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 36. 許可しました!

 待機指示が早めに解除されたのか、寮はいつも通りの静寂を取り戻していた。


「セイ様~、疲れましたね~。」


「ミーナ、お前何もしてないだろ?」


「あぅ・・・。これでも、強化して頂いた足に体を合わせて動かすとか、結構苦労したですけどぉ。」


 ミーナが壁に片手を突き項垂れる。どんよりとしたオーラを纏っているので仕方なくフォローを入れておく。


「ま、まぁ、最初からは無理だよな。これからも頑張れよ。期待してるぞ。」


「はいっ! 早くお役に立てるように頑張りますねっ! じゃあセイ様、私部屋に戻りますねっ。おやすみなさい。」


「あっ、あぁ、おやすみ。」


 こういう切替の早さは見習わないとな。俺はどうも引きずってしまう所があるからな・・・。

 ミーナに手を振り、自室へ帰る。


 部屋の明かりを付けると、ポンッとサクが飛びだして来る。


「あった、あった。私のパンツ。」


 紫色の下着を手早く拾い上げると、そそくさと履き始める。


「ご主人・・・、こういう所はあまり見られると恥ずかしいです。」


 今日の一件以来、妙に艶っぽく喋る様になったサクが頬を赤らめる。

 脱いだり、脱がされたりするのは良いが、履く時は恥ずかしいのか・・・、女心は難しいな。


「あぁ、ごめん。なぁ、サク。昨日と違うデザインだよな? その下着。」


「はい、そうですよ? ご主人しっかり昨日のパンツも見てたんですねっ。」


「見たというか、見えたんだよ。」


「もう、恥ずかしがらなくても、言ってくれれば好きなだけ見せてあげますよ?」


 ワンピースの裾を持ち少し上に持ち上げる。


「そうじゃない、八雷神は俺の中から出て来るだろ? その服とか下着ってどっから持って来てるって言うか、どうなってるんだ?」


 サクと向かい合ったまま、部屋がシーンと静まり返る。


「・・・、今日の戦闘大変でしたね。レプトさんって凄く強いんですね~。あっ、ご主人シャワーにします? それとも仲良しします?」


 露骨に話題を変えやがった。聞いたらダメな所だったのか? まぁ、さしてこちらに問題は無いから良いんだけど・・・。


 ベッドへ腰掛け一息付くと、もう一柱八雷神が中から出て来る。

 何となく八雷神が外へ出る時は感覚的に分かる為、視線を下へ向け出て来るのを待った。


 ポンッと出てきたのだが、足元しか見えない。クロやワカなら完全に全身が見える位置に視線はある。しかも、出て来てすぐ飛び付いて来るはずだがそれも無い。

 一瞬サクが頭を過ぎったが、サクは今しがたそこでパンツを履いた後、俺と話をしていた。

 って事はこの目の前にある足は・・・。


「お初に御目にかかりますっ。君主っ!」


 声のした方へ視線を徐々に上げていく。

 ヒラヒラとした短めのプリーツスカートが視界に入る。更に上へ視線を上げると、金髪の少女と言うには大人びているというか、若い女性が立っていた。


なる・・・・。」


「はいっ、鳴雷なるいかづち です。」


 喰い気味に返事が返って来る。


「今日はありが・・・。」


「いえ、君主に仕えるのは八雷神の務めですので。」


「・・・。」


「そんな事はありません。」


 まだ何も言ってないんだけどな・・・。気が早いのか?


「あっ、いえ、以前の君主は回りくどい説明は億劫だから、中に居る時の様に心を読んで会話しろと言われまして・・・。」


「緊急の時はありがたいかもしれないけど、俺はナルともちゃんと言葉を交わしたいんだけど?」


「はっ、申し訳ありませんっ! 君主のお気持ちも汲まずに、自分の考えで動いてしまいまして。私も君主とお話がしたかったですっ。」


 指先までピンと伸ばした起立状態から、勢い良く片膝を突きひれ伏す。


 何て言うか、今までにない位お硬い八雷神の様だ。

 しかし、スカートが短くて片膝着くと中身が丸見えで目のやり場に困るな、髪の色と下着の色を合わせるのは流行っているのか?


