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 41. 教えられました!

「ところでセイ様。」


 食堂への道すがら先程までうんうんと何かを考えていたミーナが急に話し掛けて来た。


「ん~? どうした? 寮から出たあたりから急に何か考え込んでいた様だけど、纏まったのか?」


「あっ、いえ、纏まったというかですね・・・、疑問に思った事があるんですけど・・・。」


 どこか申し訳なさそうな、言い辛そうな雰囲気を出している。


「何だ、言うならハッキリ言ってみろ。俺に分かる事なら答えてやるから。」


「え、えっと・・・ですね。今日レプト先輩の所に行くじゃないですか?」


「ああ。」


「それって、ドアが壊れて不便だからじゃないですか?」


「じれったいな、それがどうした?」


 少しモジモジとした様子だったが、意を決したように俺の数歩前に小走りし、こちらをじっと見つめるミーナ。


「今ドアはワカ様の力で固定されてるんですけど! ドアを閉めるだけならそれで事足りたんじゃないでしょうか!?」


 数秒の沈黙が二人を包む。


 完全に盲点だった。自分でワカにドアを固定させておいて何だが、全くその発想は無かった。応急処置として魔法で固定しておけば良いかとは思ったが、冷静に考えてみればドアの修理なんてそんなに時間の掛かる事でもないしな。ドアの修理について詳しい訳ではないが、数日・・・いや、下手をすれば一日で済む作業なのではないか? 修理までの間その状態でも良かったか・・・。


「ミーナっ!」


「はっ、はいっ!」


 ミーナがビクッと体を震わせ大きく返事を返す。


「まさかミーナに教えられるとは思わなかよ。ははっ。」


「えっ? じゃあ本当に気付いていなかったんですか?」


「あぁ、全く盲点だった。何て言うか壊れるイコール修理までの時間が掛かるって言う固定観念と、あの状態でも良いんじゃないかっていう考えが完全に頭に無かったよ。」


 別に自分は完璧でも何でもない。ミーナにだって教えられる事は多くあるだろう。率直な感想をミーナに伝えると、えへへっと気恥ずかしいのか少し顔を赤らめ、頬をポリポリと人差し指で掻く。


 その直後、八雷神の一柱がスルリと体から離れ、俺たちの前に顕現した。


「ほほう。ミーナにしては(・・・・・・・)、よく思いついたな。」


 出て来たのはワカだった。


「ありがとうございます!」


 ミーナが頭を勢いよく下げる。


「がっ、しかし! しかしだミーナ・・・。お前は私に・・・、セイ様自らが命令したのであれば心地も良いが、お前が八雷が一柱である私に数日間ドアの固定を・・・ただドアを壁に固定するだけの役をやれと言っているのか?」


 ワカの表情はいつもと変わらず愛らしい笑顔だが、ミーナに対する威圧感がビリビリと伝わってくる。


 思い付きは確かに良かったのかもしれないが、その役目がモノである自分よりも格上の存在で、しかも強大な力を持ち合わせている八雷神様だという事を改めて思い出したのだろう、みるみるミーナの顔から血の気が引いていくのが分かる。


「も、申し訳ございません! 私には出来ないワカ様の力を目の当たりにし、つい安直な考えをしてしましました。お許しください!」


 今にも泣きだしそうなミーナの前に八雷神の一柱が顕現した。


「ワカ、お前の気持ちも分かるがそこら辺にしておいてやれ。ミーナが震えているではないか。」


「はぁ? ちょっとナル甘やかし過ぎなんじゃないの? じゃあ、あなたならやるの? セイ様が言ったのではなく、ミーナが言った事に対してやるって言うの?」


 ため息を一つ付きナルがワカの言葉に答える。


「全くどうしたというのだ? 私の知ってるワカはもう少し聡明だと思っていたぞ? よく考えてみてほしい。確かに我々が行う仕事としてはお粗末なものだ・・・。」


「ほら、ごらんなさい。」


「待て待て、最後まで話を聞けワカ。お粗末ではあるが、君主が部屋にお戻りになられドアの前に立つ前に君主の指示が無くとも自ら顕現し、速やかに結界を解除し更に、お部屋に入られた後は即座にまた結界を張りなおす。」


「それがなんだって言う・・・!?」


「いつものように冷静なあなたならすぐに思いつきそうな事なのに本当に珍しいな。そう、結界を張った後結界を見張るとか、調整するとかいくらでも言い様があるが、何よりそのまま君主の御傍に居られる口実がいとも容易く出来る! 更に結界に人払いも付与しておけば君主が拒絶しない限り数日間イチャイチャしたり、あんな事やこんな事をしていただけるのだぞっ! 逆に聞くがワカっ、これを断る理由があなたにあるの!?」


「そうね、どうかしていたわ・・・。最近主様の周りに女性が増えすぎて少し焦っていたのかも知れませんね。こんなに毎日誰よりも近くに居るというのに・・・、ホント滑稽だわ。」


 ワカの言葉を聞き、そっと後ろから抱きしめる。


「ぬ、主様!?」


「悪いなワカ。要らない気苦労をさせてしまっている様で。」


「ぬし・・・さま・・・ま、全くですっ。ホント・・・こんな気持ちにさせられた宿主は・・・初めてですっ。」


 自分を抱きしめる腕の袖をギュッと握る。


「ワカ、良い雰囲気の所悪いのだが、私もこちらに顕現したばかりでな。その、何と言うか・・・。ズルイ! 私も昔とは気持ちを入れ替えて、君主に甘えると決めたのにっ!」


 先程までのキリリ? とした雰囲気が一気に崩壊し駄々をこね出すナル。

 仕方なくワカと一緒に腕の中に包み込んでやる。


「あぁ、君主よ・・・とても良い匂いが致します。」


 恍惚とした表情を浮かべる二柱。とてもご満悦の様だ。


「あ、あのう・・・セイ様・・・。」


「何だ? ミーナも混ざりたくなったのか?」


「はい! では無く、いやいや、混ざりたいのはやまやまなんですけど・・・。」


 先程怒られたばかりなのが効いているのか、ハッキリと言おうとしない。


「大丈夫だ。誰も怒らないから言ってみろ。」


「・・・。では・・・。辺りも随分暗くなりましたし、そろそろレプト先輩の所へ行かないといけないのではないでしょうか・・・。」


 辺りを確認すると街灯がついている。

 確かにミーナの言う通りそろそろ行動を起こさないと、何が待ち構えているのか分からない初めての潜入作戦に支障が出るかもしれない・・・。


 抱きしめていた二柱からゆっくりと腕を解く。


「「あぁ・・・。」」


 至福の時間を惜しむ様に、ワカとナルの口から声が漏れる。


「悪いなミーナ、飯はまた今度な。」


「いえ、元はと言えば私が要らない事を言ってしまったのが原因ですから・・・、わっぷ。」


 うつむくミーナをいつの間にか成人サイズになったワカが自分の胸に押し込む。


「す、すまなかったな。」


 こっちも仲直りできた様だし、レプト先輩の所へ向かいますか。って言うか、俺良く晩飯食べそびれてるよな・・・。自分の腹を擦り少しだけ感傷に浸った。


「お気をつけて。」


 深々と頭を下げ見送るミーナに手を挙げ、5コー寮の方へ歩みを進めた。


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