39. 手紙読みました!
「セイ君、セイ君はっと・・・ん? 今日は一緒じゃないのか?」
レプト先輩が辺りをキョロキョロと見回し声を掛ける。
「あぁ、先輩それが・・・。アスタ様から手紙が届いたらしくて、物凄い勢いで寮に帰っちゃって・・・。」
ギョッとした表情を見せる先輩。
「そう言えば先輩もエル先輩と一緒じゃないんですね?」
「あっ、あぁ。エルも何故か実家から手紙が届いた様で、セイ君とは逆に落ち込んでしまって早々に寮へかえったからな。しかし、折角セイ君との距離が近づいたと思っていた矢先にアスタ様から手紙とは・・・、きっとセイ君にどれだけ良い寄る女が増えたとしても気にも留めないでしょうけど、自分が一番だと言わんばかりのタイミングっ。恐るべしアスタ様っ。しかし、エルもだが、この時期に揃って手紙が届くとは内容が気になる所ね。セイ君の所に行ってみましょう。」
「アスタ様は離れて見た事しか無いですけど、何だかとっても凄そうですねっ!」
憶測と感想を言い合い、こんな事をしている場合じゃないと顔を見合わせ2人は3コ―の一年寮に急いだ。
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俺はキョウコ先生から手紙を受け取ると荷物を片付け教室を飛び出した。
今すぐにでも封を切って中身を確認したいが、魔族側の重要な内容だったら他人の目に晒す訳にはいかないので、逸る気持ちを押さえ寮へ急ぐ。
いつもより寮までの道のりが長く感じたが、時間的にはいつもの半分位しか掛かって居ない筈である。
自室に入ると早速手紙を取り出すと、手に取り表裏をまじまじと眺める。これだけでも口元が緩んでしまいそうになるが、内容が重要な事だったらいけないと頭を振り気持ちを入れ替える。
アスタの印が施された蝋封に魔力を通し封を空ける。そのまま破っても良かったのだが、アスタの印をどうしても壊したくなかった。
便箋からゆっくりと手紙を抜き取ると、目を瞑り鼻を手紙に近付ける。
インクの匂いに混じって間違いなく懐かしいアスタの香りがする。アスタと離れて生活し始めてからまだ大して時間が経っていないというのに、酷く懐かしくとても落ち着く感じがする。
どれ位の時間アスタの香りを堪能していたのか、リラックスし過ぎて睡魔が俺の意識を刈り取ろうとしていた。
ガタンッ!!!――――――
完全に気を抜いていたせいもあって、急な大きな物音に体が跳ねた。
「セイ君っ! 大丈夫!?」
「ぜぇぜぇ、セイ・・・様っ・・・はぁはぁ・・・。」
大きな音がした方に目をやると、鍵を掛けたはずの扉が大きく開け放たれ、レプト先輩とミーナが居た。
レプト先輩は何ともないようだが、ミーナの膝に手を突き、前屈みで息を切らせているのを見る限りかなり急いで来たのだろう。
「えーっと、先輩? 言いたい事は沢山思いつくんですけど、一先ずどうしました?」
ノックも無しに勝手に入って来た挙句、きっと壊れたであろうドアに流石に笑顔が引きつり、おねぇちゃんと呼ぶのをすっかり忘れていた。
「えっ、えっと・・・、セイ君怒ってる? おねぇちゃんね、セイ君が心配でね。えっと、ドア壊してごめんね。あと、えっと、嫌わないで・・・。」
俺の表情が引き攣り、おねぇちゃんと呼ばれなかった事に先輩も察したのか、この状況をどうにかしようとかなり慌てている様子だ。
流石に俺もその様子を見ると、まぁいっかと思い表情と口調も自然と元に戻るが、ここはちゃんと言っておかないと・・・。
「もう、おねぇちゃん。ノックぐらいしてね、ドアまで壊して・・・。」
「ごめんね、ごめんね、セイ君。おねぇちゃん慌ててて、お仕置きしても良いから。あっ、そうだ今日はおねぇちゃんの部屋に泊まれば良いし。ねっ、ねっ。だから嫌わないでぇ。」
瞳を潤ませながら謝っているのは分かるんだが、途中から欲望に変わっている様な気がしてならない。
