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 33. 見学しました!

「キョウコ先生、ゴーレムって強いんですか? 先輩や先生たちの感じからすると大した事無い様な感じしますが、本でしか見た事無いんで実際の所どうなんですか?」


 先輩達がゴーレムに向い正門を出るのを見送り、キョウコ先生に質問する。


「ん~、そうね~、強いか弱いかで言うとかなり強いわよ? ただ倒す方法がメジャーだからね~。しかもこっちは魔術師集団、近接戦闘の騎士ばかりだとかなり苦戦するでしょうけど、遠距離攻撃のエキスパートだからね~。まぁ、百聞は一見にしかず。そろそろ追いかけて見学しようっか。」


 まぁ、先輩達がミスるとは思い難いが、念の為ミーナの足に再び魔力を流しスピードを引き上げておく。

 先輩達が正門を抜けて数分後、教員達と共に町の付近まで来ているゴーレムを目指す。


「セイ様、セイ様はゴーレムの倒し方って知ってるんですか?」


「ミーナ・・・、さっきの男の先生が言ってたのちゃんと聞いてたか? 額の文字の頭文字を消すのが定例なんだよ。」


 キョトンとするミーナが質問を続ける。


「でも、モンスターなんですよね? そんな事で倒せるんですか?」


 確かに俺も書籍で読んだだけで実際ゴーレムと戦った事が無いので、改めて言われると本当にそれで自信が無い。


 言葉に詰まる俺を見てキョウコ先生が助舟を出す。


「そうね~、ミーナちゃんの言いたい事も分かるわ。ただ、ゴーレムは分類としてはモンスターなんだけどね~、人工的に作られたゴーレムがほとんどなの。だからさっき、術者は不明って言ってたでしょ? セイ君たちを追いかけたのも、学園に誰か入った形成は無かったから可能性は低かったけど、もしかしたらその術者かもしれないから、執拗に追いかけたんだけどね~。」


 座学は苦手のミーナが珍しく質問を続ける。


「じゃあ先生、ゴーレムって新しい物ばかりなんですか? 普通のモンスターみたいに自然と湧いたりしないんですか?」


 座学では挙手をしての質問等は全く無かったミーナの質問に、キョウコ先生が思わず笑みをこぼす。


「ミーナちゃんがこんなに勉強熱心なの先生嬉しいな~。ミーナちゃんの言う通りほとんどが真新しいゴーレムね。ただ、稀にふる~いゴーレムも居るわよ。まぁ、ほとんどがどこかしらの遺跡等を守る為に創られた様なゴーレムね。そしてもっと稀なのが野良ゴーレムね、私も実際見た事が無い報告として残っているって位だから眉唾物なんだけどね~。」


