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魔族に拾われたので魔族の為に生きてみようと思います。  作者: トリ天
 1章 魔族に拾われて~幼少期~
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  3. 聞かされました!

 次の日僕は城の中を案内され、城の住人、アスタの部下を紹介された。


「皆の者、この子が先日私が拾ってきた人間の子供だ。私はこの子を育てる、これは既に決めた事だ。皆も協力して私の・・セイを一人前にしてくれ。」


 あからさまに嫌な顔をする者、友好的に手を振る者、無表情の者、様々居たが、僕は自分を救ってくれ私の為にと言ってくれたアスタの期待に応えたい、ただそれだけが寂しい心不安な心を支えてくれていた。


 アスタは多忙らしく、城を開ける事が多々あった。

 その間はぼくには教育係が付いた。読み書き、計算、魔法に白兵戦。

 驚いた事に、教育の中に女性の扱い方と言う物が含まれていた。身体的違いやキスの仕方、体の触れ方等々赤面する様な内容も多々あった。


 そういった教育を受けていく上で、幼心に気がかりな事があった・・・。

 私の・・セイと言ってくれたのだが、僕が他の人と色々するのは嫌じゃないんだろうか? 私の・・セイと言ってくれけど、アスタは自分だけのアスタじゃ無いんじゃないだろうか・・・。


 考えれば考えるほど胸のモヤモヤは消えない、仕方なく思い切ってアスタに聞いてみる事にした。


「ねぇアスタ、僕が他の人と・・・その、キスしたりするのは、嫌じゃないの?」


「そうだな、嫌じゃないのかと聞かれれば少し困るが、相手は私の家族だし、私達魔族は人間とは感覚が少しズレているかもしれないな、だが、セイが他の者に傷つけられたり、奪われたりしたら、私は私の持てる全勢力、全武力を以て報復する。これじゃ駄目か?」


「駄目じゃ無い! ありがとうっ! アスタ大好きっ!」


 アスタが自分だけのアスタかどうかはまだ分からない、でも、アスタは大切に思ってくれている事が分かり、嬉しかった。


 教育において苦手に思う物もあったが、苦痛では無かった。

 アスタが帰って来た時、沢山褒めてくれるからだ。

 もちろん、夜は一緒に寝てくれるし、出来るだけ一緒に居る様にしてくれているのがとても嬉しかった。


 僕はアスタに褒めて貰う為、期待に沿えなくてガッカリされない為、必死だった。寝る間も惜しんで文字を読み、次の日痛みで起き上がれなくなるまで手合わせをし、昏睡状態に陥る程、魔力の限界まで魔法を行使した。

 月日を重ねる内に、生産性の無い穀潰しと僕を疎ましく思っていた魔族も、少しずつ見る目が変わって来た。

 魔族の子供と比べても、成長スピードが違い過ぎるらしい、学問はもちろんの事、何より戦闘、魔術において、異常な程吸収が良く、3年が経つ頃には、教育係ではぼくの相手を出来る者が居なくなった。



 アスタの城に来て、4年目のある日。


「セイ~っ!」


 長めの用事から帰って来たアスタが、文字通り飛んで来た。

 ガッチリと抱きしめられ軽く唇を重ねると、クンクンと僕の匂いを嗅ぐアスタ。長期間城を空けて帰って来た時の恒例になっているスキンシップだ。


「あぁ~、セイの匂い、久しぶり~。」


「お帰り、アスタ。」


「セイ、また、背が伸びたんじゃないか? 中身もちゃんと成長してるかぁ~?」


 痛い位の頬ずりをし、体を撫でまわす。


「これは、後の楽しみに取っておいて、セイ、来年な、お前を魔王に会わせるから。」


「え?」


 アスタの口から発せられた言葉に驚きが隠せなかった。


「魔王と言っても、今じゃ、名ばかりだから、そう、構えなくていいよ。」


「そうなの?」


「まぁ、強いと言えば、強いけど、温厚な奴だからな。」


「それで? どうして僕が魔王さんに会うの?」


「いや、人の子拾って育ててるけどって自慢しちゃってね。」


 ペロッと舌を出し、やっちゃったという顔をするアスタ。


「う、うん。」


 何と言って良いか分からず言葉に詰まってしまう。


「人との争いが無くなったとは言え、いつまた人間共が攻めてくるか分からないからな、魔族の中でも人の姿に近い有力者の子供は姿を変え、ギルドって機関が運営している学院へやっているんだ。それで、セイも学院へやらないかという話が上がってな。」


