37. 忠告されました!
翌日、学院へ行くと3コーの一年生には昨夜の事は緊急時の演習として伝えられた。
キョウコ先生に個人的に聞いてみたが、何か問題・異変があった際には一年生は戦力不足、足手纏いになるので演習として緊急事態に慣れさせ、いざという時には落ち着いて逃げられる心構えを作っているらしい。
2年に上がり、緊急時の戦闘要員、戦力として認められた者は緊急放送で伝えられるコードが教えられ、待機、招集等の指示に従うらしい。ただ、2年で招集される程の人材はほぼ居ないらしく、ほぼ待機命令からの2年生の避難指示及び、1年生の避難誘導員として動くことになる事がほとんどの様だ。
今回のような人為的緊急事態はそうそう頻繁にある事では無いが、緊急事態に関しては全くないという訳でも無いらしく、天災や通常モンスターの襲来はあるらしい。
自然発生のモンスターに関しては予測が出来ないので起こる時は起こるし、起きない時は起きないと、年度によってもバラバラだと言う事だった。
「セイ様〜! お昼ご飯行きましょ!」
午前の授業が終わりミーナが声を掛けてくる。
「あぁ、行こうか。」
「どうしたんですか? セイ様、何だか上の空ですよ?」
「ん? いや、ちょっと昨日の事をちょっと考えてた。」
「あ〜、セイ様凄かったですもんね!」
「いや、そうじゃなくて人為的って言うのが気になってな。町を襲おうとしたのか、学院を襲おうとしたのか・・・。」
ミーナと昨日の事を話しながら食堂へ向かっていると、知らない顔の男子生徒に声を掛けられた。
「お前、3コー1年のセイ=ロテだな?」
「はい、そうですが、どちら様ですか?」
3コーの制服を着ているということは2年か3年か・・・。
「俺は3コー2年のオックだ。お前、3年に交じって討伐に参加したらしいな? 2年にも討伐に参加出来る実力者は居るんだ、アピールしたい気持ちも分かるが、順序は守れよ。じゃないと2年から不満を持った者が出るからな。言いたい事わかるよな?」
オック先輩の言いたい事は何となく理解した。要約すると、調子に乗って目立とうとするなって所か・・・。
とりあえず、先輩の言いたい事は分かったと頷いておいた。
「2年はお前らより先にギルドに入るんだ、少しでも評価が欲しい奴ばかりだからな。一応忠告はしたぞ。」
全く、こっちだって目立ちたく無いんだけどな。確かに昨日は隠密行動に失敗して見つかったが、俺にも人間側の動向を探るという使命がある。
正直なところ多少の待遇に差はあれど、ギルドなんて別にどこだって良い。
魔族に対して何か仕掛ける時は、一つや二つのギルドで攻撃を仕掛ける訳がない。どこに居たってそういう話は入ってくるだろう。なので、評価が欲しくて動いていると思うのはお門違いだ。
まぁ、本当の事なんて言えないから目立たないように更に気を付けるか・・・。
「やれやれ面倒だな・・・。」
「もう、なんなんですかあれっ! まるでセイ様がズルしてるみたいじゃないですかっ! セイの実力知らないからあんな事言うんですよ絶対。 ベーッだっ!」
『ベーッだっ!』
ミーナに続いて八雷神まで舌を出している様だ。
その後、食堂で昼食を取り午後の授業の為、教室に戻った。
放課後キョウコ先生を呼び、相談の為いつもの如く生徒指導室を使わせて貰う。
「先生聞いて良い?」
「答えられる事だけにしてね〜。」
この前からこの返しが定着しつつあるな・・・。
「先生答えられない事多くないですか?」
「え~、そんな事無いよ~。セイ君が答えられない事を聞く事が多くなってるんだよ~。」
今回は特に何かを知りたいと言う訳ではないから良いが、どうしても必要な情報なら他の手段を取るしかないかと思い、今日の2年生の事を相談した。
「そうね~、昨日のはある意味事故だもんね~。まぁ、2年生の気持ちも分からないではないけどね。贔屓する訳じゃないけど、私からしたら正式に試合なり戦闘なりしてないから適当な事は言えないけど、私の見立てでもセイ君はこの学院でトップクラスの実力があると思うわ。単純な魔力量やこの前見せて貰ったスピードなら断トツだけど、相性とかもあるだろうし、実戦経験の少ない今は足元を掬われる事もあるかもしれないから、トップとは安易に言えないけど・・・、まぁ無理にセイ君を呼ぶ必要は無いにしても、それでも討伐隊には入って当然の実力だし・・・。」
キョウコ先生の言葉が途中から独り言のようになり、ブツブツと若干聞きとり難い。
「・・・キョウコ先生?」
「よしっ、この件はちょっと預からせて貰うわっ。」
そう言うと急に立ち上がり、いつもとは逆に先に部屋を出ていく。いつもの緩い感じではなく、ハッキリとした物言いだったが、何が「よしっ」なのか良く分からない。
「あっ、緊急放送のコードについて教えて貰い損ねた・・・。」
仕方なく大人しく教室に戻り、ミーナと寮に帰る事にした。
「セイ様、先生に何の用だったんですか? あっ、もしかして今日の感じの悪い2年生の事、言いつけてやったんですか?」
「あのなぁ、言い付けるって・・・。いや、やっかみを受けなくて済む方法が無いかなと思ってね。」
ここから少し声を小さくし、話を続ける。
「この先ギルドのメンバーとなる人間側の実力は知っておきたいだろ? キョウコ先生が居るから変な事は無いと思うけど、一応何が行われているか調べたりするのも俺の任務だからな。」
「そうですね。」
ミーナも合わせて小声で返事をする。
「あぁ、そうだミーナ。お前も同好会等には入ってないんだろ? 座学で分からない所が無い時は、寮に帰ってから魔力操作・魔法・肉体強化しての移動の練習するからな。」
驚いたのか口をパクパクとさせるミーナ。
「セ、セイ様。それは初耳ですよ?」
「あぁ、今日思い付いたからな。授業でも実技が始ったし、昨日のミーナを見て流石に何か緊急の時、やられたり、捕まらずに逃げられる位は特訓しないとダメだなと思ってな。」
「あ゛ぃ・・・。昨日の事を言われたら何も言えません。」
自分でも思い当たる節があるのだろう、ミーナも諦め首を縦に振る。
「そんなに心配するな、倒れるまでやったりはしないから。」
「本当ですか!」
「あぁ、ミーナには足り所が多すぎるからな。飯もちゃんと食って、次の日の授業もちゃんと受けれる様に倒れる寸前で止めてやるから。」
「ちょっとでも軽く考えた自分が悲しいです。」
トボトボと足取りが重くなるミーナと寮に戻り、早速今日から特訓を開始した。
俺自身も八雷神をまだまだ上手く使えていない事を思い知ったので、ミーナを見つつ自分の訓練をすることにした。
数日後、寮への帰りに聞き覚えのある声に呼び止められた。
「セイ=ロテっ!」
振り返ると、少し前に忠告をしに来た2年生が立っていた。
「あっ、えーっと、オックン先輩。」
「オックだっ! 勝手に君付けにするな。まぁそれは良いが、やってくれたな。まさかこんな方法をとって来るとは思わなかったぞ。2年にもやる気を出してる奴が結構出てるから、結果的には良かったかも知れないが、首を洗って待ってろよっ! 簡単にやられるなよっ!」
そう言うとオックンは去って行ってしまった。
「セイ様、今のは何だったんでしょうね?」
「いや、良く分からないが面倒事になった様な気がするな。」
一抹の不安を抱えながら寮に戻り、日課の訓練を行った。




