38. 告知されました!
翌日オックンが何の事を言っていたのか、やっと意味が分かった。
全く厄介な事になってしまった・・・。
数時間前―――
クラスでの朝礼が終わりキョウコ先生が何やらプリントを全員に配り出した。
抜き打ちのテストかと一瞬ざわつくが、当てが外れてクラスは静寂を取り戻す。
「はーい、皆プリント行き渡った? じゃあ説明するね~入学式の時に渡したと思うけど、改めて今配った行事予定表を見てくれる~。」
キョウコ先生の言葉に何か転記ミス等があったのかと、全員プリントに目を凝らす。
「今日から二ヶ月後の長期休暇のすぐ前を見てね~。」
そう言えばアスタが言っていた実家に帰省出来る休暇の事を思い出したが、その前に書かれている赤文字に嫌な予感が過ぎる。
・前期試験
・交流戦(予選)
「皆見た~? そこに赤文字で書いてる前期試験はまぁ、ちゃんと勉強していれば良いとして、もう一方ね。交流戦(予選)ってあるでしょ、最初はもう少し日にちが近づいてから説明する予定だったんだけどね~、ちょ~っと事情が変わったから、説明するわね。」
やっぱりか・・・、具体的な内容は知らないが、昨日オックンが言っていたのはきっとこれだな。
「交流戦っていうのはね、ここからかなり離れた土地の学院と、競技や試合を通してお互いを高め合いましょうっていう行事なの。卒業後ギルドに入る予定の生徒はクエストの関係で遠くの土地まで行く事もあるでしょうし、ギルド内にも様々な土地から優秀な人材を招くから、後々のコミュニケーションにも役立つわ。」
学院ってここだけじゃ無かったのかよ、って言うか他にどんな施設があるんだよ・・・。
急な発表に困惑したが、知っていましたという顔の奴もチラホラ居る。
「は~い、静かにして。他にもウチと同じ様な教育機関があるって知らなかった人も居ると思うけど、この広い世界にここだけの学院じゃ足りないからね、遠くの土地には他にも学院があるの。ここから一番近い機関では魔術学院では無いけど、騎士養成学院があるわ。貴方達と同じ様にギルドに入る為に近接戦闘を学ぶ者や、王都に仕える騎士を目指す子達が通っているわ。モンスターの中には魔法が効き難い奴も居るから、ギルドに入る予定の生徒は少なからずこの先パーティを組む事になるわ。」
キョウコ先生が黒板にチョークを走らせながら説明を続ける。
「前置きが長くなったけど、この交流戦3年生が主体で参加するの。」
キョウコ先生の言葉に 「なんだよー。」 「私達も参加かと思ったわ~。」 と教室内から安堵の声が漏れるのを聞き、キョウコ先生が追加でプリントを配り始める。今配布したプリントには競技一覧が書かれている。
全員に行き届いたのを確認し、キョウコ先生が説明を再開する。
「でね~、今年から公平を期す為に交流戦前に全学生対象で、学院内でも予選をしようって事になったの。」
『えーっ!』『ムリムリっ!』一気に教室内が騒がしくなる。隣のクラスもガヤガヤとしているのが耳に入る。こちらの教室と同じ状況なのだろう。
「はいはい、静かにね~。1年生は一応希望者って事になってるけど、先生の推薦者は強制だからよろしくね~。」
キョウコ先生がニコニコとこちらを見ながら話す。
[良かったですね、主っ! 合法的にヤレますよっ。]
[[あのキョウコと言う女は言いきれないと言ってましたが、間違いなく主様がトップに決まってます!]]
