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そして転生へ

                     ♪NOW……LOADING♪ 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・



「おはよーございまーーーす!」


現れたのは身長が十センチほどしかない妖精のような少女。


「本当に分身!? 性格正反対の奴が出てきたけど」


「……ちょっと頭悪いけど、私の分身、ミユキ サトナカ・レプリカ」


「あ、お前サトナカ ミユキっていうのね……」


ここにきて今の段階では割とどうでもいい事実が判明した。


「どーも! 私、ミユキサトナカレプリカと申します! 気軽にレプリカーとか、ミユキとお呼びください! ご主人様!」


「そうか……じゃあミユキで」


「了解しましたー! 私は今日からミユキです!」


「じゃあ、私は聖母ミユキで」


「ややこしいからお前の方はサトナカな」


「……ぶー」


ボイスロイドみたいな棒読みで不貞腐れるサトナカ。


「わかりましたぁ! 私はミユキです! よろしくお願いしまーす!」


それとは対照的に、ひらひらと胡蝶のように舞う女神さまの分身体は、俺の周りをはしゃいで飛び回る。


「……なんかやけに人懐っこいな」


そっと手を出すと、小鳥のように掌の上に正座をし、深々とお辞儀をするミユキ。


確かにちっこいが、見た目は目前で先ほどから写真なんじゃないかと思うほど全く同じ表情同じ姿勢でこちらを凝視している神様とそっくりだが……。


「にぱー!」


こっちの方は本物と違って真面目な顔をしろというのが難しそうだ。


「彼女は、私の感情部分を複製、一時的に切り離した存在、大丈夫、ちゃんと私」


「ええそうです! ミユキはちゃんと神様なのです!」


「なるほどね、それじゃあ参考までに好きな食べ物は?」


「コーラ」  「ぼんち揚げ!!」


おう、バラバラなのは予想出来たが本体の方が食べ物じゃなく飲み物を答えたぞ。


この神様、俺の予想の常に上を行くな。


「彼女は私の幼い部分も継承しているから仕方がない」


「お前の回答も十分子供だけどな、というか回答としては一応答えになっていた分こっちの方が有能だぞ」


「なんと……」


無表情だがこれはわかる、女神様今ショックを受けている。


「ミユキは優秀なので―!」


有能という言葉にわかりやすいほど素直に反応する分身体……しかしその反応に、本体の方が更なる追い打ちを受けているという現実に気づく様子は一切ない。


「分身体と言い張るのはやはり無理があるように思えるのだが」


「だけど……同一存在だから……私の考えを彼女は100パーセント読み取れる」


どうやらミユキレプリカが女神さまの分身体であることは何があっても認めさせたいらしく、女神さまは姿勢を変えてむきになる。 先ほどまで絵画のように微動だにしなかったのが、姿勢を変えたのだ。 これは相当焦っていると見た。


