42. 少し元気になりました! & 少し後悔しました!
しかし、この時間に出歩く事が多いな・・・。
当初は目立たない様に調査をする事が目的だったのだから、本来であれば今の姿が正しいあり方なんだろうな。そんな事を思いながら静がに笑い、5コ―の寮へ向けて歩を進める。
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「時にアスタ―――。」
訝しげにアスタロテをに視線を向ける銀髪の長。
「何だルシ?」
「何だではないだろう。何故最近魔王城に入り浸っているのだ?」
「居ては何か不味いのか?」
「ふんっ、不味い事なんてこれっぽっちもない。ただ、呼び出しをされるまではいつもフラフラとしているお前が珍しいと思ってな。まぁ、居ても事務作業を手伝う訳では無いから全く役に立たんがな。」
「事務作業をする気分じゃ無いんだよ。ルシはいつも一言二言多い・・・。」
アスタがため息交じりに返事を返し窓の外へ視線を向ける。
「自分の城に帰った時はちゃんとやるのだぞ。でなければ部下に見捨てられるぞ。」
「心配しなくてもその程度でウチを出ていく様な奴は居ないよ。」
「全く、お前と言う奴はああ言えばこう言いよって・・・。アスタよ、もしかしてセイが居なくて寂しいのか?」
「・・・そう・・・かもな。」
「そうかそうか、ははっ・・・はぁ!?」
冗談のつもりで放った言葉を素直に肯定され、ルシが目を白黒させる。一瞬取り乱した様子だったがすぐに落ち着きを取り戻すと、作業の手を一旦止め、腕を組み少し考え込む。
にわかに信じ難いがあの戦いと破壊を好んでいたあのアスタが、たかが人間の子一人でここまで変わるのか・・・。戦争も終わり平和な今では魔族にとっては確かにありがたい話なのだが―――。何と言うかこうも覇気の無いアスタは逆に気持ちが悪いな。
「ふむ・・・。なぁ、アスタ。お前は不思議に思った事は無いか?」
「何を?」
何故自分がアスタに気を使い、話題を振らなければならないのかとも思ったが、たまには良いかと思い直し話を続ける。淡々と返事をするアスタもこの話題ならば多少喰いつくだろうと、以前から脳裏をチラチラと過ぎっていた疑問を投げかけてみた。
「セイ君の事なんだが。」
「・・・うん。」
「どうしてあのような辺境の土地に生まれ、村人も両親もごくごく普通の人間なのにあのような力を持っているのか。そして、今まで平和に暮らしていた村にも拘らず急なモンスターの襲撃。更に言えばたまたま通りかかったお前が、普通なら通り過ぎていただろうに、気まぐれで助けた。」
「・・あぁ。」
「偶然が重なったと言えばそれまでだが・・・。」
「運命だ。」
ルシの言葉に被せる様にアスタが口を開く。
「は?」
「だ・か・らっ! 運命だよ! それ以外考えられない! 自分で言うのも何だけどね、私魔族だよ? 戦闘なら負ける事を考える方が難しい程力もあるし、金だって不自由しない程度にある。部下だっているし城もある。」
「あ、あぁ。」
自分が思っていたのとは違う方向にスイッチが入ってしまったと思いつつ、ルシは捲し立てる様に話すアスタに気圧される。
「それがよ! どうしてこんな気持ちになるの!? こんな気持ち知らない。魔族なのにこんな―――。」
そこまで言うとまた窓の外へ視線を向ける。
「セイ君が手元にある時はそんな風になるとは思わなかった・・・って所か。しかし、運命か・・・。」
「あぁ、そうだ。・・・滑稽・・・だな。これじゃ、まるで人間の書く物語の様じゃないか。今なら少しセイの気持ちが分かる、様な気がする。魔族には無いはずの気持ち、もう運命と言う得体の知れない物のせいにするしかないだろ?」
信じ難い話だが、こうやって見た事のない表情のアスタを見る限り本当の事なのだろう。
またしても何故アスタに自分が気を使わなければならないと思いつつも、この状況に何と言えば良いのか・・・、アスタにかける言葉が見つからない。