「ふーん、ねぇ、アスタ、学院って何する所なの?」


「同じ位の年の奴が集まって、戦闘や勉強をする所だ。」


「僕は、別にここの勉強で十分なんだけどな・・・。」


「何言ってるんだ、お前も来年15歳になるんだ、もう少しすれば、しっかり稼いで貰わないとなっ!」


 あぁ、そういえば働いたのって村があった頃に、親の手伝いで畑仕事以外した事が無い・・・。


「それで? 学院へ行ってどうすればいいの?」


「学校でしっかり勉強して、卒業後は、ギルドで普通に働けば良い。」


「え? でも、僕、アスタの、魔族の為に働きたい。」


「ごめんごめん、セイが魔族思いの良い子だって事は私が一番良く分かってるからな。言い方が悪かったな。ギルドに入って、人間が魔族に害を成していないか、魔族に攻撃を仕掛けようとする動きはないか、見張って欲しいんだ。」


「・・・うん。」


 本当にそんな事で、アスタの役に立てるのか、不安で、返事が小さくなる。


「それにな、セイ、ギルドの仕事は確かに人間からの依頼が多いが・・・、いや、まぁ、良い。」


「え~、そこまで言って、気になるよ。」


「そ、そうだ、モンスター討伐とかいっぱいあってだな、結構良いお金貰えるみたいなんだよ! 強いモンスターいっぱい倒したら、弱い魔族もきっと助かると思うなぁ~、そのお金で、私に美味しい物とか食べさせて! ねっ!」


「何か、誤魔化された気がするけど・・・。アスタがそういうなら・・・。」


「あー、それから、新しい教育係がたまに来るから、覚悟しといてね。」


「覚悟?」


「ウチの教育係じゃ、もう、物足りないでしょ? 今までみたいに、ずっと付きっきりって訳にはいかないけど、凄いの用意したから! 戦争中だとまずこんな時間取れない奴らばっかりだから、英才教育よ。」


 良く分からないが、今まで以上に色々教えて貰ってアスタの役に立てると思うと、やる気が湧いてきた。


「あー、お腹空いた、家に入ろっか。」


「ご飯にする?」


「先に、セイ食べる~。」


 この後、二人で寝室に直行し、軽く搾り取られた。


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 数ヶ月後、アスタの言っていた新しい教育係の一人がやって来た。

 アスタに呼ばれ、近くの開けた場所に向かう。


「セイ、紹介する、本日教育係をやってくれる、ナキア=サタだ。」


「宜しくお願いします。」


 目の前に立つ、角の生えた目つきの悪い、褐色肌の男に頭を下げる。


「アスタ、お前が、教育してやって欲しいって言うから、来てやったけど、これか?」


 ナキアが、俺を指差す。

 男の態度を見て自分の力が低過ぎて、アスタが恥をかいているのでは無いかと、ヒヤヒヤする。


「あぁ、そうだ、可愛いだろ? 私の自慢のセイだ。」


「おいおい勘弁しろよ、こんなガキ俺が教育したら、壊れっちまうぞ?」


 ナキアがアスタの肩に腕を回す。それを見て、少し胸がザワ付く。


「そんな事より、そろそろ、俺の子産んでくれよぉ。」


「おい、やめろ、セイの前だぞ。」


 アスタの頬に、頬を寄せるナキアをアスタが、押しのける。


「良いじゃねーか、こいつにもちゃんと性教育してるんだろ?」


「そーじゃない、セイは魔族じゃ無い、こう言う事の感覚が私達とは違うんだ。刺激をするな。」


 あからさまに、嫌そうな顔をアスタが見せる。

 ザワリ、ザワリと胸が騒ぐ。


「こいつも魔族に育てられたんだ、こう言う事もあるとちゃんと教えないとな。」


 ナキアの口から出て来た、アスタよりも長い舌が、アスタの首筋から頬を舐め、アスタの耳を噛む。


「んっ・・・。」


 アスタの口から一瞬甘い吐息が漏れた瞬間、自分の中で押さえていた何かが壊れた音がし、全身の血液が沸騰する感覚が僕を襲った。

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