 ミーナとキョウコ先生の講義を聞いているうちに、町の外側をクルリと回り町の入口に辿り着いた。

 もっと近くまで来ているのかと思ったが、意外とゴーレムは町から離れた所に居る様で、町は未だ通常通りといった様子だった。


「さて、もうちょっと近寄ってみましょうかね~。ここからだと、まだ良く見えないもんね~。」


 町にすら出て無かった為、何だかとても新鮮無気分だ。

 耳を澄ますと、遠くでバキバキと木の折れる音がする。先輩達が既に戦闘に入っている様だ。

 アスタ城以来真面目に実戦をしていなかった為、自分が戦う訳でも無いのに早く戦闘の現場に行きたいと気持ちが逸る。


「こらこら、セイ君~、君は今回見学だからね~。」


 流石実戦向きのキョウコ先生に気持ちの変化を見透かされてしまう。戦の最中での心理戦では経験の差が出そうだ。


 キョウコ先生に気の無い返事を返し、対ゴーレムの戦場に赴く。


「はぁぁぁっ!」


 掛け声と共にゴーレムに向け様々な魔法が飛び交っている。そんな中、レプト先輩とエル先輩を探す。

 前線で戦っていると思い、攻撃してる生徒を目で追っていたが先輩達の姿は無い。

 視線を後衛に変えキョロキョロしていると、忙しなく動き回る先輩達の姿を発見した。

 離れて見ているからこそなのか、補助の魔法を巧みに使いゴーレムの気を引き、前衛が攻撃に集中出来る様に動いているのが良く分かる。


 不快だが、ナキアも補助と言う立場なのだろう、先程からひたすらにゴーレムの気を引き、攻撃を躱し続けている。

 ジル先輩が言っていた子供と遊ぶようにの意味が少し分かる程、全く危なげなく舞う様に攻撃を躱し続けるナキアに一瞬だが目を奪われた自分が嫌になる。


 今まで自分一人で戦い、如何に敵を滅ぼすかを考えて来た俺にとっては、とても新鮮な戦い方に見えた。

 きっと先輩達も本気を出せば、一人で難なく敵を倒せてしまうだろう。これも魔王さんからの指示なのだろうか?


 ハッキリ言って先輩達は目立つ存在だ。公私に渡り何かと目立っている。

 それが戦いにおいては、どうして後衛を務めているのか俺には分からなかった。


 4体のゴーレムのうち、2体は額の文字を消され既に沈黙しているが、何か違和感を感じ先生に質問する。


「キョウコ先生、先に倒した2体と何だか違和感がある様に感じるんだけど?」


「へ~、どんな風にかな~?」


 いつになく意地悪な返事が返って来る。


「どこって言われても、全部だよ、強度もスピードも同じゴーレムとは思えないんだけど?」


「ん~、そうね~最初の二体が早くに倒されちゃったから、気にする暇無かったかなぁ~。ゴーレムに流れる魔力量自体違うわね~。術者が違うのか、作製方法が違うのか、見た目を同じに創ったのはワザとかしらね~。」


 後衛の先輩達は危なげなくこなしている様だが、前衛が攻め切れない状況が続いている。

 そこだそこだと思うが、なかなか決定打を打て無い事に見ているこっちがもどかしい気分になる。


 仕方なくと言った感じか、後衛の先輩達が前に出て更にゴーレムの気を引き、大振りの攻撃を誘発させる。

 その隙を突き前衛の攻撃がゴーレムの額に命中し、ゴーレムが膝から崩れ落ちる。


「ふぅ、やっと終わったか。見ているだけってかなり心臓に悪いな。」


 ただ先輩達の戦いを見ているだけなのに、こっちの方が疲れてしまった。


「ふふっ、セイ君、肩に力入り過ぎよ。上級生の力を信じてあげないと~。」


「キョウコ先生は慣れているかも知れないけど、俺は初めて見たんだ。変な緊張感があったよ。」


 あれから急にミーナが静かになったと思ったら、ミーナも拳を握り締め食い入る様に戦闘を見ていた。実際の戦闘経験の無いミーナには色々な意味で良い勉強になったに違いない。


 先輩達は3コ―、5コ―で集まり笑顔で話している。


「セイくーん! 見ててくれた?」


 エル先輩が手を振っている。

 俺もエル先輩に賞賛の意も込め笑顔で手を振る。


 レプト先輩はゴーレムの沈黙を確認しこちらに振り返る。

 いつも凛としているが、戦闘中は更に拍車が掛かりその真剣な横顔は鳥肌が立つ程美しかった。


 うん、確かに目が覚める程美しかったんだが、俺と目が合った途端に表情が緩み、完全におねぇちゃんモードに突入する。


「セイく~ん!」


 大きな声で俺に声を掛け、レプト先輩がこちらに駆けて来ようと一歩踏み出した瞬間、沈黙し動くはずの無いゴーレムがピクリと肩を動かす。


 一瞬の事だった。完全にゴーレムの動きでは無いスピードで拳が振り上げられる。


「おねぇちゃんっっ!!」


 レプト先輩に向け声を張り上げ、魔力を全開で体に流す。蹴り上げた足が大地をめくり上げ、今出せる全力で走り出すが、既に振り上げられた拳は先輩に向け放たれている。


 間に合わないっ! そう思った瞬間、聞いた事が無い声が俺の中に響いた。


 〈〈まだ、間に合いますっ!〉〉

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