「ま、まぁ、アスタが死ぬ訳でもないし、セイ君にニ度と会えない訳でもないんだから―――。」
「セイにニ度と会えない!?」
アスタの反応を見る限り、どうやら上手く地雷を踏み抜いたらしい。
ルシは流石に自分が経験した事のない、しかも人間が抱くとされる感情に対してフォローを入れようとした事が間違いなのだと悟った。
「ゴホンっ。とりあえず、その気持ちの問題は置いておくとして、彼の能力についてなんだが。」
「置いておく!? 考えても仕方のない事だからまぁいいけど。セイの能力が何なの?」
アスタに仕事を頼む度に大きな被害を出していた時とはまた別の事で、神経をすり減らす事になるとは・・・と思いつつ話を続けるルシ。
「あの魔力量、少し異常だとは思わないか?」
「まぁ、人間の中では・・・いや、言われてみれば魔族の中でもあの年で、あれ程の魔力を有する者は異常だな。セイが可愛くて仕方なかったとは言え、人間のしかも、子供相手に魔力を押さえる封印を施すなど異常だな。」
「おいおい、アスタ。まさか今の今まで何とも思って無かったのか?」
「あぁ、全く。ウチの子凄いでしょ? 可愛いでしょ? 可愛いでしょ? 可愛いでしょ? 位しか思って無かったわ。」
あっけらかんと言い放つアスタに、頭を抱えるルシ。
「良いかアスタ、確かにお前は戦闘力で言えば魔王軍でもトップクラスの実力を有している。しかしだ、私の見積もりが間違っていなければ、セイ君はそれを越えられる資質があると思っている。この意味が分かるだろ? 天から授かるとは言え、普通の人間同士の子であのレベルは数百万いや、数千万分の一の確立だ。」
「そうだろ! 流石私のセイだっ!」
「こら、アスタ。話の腰を折るんじゃない。確かに資質はあるとは言ったが、開花させれるかどうかは本人次第という所もあるのは事実。」
「なんだよルシ、ウチの可愛いセイにケチを付けんなよ。」
アスタの綺麗な顔の眉間にシワが寄る。
「別にケチを付けている訳ではない。今でもあの強さだ、人間という種族の中ではそうそう負ける事はないだろう。・・・開花させる為には越えなければならない事が山の様にある。」
奥歯に物が詰まった様なルシの言葉を聞き、アスタの口元が緩む。
「なんだ、そんな事か。ルシ、自分で言っておいて忘れた訳じゃないだろ? セイは私が育てた。そしてロテの名も授けた。ルシが言う様な生ぬるい生き方なんて出来る筈がないだろ?」
「だよなぁ・・・。」
最終的にアスタは少し元気を取り戻し、ルシは少しだけ胃が痛くなり、目立たない様にしなくて良いと許可を出した事を後悔した。
まだ腑に落ちない点はあるが、部下であるアスタが多少元気を取り戻した様子を見て、ルシはそれ以上言葉を続けるのを止めた。
「まぁ、セイ君を拾ったのが勇者側じゃなく、アスタだという事がせめてもの救いか―――。」
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「あれ~? セイ君じゃないですか。こんな時間にどうしんですか~?」
前方から来た見知った女性に声を掛けられる。
「エル先輩こんばんわ。先輩こそどうしたんです?」
「ん~、ちょっと小腹が空いちゃってね~。持ち帰って食べれる物でもと思って食堂にね。」
「そうだったんですか。それなら早くしないと閉まっちゃいますよ?」
「マジ? 急がないと。じゃあセイ君、折角お互い一人の時に会えたんだし、色々としたい所だけど、こんな時間だしセイ君も用事の途中みたいだからまた今度にしておこうかな。」
一瞬後ろから首に腕を回し、大きめの膨らみを背中に押し当て頬ずりすると、エル先輩はフワリと離れ手を振りながら食堂の方へ向かって行った。
「しかし、セイ君どこへ向かってたんだろ~? あっちは5コ―の寮位しか無いはずだけどな~。まぁ、セイ君の事だ何かしら調査でもしてるんでしょうね。それよりも、ご飯ご飯。・・・やっぱり、もうちょっとセイ君とイチャイチャすればよかったかな・・・。」