「じゃあ証明してみてくれ」


「当然……ミユキ」


「はい! 女神様!」


名前を呼ばれると、分身体は俺の手を離れてひらひらと女神の元へと飛んでいく。


「あれを……」


そっと手を出して何かを催促するようなしぐさをする女神。


「?」


しかし美幸は一度笑顔で首をかしげると、困ったようにくるくると手のひらの上を飛び回ったのち。


「あい!」


ちょこんと女神の掌の上に正座をし、自慢げにこちらに胸を張る。


「……」


「……さすがは私のレプリ……」


「おいこら、ポーカーフェイスで胡麻化そうとするな……」


「何を? 私は最初からこれを望んでいた」


「……」


「望んでいたぁ……」


「分かった……分かったからそんな無表情で捨てられた子犬みたいな目を表現するという器用な真似をするのはやめろ」


明らかに何か物を所望していたのは明白ではあるが、どうにも強引にこの話をまとめる腹積もりであるようで、俺は仕方なく彼女の意志に従うことにする。


なんだか不憫だし。


「わかればいい、それに確率の低い話だけど、私とレプリカの性格や思考形態が異なったとしても、貴方の異世界ライフには問題はきたさない」


「あぁ、そうであることを祈ってるよ」


「とりあえず、彼女がいれば異世界転生後の世界の知識不足による弊害は殆ど生まれない」


「そうなのか? なんでだ?」

「彼女には歴史学、考古学、技能楽、魔法学すべての知識を与えている」


「私、意外とエリートなんですよ!」


自分で言っちゃったよ。


「体が十センチしかないから、戦闘などでは使い物にならないのが問題点ではある」


「まぁ、異世界ライフを彼女におんぶにだっこじゃ、せっかくの異世界転生もつまらないだろうし……そこはいいさ、知識だけでも十分ありがたい」


「そう……そういってもらえると助かる。 まぁとりあえずナビゲートの説明はこれくらいにして」


 そういうと、女神は手に乗せていたレプリカを放り、俺のもとにかえすと。


今度は小さく呪文のようなものをつぶやいて何かを異空間のような場所から引っ張り出す。


それは、何かの箱のような形をしており。


「ぱんぱかぱーん」


無機質なトーンはそのままに、しかしどこか楽し気に無表情のまま女神はその箱を振るう。


素材は明らかに厚紙でできており、手を入れて中から何かを取り出せるように丸い穴がてっぺんについている。


あ、これどこかで見たことあると思ったらあれだ、コンビニでたまにやってるあたりが出たら商品がもらえるとかいうくじ引きの箱だ。


しかし、この流れでくじというと、俺の脳裏を異世界転生に置いて重要なイベントがよぎる。


「おい、女神様、まさかとは思うけど」


「とっくにごぞんじなんでしょう……そう、異世界転生といえばチートスキル……そういうわけで今から、貴方にチートスキルのくじを引いてもらう……」


そんな商品のおまけのような感覚で……!?


「選んで」


冗談でも何でもなく、本気でこの女神は俺のスキルをこのチープさ漂う厚紙のボックスから選ばせるらしい。


「というかくじなのかよ……異世界転生といえば自分でスキルを選んだりするのが主流だろうに!」


「そこは公平性を期すため……大丈夫、外れは殆どない」


「あるのかよ外れ!……ちなみに最悪なのは?」


「下着鑑定……次いで触ったものからなんか異臭をさせる能力」


予想斜め上に嫌なスキルだった。 二つ目の方に関しては単純な嫌がらせだ。


「分かった、引いたら速攻でリセットしてやるからリセットボタンをよこせ」


「心配はいらない、もう引かれていて、在庫がない」


「引かれてるのかよ!? というかその様子だと複数あったのかよ下着鑑定」


「問題ない……引いた人間はこの世界でスキルを活かし、この世界の下着の文明レベルを現代水準まで引き上げた……世界の九割の人間がこの転生者の作った下着を着用している……もちろん大金持ち」


意外と大物になってる!?


「スキルは使いよう。 スキルは決して裏切らないから」


なるほどね……要は外れスキルでも大富豪くらいにはなれるから安心しろってことか……。


「ちなみに、触れたものから異臭をさせる能力の能力者は……」


「この世界には知ってはいけないこともある……引いて」


この俺の質問には答えるつもりはないらしい……その眼光は虎をも射殺せるほど鋭く、これ以上の追及はこの世界の―――女神さまにとっての―――トップシークレットに触れることになるのだろうと理解し、質問を飲み込んだ。