〈ご主人の勝利の為に私頑張りますっ。〉
〈〈君主の覇道の第一歩しっかりとご助力致します。〉〉
何だか八雷神は張り切っている様だが、ハッキリ言って乗り気じゃ無い。実力を示せばやっかみは確かに減るだろうが、魔王さんから言われている「目立つな」と言う指示に引っ掛かってしまう。
モヤモヤと考えていると、キョウコ先生が話を続ける。
「ちなみにね~、学院の代表に選ばれたら、多少前期試験の追試ラインを下げてあげても良いかなぁ~って思ったりもしているから頑張ってみるのも良いと思いますよ~。後、二ヶ月後の交流戦は予選だからあれだけど、本選はかなり大きな会場で行われるから、ギルドのお偉いさんをはじめ、様々な招待客、そして選手の保護者も見に来れるから親御さんもきっと喜ばれると思いますよ~。」
キョウコ先生の言葉にピクリと反応する。
本選に進んだらアスタも見に来るかな・・・、喜んでくれるだろうか・・・。
イヤイヤ、そんな事の前に魔王さんの指令があるから変な事は考えるな。
ブンブンと頭を振り、思考を振り払う。
周りは前期試験の追試ラインが下がるかもと聞いて盛り上がっている。まさかなと思い、そろりと横を見るとご多分に漏れずミーナも目を輝かせていた。
何と言うか、ミーナが追試になるかもしれないと自ら思っている事が悲しい様な、情けない様な気分になり、ため息を一つ吐く。
プリントの端を破ると指先でコロコロと丸め、軽く魔力を込めてミーナに向け指先で弾く。
「きゃんっ!」
見事にミーナの頭に丸めた紙クズが命中する。
「ん~ミーナちゃん、どうかしました~?」
「い、いえ、何でもありません。」
キョウコ先生の声掛けに、はははっ、っと作り笑いを浮かべミーナが返事をする。
その日の授業と授業の間の休憩時間、昼休みと学内予選の話題で持ちきりだ。
「セイ様、セイ様、セイ様はやっぱり競技じゃ無くて試合に出るんですよね?」
休み時間にミーナが声を掛けて来る。
「いや、俺は出ないよ。って言うかミーナ、追試ラインに反応し過ぎだ。俺が教えているにも関わらず追試になるって思っている時点で俺はガッカリしたぞ。」
「ごめんなさい・・・。どうしても座学は苦手意識があって・・・。そうですよねっ! 最初からダメなイメージじゃダメですよねっ!」
拳を握り気合いを入れる。
その調子で頑張れば、あの意味の無い教本の内容で追試になる事はまず無いだろう。
午後の授業が終わり、寮に帰る為片付けていると珍しくキョウコ先生が教室で話しかけてきた。
「どころで、セイ君・・・。」
「出ませんよ?」
「え~、まだ何も言ってないのに~。折角良い物持って来たんだけどなぁ。」
他の生徒もまだ残っているのに、生徒指導室みたいな態度で話してて大丈夫かと、こちらが気を使ってしまう。
「それで、良い物って何なんですか?」
期待など微塵もせずにキョウコ先生に聞いてみると、意外にもビックリするような物を持って来ていた。キョウコ先生が小声で話しながら封筒を渡してきた。
「アスタちゃんからよっ。」
思わず勢い良く立ち上がってしまい、椅子が勢い良く倒れ注目の的になったが構わず封筒を手に取ると、手早く変える準備を終わらせ寮へ駆けだした。
「ちょ、ちょっとセイく~ん、もう、ここで読んでって意味だったんだけどなぁ。」
ボソボソと呟くキョウコ先生に、一礼してミーナも慌てて教室を後にする。
「セイ様~、待って下さ~い! 置いて行かなくてもいいのに~。」
慌てて追いかけるミーナが靴を履き替えると、勢い良く校舎から飛び出す。
靴を履いた勢いのまま走り出したせいで、丁度通りかかった目の前の人影にぶつかってしまう。
「痛たたっ、すっ、スミマセンっ! 急いでて前を良く見ていませんでした。」
すぐさま謝罪の言葉を口にし、深々と頭を下げる。
「こらこら、そんな勢いで出てきたら危ないぞっ。ってミーナじゃないか? そんなに急いでどうしたんだ? セイ君の姿が見えない様だが、何かあったのか?」
「えっ?」
顔を上げるとそこに立っていたのはレプト先輩だった。