「まぁ、今日どこで寝るかは置いといて、分かってくれたなら良いけど。それで、何を二人して慌てていたの?」
ぜぇぜぇと息を切らしていたミーナが少し落ち着いたのか、ようやくまともに口を開く。
「いえ、私は慌てていたと言うか、セイ様が急に走って帰っちゃったから、置いて行かれたと思って急いで帰って来ただけですよ?」
ミーナから視線をレプト先輩に移す。
バツが悪いのか視線を逸らしていたが、観念したのか俯き左右の指先をくっ付け、人差し指だけをクルクルと回しながら話し始める。
「え~っと、折角最近セイ君と仲良くなってきたのにアスタ様から手紙が届いたと聞いて・・・、おねぇちゃんの事ほったらかされるんじゃないかと思って・・・(ボソボソ)。あっ、後、エルにも実家から手紙が届いてて、何やら落ち込んでいたから、セイ君も何かしら落ち込む様な内容が書かれているんじゃないかと思って! そう、可愛い弟が落ち込んでるんじゃないかと思ってっ!!」
後半を力強く言っているけど、前半の小声でボソボソ言っていた事がメインなんだろうなと思い、ため息を一つ吐く。
「まだ、手紙の内容は見てないよ。丁度今から見ようと思っていた所だよ。」
そう言い、俺は机に向い手紙を広げ目を通す。
【親愛なるセイへ。
まさかこんなに早くに連絡を取る事になるとは思ってもみなかったよ。
入学式早々からなかなか元気でやっている様だね。一応学院での事はキョウコから報告が来ているから大方の事は把握しているよ。
奴隷の件は了承しているから休みにはちゃんと連れて帰って来る様に。
セイの事だから学院の授業は退屈だろうけど、S・Aクラスのクエストは程々にしておけよ(笑)。
まだまだ話したい事は沢山あるがそれは帰って来た時に取っておくとして、これからが本題なんだけど、交流戦の予選の予選が学院で行われるらしいな。その事で筆を執ったんだが、魔王には話を通したから好きにやって良いぞ。セイは魔族側だが、正真正銘の人間だから本気を出した所で魔化したりはしないから大丈夫だろうと言っていたぞ。もう、隠すより逆に人間である事を逆手にとって情報を収集しやすい立場にした方が良いかもと、ため息交じりに言っていたぞ!
セイっ! ロテの名前に恥じない様になっ! 休みには良い報告が聞けるように期待しているぞ。
追伸、他のこちら側の者にも手紙が届いている事があるけど、あれは出場禁止の通知だから仲良くなった奴が落ち込んでいたら慰めてやると良いぞ。
じゃあ、休みを楽しみに待ってるよ。 xxx
アスタより。】
「アスタ様(笑)とか使うんだね、セイ君には特別って事かな? それに最後にxxxとかおねぇちゃん嫉妬しちゃうよ。」
いつの間にか二人が覗きこんで一緒に読んでいた様だ。
「良かったですね! セイ様っ! もう、コソコソしなくて良いですよ。それに期待されているみたいだし、頑張りましょう。」
全く、人の手紙を勝手に見てと思ったが、それ以上にミーナが言う様にアスタが期待しているという事が嬉しくて怒りはしなかった。
後、魔王さんが諦めたような感じで了承したのだろうと、何となく想像してしまい少し笑ってしまった。
「ねぇ、おねぇちゃん。って事は、エル先輩は参加不可って事なのかな?」
「えっ、あぁ、そうだね。エルは熱くなりやすいから、普段から気を付けているみたいだからね」
いつもの飄々としているエル先輩からは熱くなり易いというのが全く想像が付かなかったが、ふーんっと返事を返しておく。
深呼吸をし手を前に組み上に挙げると、うーんっと背伸びをする。
「魔王さんからの許可も下りてるみたいだし、アスタが期待しているんだ。頑張らないとねっ!」
明日キョウコ先生に学院内予選の出場を報告しようと決心した。
「ところで、セイ君・・・。今日はおねぇちゃんと一緒に寝るよね?」
ドアの修理が完了までの寝床の確保をどうにかしないと・・・。




