にはもったいないぐらいだ」


というよりも、はっきり言って俺が無能すぎて泣けてくる。


「ちょ、ちょっと……いきなり何よもー、褒めても何も出ないんだからね!」


とてもうれしそうだ。


「……まぁ、似た者同士云々の話は置いておくとして。 そういう事なら協力するぜエリシア」


「本当?」


半信半疑といったような表情のエリシアに、俺はにこりと微笑んでみせる。


「リューキ様、不気味です」


「ほっとけ」


やはり人との関わり合いがほとんどなかったため、笑顔すらもぎこちないようだが、そこはそこ。


正直、彼女の在り方にあこがれたのだろう。


これだけでかいものを背負っておきながら、当然のことのようにふるまう姿にも。


こんな華奢な体で……国を……世界を救おうとしているスケールの大きさも。


まるで、日曜朝八時から始まる特撮物の主人公を見ているようで、俺は心躍り、この少女のエンディングがどこへ向かうのか……その英雄譚を間近で見続けたいと思ってしまった。


そして、一緒にいれば、その物語の登場人物に俺でもなれるのではないかと……自分でも小賢しいと思うが、そんな打算的な考えも挟みながら俺はエリシアの誘いを承諾する。


「やったー! ありがとう! これからよろしくね、リューキ!」


「あぁよろしくな」


「エリシアさんが、なかまになった……ですね!」


「どちらかというと俺が仲間に入れてもらった形になるけどな」


「よかったわ、他のみんなと合流する前に話をまとめられて……」


「待ち合せしていた人間っていうのは他のパーティーのことなのか」


「ええ、リューキと違って、報酬を支払って雇った人だけどね……そろそろ行こうかしら」


時計を確認したエリシアは、そう俺に語りかける。


会話をしながらの食事の時間経過の早いこと、気が付けばあれだけ山盛りに積み上げてあった食事は姿を消していた。


「そうだな、ミユキ。 いけるか?」


「はいはいただいまー!」


楽し気に笑うミユキはそういうと、自分の身長位もあるナプキンで口元を拭くと、ひらりと舞い上がりエリシアの肩にとまる。


「あら? いいの、ご主人様の方に行かなくて」


「いいんですよぉ~。 もうお友達ですから」


「友達…………そう、ありがとう」


ミユキの笑顔に、エリシアは微笑んでミユキの頭を撫でる。


ユリ……ではなく、そのほほえましい光景に俺は自然と口元をほころばせ。


「じゃあいこっか」


エリシアの会計を待ったのち、飛翔する竜の太陽を後にするのであった。



【魔王】 かつて世界を恐怖に陥れ、五英雄により封印された存在。 魔物を操り、ありとあらゆるスキルを使いこなし、圧倒的な武力・魔力にて世界を掌握しかけた絶対悪。 彼が率いた存在、魔族は人間ではありえないほどの魔力を用いた異界の存在であり、この世界に魔物が生まれる原因となった。—――クレイドル寺院にある書物による抜粋—―――

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