 みるみる内にナルの顔が紅潮し、ゆっくりと立てた膝を崩し、チョコンと正座をする。

 今度はご丁寧に太ももと太ももの間にスカートを挟み、その上から手も一緒に挟んでいる。


「おっ、お見苦しい物をお見せ致しました。」


「可愛いと思うよ? 黄色の下着も。」


 ナルは俯き耳まで真っ赤に染まっている。


「鳴雷はちょっと真面目過ぎなのよね~、もうちょっと力抜いた方が良いわよ。」


 サクが横からまとわりついて来る。


拆雷さくいかづち・・・しかし、君主に対してそのような行為は無礼かと・・・。」


「だからね~、そこが硬いのよ。ご主人はそんな事気にしないよ、むしろ今の態度の方が嫌なんじゃないかな~?」


 サクが俺の首に抱きつき頬を寄せる。


「と言うか拆雷さくいかづち 、些か君主に甘え過ぎではないか? 私達八柱を御身に宿すお方だぞ。」


「そんな事言ったってしょうがないでしょ、もう、身も心も捧げたんだから。昔とは違うわよ? 私はご主人の為に生きるの。ご主人の前に立ちはだかる壁は全て切り裂く。その時の為にこうやって力を蓄えてるのっ。」


「そうそう、鳴雷も主と遊びたいでしょ? 知ってるよ~。」


「そうですよ、我慢は体に悪いですわよ? 早くご主人にくっ付いた方が幸せになれますよ。」


 ポンッ、ポンッとクロとワカが飛出し、クロは背中にワカは腕にしがみ付く。


 三柱の誘惑に負けまいとプルプルと体を震わせていたが、とうとう我慢が出来なくなったのかナルも小さくなる。


「わ、私も君主にかまって貰いたーい!」


 と叫びながら飛び付いて来る。体に手を回し胸元に顔を埋め幸せそうな表情を浮かべる。

 今日助けて貰ったお礼もあり、ナルの頭を優しく撫でる。


「こ、これは不味いですね、君主にこの様なご褒美を頂いては私、骨抜きになってしまいそうです。」


「良いんじゃない? どっちにしろ、ご主人が居なければ私達は存在出来ない。何かの時はご主人の為なら何だってやる。その覚悟さえ忘れなければ、それ以外は甘々で楽しく過ごしたら。私はもうご主人と楽しい事も気持ち良い事もいっぱいするって決めたからっ!」


 サクが何やら決意表明の様な事を言っているが、俺はそんな話初めて聞いたぞ?


「そんな事急に言われても・・・。君主は君主ですし・・・。」


 思いっきり抱きつき、頭を撫でられ幸せそうな顔をして今更な感じもするが、ナルはナルで色々あったんだろう・・・。


 吹っ切れたようにキッとこちらを向くナル。


「君主っ!」


「ん?」


「わ、私も楽しく過ごしたいですっ! 中から見てました。黒雷も若雷も拆雷も楽しそうでした。私っ、羨ましかったです! だからっ、だから私も・・・。」


「良いんじゃない?」


 今度は逆に俺が喰い気味の返答を返す。


「え?」


「良いんじゃないか? 昔はどうであれ今の鳴雷なるいかづち はナルで、俺の大事な八雷神の一柱だ。君の望む様にすると良い。」


「はいっ! 君主っ!」


 満面の笑みで答えるナル。


 その夜は流石に一つのベットで四柱と俺で寝るには狭かったので、クロとワカがサクとナルに場所を譲り3人で寝ることになった。


 俺を挟む様に幸せそうな寝顔の2人を見ているとこっちまで顔が緩んでしまう。


 俺は横になったまま腕を天井に向け突き出し、今日の事を振り返る。

 先輩を失いそうになった時の焦り、緊張感そして、恐怖。

 ナルが力を貸してくれ、足が千切れそうな痛みを押し殺して放った三鳴と一鳴。

 ゴーレムの拳を受け止めた時の痛み、重み。未だに手に残る痺れ。


「まだまだ、弱いなぁ・・・。不謹慎かもしれない、でも、楽しかったな・・・。」


 極度の緊張感に久しぶりの全力で疲れていたのか、その言葉を漏らした所で意識を手放し眠りについた。

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