まぁ、うだうだしてても始まらないってことだ。


「よっし、引くぞ」


「がんばれリューキ様―!」


俺は覚悟を決めてそのままボックスの中に手を突っ込むことにする。


中には案の定何枚もの紙が入っており、俺は適当にその中から一枚だけ紙を引き抜く。


几帳面に四つ折りにされた紙を震える手で開くと。


そこには。


「スキルグラップ?」


「!」


手書きの文字で【スキルグラップ】とそう書かれていた。


「おめでとーーございまーーーす!」


不意にファンファーレとラッパを鳴らしながら分身体は祝うようにあちこちを飛び回る。


「え、なにこれすごいの?」


そのオーバーリアクションは分身体がお馬鹿だからなのか、本当にすごいスキルだからなのか判別することができず、俺は思わず女神へと向き直ると。


「スキルグラップは、触れたもののスキルを一時的に奪うことができるスキル……ただ……」


スキルを奪う? なんかよくわからないけど強そうだな。


「時間制限はありますけど! 大当たりですよご主人様! スキルには低級スキルから神級スキルまでその強さと希少性から七段階に分かれるんですけれども! これは間違いなしのゴッズスキルですよぉ! これさえあれば、どんな敵でもいちころころりんすっとんとんですよ!」


「そ、そうなのか?」


レプリカの発言やテンションから、かなりのあたりスキルを手に入れたのだろう。

今までの不幸人生、転生してようやく幸運が舞い込むというわけか。


「……気に入ってもらえたなら何より」


「おう、とりあえずこのスキルグラップにするよ……当たりみたいだし」


「そう……」


そう言うと女神はスキルの箱を異空間に戻すと


おもむろに古びた本の様なものを取り出す。


「それは?」


「東西南北今昔未来すべての魔法が納められている魔導書……ミチザネ……」


「くれるのか?」


「あげない」


「ケチだな」


「ケチじゃない」


女神さまに少し冗談を漏らしてみると、無表情ながらも可愛らしくほほをぷくりと膨らませた。


なんだ、こういう表情もできるんじゃないか。


俺はなぜか少し安心をすると……。


「じゃあ、さっそく転生するけど、やり残したことはない?」


少女は本を片手に指を振ると、俺の足元に魔法陣の様なものが浮かび上がる。


「随分と早いな」


もう少し粘れば、このヒューマノイドインターフェイス顔から表情というものを引っ張り出せそうな気がするんだが。


「あなたに私がしてあげられることは、まだこれだけ……でも安心して、またすぐに会える」


「意外だな、普通はこういうもんは一回きりのもんが多いけど」


「アフターフォローは万全に」


「本当に事務作業感が否めないよな……まぁ、手厚いフォローは大歓迎だけどよ」


「……そう。 じゃあミユキ、あとは頼んだ」


「はーい!」


そう言うと、ミユキは俺の肩にとまり、にこりと笑いかける。


「よろしくお願いしますね! ご主人様!」


自然と頬が緩む……あぁ、なんだろう、この子の存在だけでもすでに転生してよかったと思わせてくれる……天使なんじゃなかろうか。


「じゃあ、グッドラック」


そういうと、女神はぼそりと何か呪文のようなものを唱える。


と。


足元に描かれていた魔法陣が光り輝き。


白い稲妻のようなものが轟音を鳴り響かせながら俺を包みこむ。


「これが……魔法」


神秘的でいて奇々怪々、だがそれでいてどこか懐かしい感覚。


存在を空想の世界で人々は焦がれ、識っていながらも触れることは生涯叶わない。


そんな存在に、俺は今触れている。


夢のような瞬間……だけど決して夢ではないと、包み込む光は俺に教えてくれる。


早くも異世界の魔法に触れて、気分の高揚を押さえきれない。


一体これは何という魔法なのか、俺の知的好奇心が不安や恐れを塗りつぶし、期待に胸が膨らんでいく。


と。


「……一度言ってみたかった」


「へ?」


女神は初めて、瞳を輝かせるような表情をし、口を開くと。


「おぉっと……テレポーター」


「おまっ!? それいしのなか……」


 こうして、俺の異世界転生ライフは幕を開けたのであった。



【転生者】 :創造神ミユキ サトナカ もしくは大神クレイドルによって、異世界から招き入れられた異邦人。転生者と呼ばれる彼らは、特殊なスキルと異世界の知識をもとに【下着】や【造船技術】【建築技術】など様々な分野でガルムンドの文化レベル上昇に貢献をしている。  



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